【1000字小説】プレッシャーどうしよう
急がなきゃ。
わかってはいるけど、今から家を出たところで、完璧に始業時間より2時間は遅刻だ。
せっかく今日こそは行こうと思っていたのに。
無断欠勤のような状態が続いて、どれくらいなのかわからない。
たぶん会社にわたしの席はもうないんだろうけど、それでも一度は行かなきゃならないってことは、わかってる。
わかってはいるけど。
バイトだし。
けど、このプレッシャーはどうにもできない。
やっぱ、行かなきゃ。
それにしても、どうしよう。
なんでこんなに仕事に行かなくなっちゃったんだろう。
会社からの通知とか電話とか、なんにもきてないのはどういうわけ?
会社は、わたしがいないくらいで回らないってわけじゃないけど。
あんなに、一生懸命動いて書類整理してたのは誰のため。会社のため。わたしの給料のため。
めんどくさいけど、いよいよ行かなきゃいけないんだ、って思う。
ちゃんとしなきゃいけないから。
ちゃんとしなきゃ。
ちゃんとしなきゃ。
はっ、と、わたしは目を覚ました。
またこの夢か。
半年前までバイトしてた会社は、仕事量が多く、毎朝行くのがプレッシャーだった。
仕事があるのはいいけれど、時給が比例するわけじゃないし。
毎朝、行こうかどうしようか迷った。
寝坊したら堂々と遅刻してやろうと思っていたのに、やっぱり真面目に朝は始業30分前には会社にいた。わたしより遅く遅刻してくる社員もいたのに、なにさ。
体を壊して会社をやめることはできた。
そして、2か月前からわたしはフリーランスで働いている。
もう会社にいかなくていいのが、うれしい。
けど、生活はぎりぎりで貯金を切り崩している。
また営業のメールを書かなきゃ。
何社送れば安定した仕事ができるようになるんだろう。
営業のメールの文面を変えてみればいいのかな。
メールを書かなきゃ。
メールを書かなきゃ。
はッ、と、わたしは目を覚ました。
フリーランスになってから3か月くらいは、しんどかった時だった。
営業メールは書かなきゃいけないし、仕事が来たらやらなきゃだし、1日24時間しかないのに、ぜんぜん終わらない。
毎日はいつもプレッシャーの中。
不安と緊張の中。
昔みたいに、逃げたって解決にはならない。って開き直ったら、仕事が増えてきた。
違う種類のプレッシャーの中で生きてるだけ?
プレッシャーの夢から、いつ醒めるんだろう。
完
※「完」までの本文のみ(タイトル含まず)ぴったり1000文字の小説です。
※この物語はフィクションです。
実在の名称・団体・個人とは一切関係ありません。
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