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オレンジ毛玉はシャンプーの香り【ノラ猫日記/3日目】

<保護三日目>
目覚めると、子猫が私の顔を覗きこんでぴゃあぴゃあと鳴いていた。昨日まで母猫を探していたのと同じ声で、もう人間を呼んでいる。

あまりにも健やかな「忘れる力」に、嬉しさと寂しさが混ざる。
この子の飼い主になるべき人を、見つけだせたなら。きっと同じ健やかさで、私や夫のこともすぐに忘れてしまうだろう。

ゆっくりと、体を起こす。
生後数ヶ月の猫は、床寝が堪える生後三十三年の人間の体の痛みなんてお構いなしに、「腹が空いた」と主張する。

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明日から夫も私も仕事なので、ホームセンターで子猫の脱走防止柵の材料を購入し、近くのうどん屋で昼食をとった。

離れた席で、二歳くらいの男の子が両親の間に座り、お箸を使う練習をしている。
手足の動きのぎこちなさが、家に置いて来た子猫を思わせる。…なんて、親御さんに言ったら、「猫と一緒にするな」と怒られるだろうか。

子を持たない我家は、猫という身近な存在と照らし合わせないと、人間の子供のことをうまく理解できない。
姪が産まれた時も、「いとこができたよ」と先住猫に話しかけては、「外でこんなこと言えないね」と夫と笑いあった。

箸を握りしめた子供が、うどんを一本啜る。その口が、「おいしい」という形に動いてから、隣に座る母親を見上げ、にっこりと笑った。母親も、愛しくて堪らないというふうに笑いかえす。
席が離れていたから、声の聞こえないその風景はスローモションのように見えた。

夫が同じ光景を見て、ふふっと笑う。猫をあやすときと同じ、優しい声で。

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帰宅して、夫は柵を設置し、私は子猫を風呂にいれた。
必死に逃げようとする猫を見て、ここ二日で得た子猫からの信頼はドブに捨てると覚悟したけれど、意外にも風呂からあがった猫は、体を乾かしている間に私の足を枕にして眠ってしまった。

食欲もある、トイレもきちんとできる、遊びも大好き。
この子は、人間と生活できる子だ。

ふわふわになったオレンジの毛に、顔を埋める。シャンプーのいい匂いが、家猫デビューの証となった気がした。

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遊びに必死すぎてこわい。

引き続き、里親さんを募集しております。
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中四国・関西くらいなら連れて行きます。それより遠方は、諸々ご相談させてください。

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