ドライクリーニング

ドライクリーニングと水洗い

当社が洗い張り業を始めたのは創業である昭和9年(1934年)からですが、歴史を紐解くと国内では江戸時代には洗い張り(水洗い)が行われていたそうです。近年、当社にお預かりするケースだと着物全体が汚れるような状態は少なくなってきました。おそらく着物が普段使いで使用されることが少なくなり、ハレの日など人生で一番おしとやかな日での利用に変わってきたこともあるのでしょう。

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絞り浴衣のお手入れ


洗い張り(水洗い)は、着物だから出来る最良の方法

着物の利用頻度が少なくなったと言えど、衿袖口は汚れやすいこともあってお手入れが必要となります。ご依頼の際は変色などのシミや汚れなど点検・確認しており、着用状態・保管状態などから手入れの方法を考えてご提案しております。

当社(当社のご案内)はドライクリーニングも水洗いもどちらの技術も持ち合わせており、ドライクリーニングなのか水洗いなのかは専門家であるクリーニング師が判断することが大切だと考えております。

ドライクリーニングは、有機溶剤で洗ってから乾燥機で乾燥させる作業工程となりますが、衣類(着物)の汚れのほとんどは日常生活で生じる水溶性の汚れになります。水溶性の汚れをドライクリーニングで落とそうとすると当然ながら無理が生じます。元々有機溶剤で水溶性の汚れは落とせません。(水と油の違いですね)

また、普段、皆さんの生活でもご存知の通り、水洗いでも油汚れを落とすことはできます。てんぷら油・植物性オイル・食肉製の油など、ご家庭では石鹸や合成洗剤・酵素などを使って油を分解し水で洗い流します。一番厄介な汚れは毎日の台所の流し台です。しかし、ご家庭ではドライクリーニングの溶剤を一切使わずに、食用油・魚肉の脂などは大変ですが、水と油脂石鹸や中性洗剤とで解決しています。


ドライクリーニングは万能ではない

クリーニング業界においても、ドライクリーニングで汗や衣服に付いたワインやビールのシミを落とそうとされる方もおられると耳にします。

製品タグにドライマークを見つけて「メーカーが指示している」と言ってドライクリーニングを指定されるそうですが、実際は「ドライクリーニングもできる」ということを示しているのです。そもそも製造メーカーはクリーニング業種ではありません。ドライクリーニングのマークは「クリーニング屋さんに水洗いをさすな!」「クリーニング屋さんはドライクリーニングのみしてください!」というのは大きな誤解だと考えています。それが証拠に「ご家庭で水洗いできます」とも表示されていますね。

ドライクリーニングだと、本来繊維製品が持っている油脂分までも洗い流してしまいます。ちなみにメーカーが繊維製品を製造される工程ではドライクリーニングの溶剤は使用されません。

お客様から預かる衣類は、デザイン、混紡率、着用状況・回数、天然素材から化繊など素材、染料の種類、染法などが異なります。そして、汚れやしみの種類などからお手入れを行う判断条件はさまざまあります。それをドライクリーニング技法だけで対処されるのは、とても残念なことです。


なぜダウンジャケットを水洗いするのか?

当社ではウールやカシミヤは水洗いでお手入れします。水洗いであれば、ウールやカシミヤにもともと含まれている油脂分の流れ出しを抑えて、水溶性のシミ汚れも簡単に洗い流せます。

ダウンジャケットをドライクリーニングするとダウン素材である水鳥の羽が持っている油脂分を抜きさって脱脂綿のようになって、温かみが無くなります。ウールやカシミヤでもドライクリーニングすることで油脂分を洗い流せば同じ効果になってしまいます。

ウール素材である羊の毛には多量の油脂分が含まれており、羊の毛から整髪剤のポマードを生産していました。カシミヤにも油脂分があるため保温性を保っています。また、素材に本来含まれている油脂分を洗い流してしまうと、汚れが付きやすく、汚れが落ち難くなります

こんな大事なことを理解されないままドライクリーニングを選択されるケースもあると聞きます。本来、クリーニング店はウールやカシミヤの保温性を保つ為にどのような手入れを行えば良いか考えるべきです。


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羽毛布団のお手入れ

また、ウールやカシミヤを水洗いすると縮むという誤解があるようですが、その要因の一つに繊維表面のスケール(キューティクル)が水に濡れることで開くことが縮む理由だと理解されている方もおられるようですが、そもそもスケールは水に濡れても開きません

「ウールを水に入れた場合どのくらい時間でスケールが立ち上がり濡れるかという点、文献等を調べてみましたが、このようなことが書かれているものはありませんでした。」(あいち産業科学技術総合センター 尾張繊維技術センター・機能加工室 室長 山本周治さん)

ただ、ウールやカシミヤの繊維は水に濡れると絡まりやすいため、繊維が絡むことで縮む作用が働くことがあります。例えば、乾いた綿のタオルをロープに絡ませてもスグにほどけますが、水を含ませることで、繊維が絡みやすくなってほどきにくくなるのも同じ作用が働くからです。

ならば、ウールやカシミヤの水洗いはどうしたら縮ませずに洗うことができるのかと言うと「一方向になでる」だけです。


カシミヤセーターの水洗い

元々、ウールやカシミヤなど動物性繊維は多量の油脂を持っています。だから温かみがあるのです。ドライクリーニングを行うと繊維に含まれる油脂分を洗い流してしまいます。カシミアが持っている油脂分を流してしまうから繊維同士が絡みやすく縮みやすくなるのです。水洗いによるお手入れでは油脂分の流れ出しを防ぐことができます。

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ウール素材のお手入れ

当社では水洗いで100~1000回洗っても縮みません。それは縮まぬように洗うからです。当社の企業機密でもなく、当社がご家庭向けに行う「しみぬき講座」でもお伝えしております。

・洗浄:短時間(2分以内)で洗い上げる。
ブラシを往復さすのではなく「一方向に撫でるよう」に行なってください。
・濯ぎ(すすぎ):2回
振り洗い程度(振る回数は4~5回)
・脱水:2分以内
・乾燥:形を整えて陰干し、一晩でほぼ乾きます。
乾燥機にかけないでください。乾燥機は禁物です。

わずか2分ほどの洗浄で「汚れが落ちるのか?」と思われますが、一度試しにやってみてください。(※ドライクリーニングをされた衣類の場合、油脂分がなくなっており、汚れが落ち難いです)

わずかこれだけのことだがドライクリーニングと比較すると手間がかかります。これを手間と捉えるのであれば、複数枚まとめて洗うなどの効率を考えれば良いかと思います。繊維の特徴を理解して良い仕事ができる方法は必ずあります。


しみぬき工房 つづれや
代表:田川 芳弘
住所:〒678-0172 兵庫県赤穂市坂越1754番地
フリーダイヤル:0120-975-354
TEL / FAX:0791-48-8059
営業時間:午前9時~午後6時  定休日:日曜日・祝日

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