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安倍元首相、暗殺される。

 2022年7月8日安倍元首相が暗殺された。

 これまでの報道によると、容疑者の母親は旧・統一教会の信者で、多額の寄付などで家族は崩壊し、その被害者意識から犯行に及んだとみられている。

 ここ最近の報道はネットを中心に、統一教会の話で埋め尽くされているといった具合だ。なかには陰謀論のようなとんでもない内容もあるようだ。この記事の最後に、事件に関連した情報を得るのに、個人的におすすめしたい動画コンテンツを紹介する。有料のものばかりだが、内容は充実しており信用ある専門家たちの話なので、その価値はどれも十分にあるはずだ。

個人的な印象と考え。
 今回の事件は、容疑者にまだ弁護士もついていないようで、全容がまだわからない状態であるし、そもそもこの複雑な社会にあってなにか分かりやすい原因や真相がわかることはおそらくはこの先もないのだろう。それでも、事件に関連した僕の個人的な印象と感想、考えを述べさせていただく。

岸信介と「勝共連合」
 安倍元首相の祖父である岸信介は、当時の時代背景もあり、右翼の大物、笹川良一や児玉誉士夫とともに、統一教会の開祖である文鮮明とある種の「共犯・共生」関係にあった。
 統一教会が日本で宗教法人として認証されたのは64年で、61年に文鮮明は日本にやってきて、岸信介、笹川良一や児玉誉士夫ととも富士山のふもとの別荘で会う。この面談で国際勝共連合の設立を約束する。翌年、岸氏は、同協会の政治団体「勝共連合」の発起人に、右翼の大物、笹川良一や児玉誉士夫とともに名を連ねる。
 さらには赤旗新聞の記事によると。 64年11月に統一教会の本部を東京都渋谷区にある岸元首相宅の隣に移転。新本部の建物は、岸内閣の時に首相公邸として使われていたとある。  

徹底追及 統一協会/自民重鎮に食い込む/岸元首相が「飛躍のきっかけ」 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik22/2022-07-26/2022072615_01_0.html

安倍元首相
 安倍元首相は祖父の岸信介からの付き合いで、統一教会との関係は深かったのは事実だろう。
 外国特派員協会での会見によると、統一教会は霊感商法での事件や多額の寄付問題があるので、被害者弁護団は安倍元首相に対して、当時から何度も勧誘活動のシンボルになる可能性があり、関係を持たないようにと抗議の文章を送っていたらしい。それにもかかわらず、安倍元首相は無視して、統一教会の団体で祝辞やビデオメッセージなどをおくっていた。
 さらには、教団の名前を変えるとこれまでの事件を知らない人が被害にあうので、教団の名称変更に反対するように要請があったにも関わらず、名称変更を認めたのは安倍政権時代のことであった。
 さらに驚くべきことに、安倍元首相が政権を取っている間は、統一教会に関連した事件の摘発がピタリと収まっていたという話がある。(最後に紹介する動画参照)ここで思い出されるのが、『賭け麻雀問題』で辞めることになった黒川検事長だ。
 当時、安倍元首相は「検察庁法改正案」で、法律を変えてまで黒川検事長を手元におきたかった理由は、黒川氏が「モリカケ問題」や「広島の河合夫婦事件」「山口敬之氏のレイプ事件」などの疑惑、事件に対しての、捜査、起訴を見送ってきたと言われている。その疑惑のなかに統一教会に関連した刑事摘発を黒川氏をつかって押さえ込んでいたと思われても仕方ないだろう。

統一教会の政治的影響
 これらの報道が真実であるなら、亡くなった安倍氏は統一教会と「ずぶずぶの関係」だったと評しても、いいとは思う。
 ただ、それは安倍元首相の個人的な関係であって、自民党やこの日本全体の大きな闇や陰謀を絡めたような影響があったかというと、ぼくの個人的な印象としてはそこまではなかったのではないかと思う。
 (リベラル勢力から見ると)この国の政策がなかなか思うように進まないのは、なにか陰謀論的な勢力があるわけではなく、多くの国民がそれでいいと思っているからだろう。あるいは、ぼくも含めてこのままでいいとは思っていないが、任せられる政党が他にないというのが現実だからだ。

