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答えのない時代に、僕らがやっていること。

今までと比べ物にならないくらいの長い人生。切迫する地球環境。AIによって変わる人間の仕事。いろんな場面で、今が変化の真っ最中であることを感じるようになった。

この変動の時代の中では、都会の一流企業に勤めることが充実した人生につながるのではないかもしれない。これまで得た知識や情報が充実した人生を保証するとも限らない。もう誰も正しいことがわからないのだ。

そんな答えのない時代だからこそ、「仕事とは?」「なぜ働くのか?」「どう働くのか?」「何をしたいのか?」という根本的な問いを真ん中に自ら頭で考えて、答えを出し、主体的に行動していくことが必要なのではないか。

現在、仕事旅行社ではサービスのリニューアルを行っている。このリニューアルが、まさに上記の考えを体現しているのではと考え、一事例としてその経緯をまとめてみた。

サービス価値が伝わっていない

仕事旅行社ってものづくりが体験できるサービスなんですよね」

とあるお客さんに言われた一言に、僕は危機感を覚えた。というのも、僕が意図しているのはそのようなものではないからだ。

これまでにも何度か書いてきたが、仕事旅行社は某ベンチャーのオフィスを訪問した際に得た気づき(仕事は自由に考えて良い、仕事は楽しいものである、スモールスタートの重要性など)を多くの人に伝えたいという思いから始まったサービスだ。

端的に言えば、職業体験を通じて仕事に関する「学び」を提供することが目的なのである。

しかし、上記のお客さんの発言を勝手に解釈すると、ものづくりの体験そのものを楽しむ(要はエンターテイメントのコンテンツ)として仕事旅行を認識しているのだ。

すなわち、僕らが提供したい(している)価値がユーザーに伝わっていないことを意味する。

時代の変化に遅れをとった

では、何故そのお客さんは仕事旅行のホームページを見て、ものづくり体験のサービスだと考えたのだろうか。理由はいくつかあるが、僕らの仮説はこうだ。

僕らが事業を始めた当初、体験をメイン商材として扱うサービスはほとんどなかった。

しかしここ10年弱でその様相は一変した。例えばガラス作り体験、陶芸作り、お寺巡り、酒蔵見学・・・etc.「体験そのものの楽しさ」を追求した体験サービスが急増した。一般的に「体験」=「遊び」という認識が世の中に生まれたのだ。

仕事旅行社も「体験」を提供する会社であったため、ユーザーが他のエンターテイメント性の高い体験と同一視するようになってしまったのではないか。

本来であれば、体験サービスが増え始めた段階で、「仕事旅行の体験とは何か」を定義する必要があった。しかし、その環境変化に僕らは気が付くことができなかった。知らず識らずのうちに、社会とのコミュニケーションを怠ってしまっていたのだ。

価値の言語化に苦戦する

危機感を抱いた僕らは、改めてサービスの見せ方・伝え方の検討を始める。

最初に行ったのは、サービスの価値の言語化。社内でどう表現するべきかを聞いて回ったところ、驚いたことに社内ですら捉え方が人それぞれになっていた。

そこで、仕事旅行は「遊び」ではなく、「学び」のサービスであるという“そもそも”の話から社内で共有を始めた。

ぼんやりながらも方向性が理解され始めると、次に仕事旅行社のいう「学び」とは具体的に何なのか?という疑問が表出してきた。

それは、僕らが某ベンチャーで経験したような「視点の転換や視野の広がり」と言った抽象的なものであり。多くの人が「学び」と聞いて連想するような資格取得のように効果が明確なものではない。

そのため、僕がいくら仕事旅行は「学び」のサービスだと訴えても、社内でさえ具体的なイメージを共有できずにいた。

社内会議は紛糾

僕の頭の中にある「学び」が上手く言語化されていないため、会議ではそれぞれが「学び」の定義や認識を解釈し、意見を出す。もちろん会議は紛糾する。

例えば、学びなのだから、何かしらの資格が取れることが重要だとか、結果が数値化できないとダメだとか、体験の日数が足りていないだとか・・・etc

確かにそれぞれの視点から考えた「学び」という意味ではどの意見も正しい。

しかし僕の頭の中で考えている学びは資格取得でも、テストで評価するタイプのものでは無い。

多様な意見を取り入れてこっちにフラフラ、あっちにフラフラの状態が続いた。

ちなみに、一時期は仕事旅行に参加することで、一人前の仕事人デビューが果たせるサービスを目指そうとしていた時もあった。

でも、不思議と実際に手足を動かしながら、企画を形にしていくと自然発生的に何だかこれ違うんじゃない?という空気が漂い始める。

このまま進んだら何かが違う。もう少し深掘りしようと、関連しそうな本を読み漁ったり、他の業界の話を聞いたり、社内で協議を重ねていくと次第に焦点が定まっていった。

特に参考になったのは、社会人研修業界や子供向けの塾だった。

それまで全く知らなかったのだが、どうやら僕が考えていることや提供したいと考えている価値は、社会人研修で言えば越境学習、学生向けの塾で言えば探求型学習に近い考え方の学びであるということが見えてきた。

具体的な先行事例を紹介することで、ようやく社内での理解が進んでいった。

現在も検証中

前述した紆余曲折の話は、結構最近のこと。現在ホームページの大幅リュニューアルを進めているのだが、まさに上記のような議論や試作を反映させたものなのだ。

もちろんホームページに限らず、サービスの定義や、特徴などすべてを変更する。もしかしたら別のサービスを始めたのか?と思う人もいるかもしれない。でも、これは僕らが実現したいことをより明確化した結果なのだ。

事業内容の再定義をしたばかりなので、うまくいくという答えはまだ出ていないが、仕事旅行社のサービスとしてメッセージ性は以前よりも強まった。

同時に提供するサービスの価値も明確になったはずだ。社内でも自信を持って進められるようになっている。

最初からサービスの価値定義や言語化ができていれば良かったが、僕にはそれができなかった。当時はそんな学びが必要とされている雰囲気もなかったし、自分が経験したことの意味も理解できていなかった。だから、結果的に世の中にサービスを提示して、反応をみて、その中で手探りで変えていくしかできなかったのだ。

行動しながら、考える人たちの事例

話は飛ぶが、1月22日に書籍を発売することになった。
「働くコンパスを手に入れる<仕事旅行社>式・職業体験のススメ」。

僕が仕事旅行社として初の書籍だ。対象とする読者は、今の働き方に疑問を抱きながらも日々を過ごしている「仕事迷子」になっている人たちだ。

そんな人たちにもっと自信を持って仕事人生を突き進んで欲しいという願いを持って、この本を書かせてもらった。

内容は取材記事がメイン。11人の多様な働き方をする人たち、中でも仕事に夢中で楽しそうに働いている人たちに、今の働き方やそこに至るまでの経緯を取材してまとめた。

彼らの成功体験に焦点を当てるのではなく、彼らがこれまで何を考え、何に悩み、どう解決してきたか。それを赤裸々に、等身大で伝えることを意識した。

取材を通して確信を得たのだが、彼・彼女らもまた、僕と同じように行動しながら事業の方向性を変化させ続けていた。

中には温泉宿から、研修施設(リトリート施設)に完全なる業態変更をしてしまった女将さんなども登場する。

行動しながら、考え続ける。学び続ける。変化し続ける。

そう言われてもピンとこない人も、具体例がいくつも提示されているので、何かしらそのイメージを掴んでもらえると思う。

学生はもちろん、働き方や仕事の仕方に悩む社会人にこそ手に取ってほしい。


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