遺伝的メモ魔/珈琲係 石井
高校生の長女は毎日部活で夜9時頃帰宅する。
他の家族の食事を終えて一段落する時間でもあるので、その日の私はいつの間にやら寝落ちしたらしい。
「ただいま」という声で目が覚めた。
隣にはテレビを見ながら小2の末っ子も寝落ちしたらしく、いつの間にやら夢の中だ。
長女にご飯を準備していたら、
「お母さん、背中になんかついてるで」
と言われた。糸くずかと思って、生返事でフライパンを振っていたら、ぺりっと長女にそれをはがされた。
ん?
「かえってから おかあさん おこしてあげて あとテレビもけしといて」
と拙い文字で書いてあるメモ用紙。
つまり、寝落ちした私の背中に末っ子がメモを貼りつけたらしい。自分も眠たくなったので、メモをセロハンテープで貼り付けて、安心して自分も眠りについたのだろう。
また別の日。私は夜出かける用事があって、帰ってくると、またテレビをつけたまま、スヤスヤ深い眠りについている末っ子。
ん?
今度は末っ子の胸に何やらメモが貼ってある。
「おかあさんへ はみがきしてるし 上にもっていくのいややったらおこしていいよ♫」
寝室が2階のためか、こんな内容だった。
人間の身体にメモを貼り付ける発想が斬新だけど、確かにこれだと絶対目に付くので、間違いない。天才かよ。
末っ子は勉強嫌いで、宿題もめんどくさいとやらないのだけど、どうもメモは好きらしい。家のあちこちにメモが貼ってあり、窓にはもうサンタさんの手紙が貼ってある。(10月中旬)
「サンタさんへ ことしはマリオブラザーズワンダーがほしいのでおねがいします 毎年ありがとうございます 今年もよろしくおねがいします」
サンタさんへはちゃんと丁寧語を使っている。いつの間にか忖度できるくらい成長している。
そういえば私の亡くなった祖母もメモ好きで、飼っていたしろ猫の背中にデカデカと「いぬい」と油性ペンで名前を書いていた。猫の背中にいぬのふた文字があり、なかなかシュールだった事を思い出した。そんな2023秋の夜。
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