 先の参議院選挙の結果を丹念に調査している慶應義塾大学名誉教授の小林良彰氏の分析によると、投票率は前回より上がったとはいえ、52.05%と先進国では最低水準であり、参議院選挙は6年間なので、同じ顔ぶれでいうと下がっている。
 氏の調査結果のなかで注目すべき点はいくつもあるのだが、その中でも今回の参議院選挙では自民、公明、立憲、共産、国民、は選挙区でも比例でも得票率を落としている。つまりはこれらの政党は支持を減らしている。(ちなみに、維新と参政党は選挙区、比例ともに伸ばしており、れいわは比例で下げているも選挙区ではのびている。社民、N党はその逆。)
 さらには、「政権をになうべき政権担当能力があるかどうか」の質問についてそれぞれの党の支持者に聞いている。自民党支持者が自民党が政権担当能力があると回答しているのは当たり前ではあるが、立憲民主党の支持者ですら、自民党がいいというのが(35.5%)、立憲(33.1%)を上回っている。
 この現実に(べつに立憲だけを責めたいわけではないが)真っ正面から受け入れるべきで、統一教会の問題も重要だとはおもうが、それ以上に今回の選挙で惨敗したことを考えると普通に執行部の責任問題ではないのか。
 前回の記事でも少し書いたが、「お灸すえる」ような野党ではなく、自分たちの支持者にすら政権担当能力がないと思われているような体たらくから、一日もはやく脱却していただきたいと思う。

もしかしたらそんなに時間はないのかもしれない
 今回の安倍元首相の暗殺事件をきっかけに多くのことがこの社会では崩れつつあり、もうすでに崩れているのかもしれない。 
 今回の事件で警備は問題があった。この数年は海外で多くの爆破テロもあり、日本でもオリンピックもあるしテロ対策を、社会をあげて取り組んでいたはずじゃなかったのか。その最前線の警察が、銃撃一発目から死に至ったといわれてる二発目までは、3秒近くあったにも関わらず安倍氏を守ることができなかった。なにかおかしくないだろうか。
 あるいは、山上容疑者に関する報道を目にしても、犯行に及ぶまでに支援の手や、改造銃の製造、試し打ちなどの段階で発見、逮捕もできなかったのかと疑問だ。容疑者の母親も含めて、どうにかできなかったのかと口惜しい気持ちでいる人も多いのではないか。

 少しずつ、いろいろなことが気づかないくらいの速度で機能不全になりつつあるのかもしれない。その不安や不満が、どこにこれから向かうのかは誰にもわからない。もしかしたら今回の参議院選挙で大躍進した参政党などに流れていくのかもしれない。同党の躍進はこれまでの政党を一気にぶち抜いている。選挙区での得票率では3.8%と、小さい政党はもちろん、国民民主党をも上回っている。
 ちなみに、ぼくは参政党は問題も多く、このさきあの陰謀論と、嫌韓・嫌中の考えを是正しないととても支持はできないし、安倍氏が亡くなったことで、辻田真佐憲氏がいうところの「重石」がなくなり、もしかしたら、今後そちらの方により先鋭化し支持を伸ばす可能性もあると思っている。

 冷静にみると、とても暗い現状認識になってしまうのだが、それでもぼくたちは簡単な陰謀論にはのらず、身近な人たちと直接のコミュニケーションを大事にしつつ、少しでも自分の手の届く範囲の仕事(賃金労働にかぎらず)に責任とやりがいを大事に生活していくしかないのだろう。そういう積み重ねが少しでもこの社会をよくすることだと信じたいではないか。
 あと、参政党もここまでできたのだから、他の野党もがんばれ。

最後に映画
 最後に、統一教会が韓国だからといって、韓国への攻撃もつつしむべきだ。それと今回は新興宗教が問題になったが、日本では宗教がそれほど一般的ではないので、この事件によって、同じような新興宗教の信者や団体を差別、攻撃するようなことがないように気をつけたい。そして、それには統一教会の信者も含まれる。
 新興宗教の信者を描いた映画を二つ紹介する。どちらも素晴らしい作品だが、ともになんともすっきりしない内容かもしれない。
 だが、社会や人間、人生、家族などは、すっきりしないもんじゃないだろうか。

『星の子』予告編 
https://youtu.be/5aK1p7PG7fc

映画『ある朝スウプは』予告編 
https://youtu.be/MUMd-6e0n-o

おすすめの動画配信

ビデオニュース.com
政治と宗教の関係は今のままでいいのか 
ゲスト:島薗進氏 
https://www.videonews.com/marugeki-talk/1111

「ビデオニュース.com」はジャーナリストの神保哲生氏と社会学者の宮台真司氏が毎週配信している、日本初のニュース専門のインターネット放送局だ。月額も500円くらいで毎週様々な分野の専門家のゲストからじっくり話が聞ける。この回は東京大学名誉教授・宗教学者の島薗進氏に話を聞いている。
 この番組では統一教会についてもじっくり話を聞いているが、それ以上に日本政治において、憲法にさだめるところの宗教と政治の関係について社会学者の宮台真司氏と深く語られている。

ゲンロン・シラス
島薗進 聞き手=辻田真佐憲「あらためて統一教会を考える──日本人はなぜ新宗教をもとめるのか #2」 https://shirasu.io/t/genron/c/genron/p/20220726?utm_source=twitter&utm_medium=organic&utm_campaign=share

ゲンロン、シラスでの、おなじく島薗進氏をゲストに評論家の辻田真佐憲氏を聞き手にした番組。ゲンロン、シラスは批評家の東浩紀氏が立ち上げた会社で、さまざまなジャンルについて長時間、深い話がきける場でもある。
 この番組では、辻田氏が統一教会のことを中心に、政治と宗教、カルトと既存宗教など、今回の事件で疑問に思うようなことを、網羅的に、しかもするどく質問し、答えている。全体的にざっくりと知りたいなら(それでも質問が立て続けにあるので、すごく濃密な内容である。)こちらもおすすめ。

(シラスには、実はぼくのチャンネルもご縁があり開設させていただいている。こちらもよろしく。)
生うどんつちやの「シラスの台地で生きていく。」 
https://shirasu.io/c/tsuchiya

ポリタス
報道ヨミトキMONDAY #66|安倍元首相の国葬に賛否両論、統一教会と自民党、コロナ感染最多、AOKI五輪賄賂疑惑……|ゲスト:青木理・辻田真佐憲(7/25)
https://www.youtube.com/watch?v=uQ_REDjYowY&list=PL6WyH_fRcg0PjD2SnZYNafL65p5ojXNvF&index=20

 ジャーナリストの津田大介氏のYouTube。配信後1週間くらいは無料部分もあるが、現在はこの番組は有料アーカイブでの視聴が可能。
 安倍元首相と統一教会との関係を中心に、歴史的に統一教会がどのように日本社会、自民党に近づいていったのか、政治的な活動をいかにおこなっているのかを解説している。

日本外国特派員協会で会見
統一教会と霊感商法の実態について弁護士らが会見
 https://youtu.be/QHPenK_88VU

 霊感商法の被害者救済に取り組んできた全国霊感商法対策弁護士連絡会の弁護士、山口広氏、紀藤正樹氏、川井康雄氏による、日本外国特派員協会での会見。
 英語の通訳が入るので、若干聞きにくいかもしれないが、無料で時間も短いのでこれだけでも問題の大きさを理解できる動画。
 被疑者弁護士団の話だけあって、具体的に献金の項目と金額、地域べつにノルマなどもあると具体的な話が聞ける。なかでも驚かされるのは、第1次安倍内閣が一旦終わったあとの期間に刑事摘発が一気に増えて、そして第2次安倍内閣が発足した以降は全くそうした刑事摘発がなくなったと語られる部分だ。
 ちなみに、ここで語っている山口弁護士は、島薗進氏がゲンロン・シラスの番組で参考文献として紹介している本「検証・統一協会=家庭連合」の著者だ。



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