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妄想の答え合わせ(家シリーズ)/CAP松村

建築設計の醍醐味は妄想に妄想を重ね、あーでもないこーでもないと、空想しまくれること。

これは、小さい頃の空想遊びの延長のようなもので、ひとりで(時には仲間と)どっぷりと思案できる贅沢な仕事だと思う。

いい空間に空想の中で出会えたときは、私って天才!!って踊るような気持ちになる。

で、そのまま数日寝かすと、あれ?こんなやった?と冷静になり、客観的にもなり、またまたあーでもない、こーでもない、と思案が始まる。

 朝起きて、ご飯食べて、いろいろ支度して、「行ってきます」と「ただいま」。
動線はもちろんのこと、どこでどう気持ちよく過ごすか。
休日の趣味や訪問客があったときなど、ライフスタイルに寄り添う。
日差しや景色、風の抜け方。
夜の過ごし方、外への照明の洩れ方。

大切なのはプロポーション。

時は流れ、建物の経年劣化はどうか。
子どもたちが大きくなったときはどうか。


こんなふうに住宅の計画をするとき、いろんなシーンを想像していたら、まるっと1日どころかまるっと1週間くらい、あっという間にすぎる。


それがとんでもなく楽しい。
こんなに安い遊びはない。
なんと、アマゾンプライムよりも安い。
(と言っても、設計が楽しいのはこの辺りまで。ここから先の作業はパソコンにマウスを投げ付けたくなるほど、嫌になることもある。だいたい住宅の設計は半年近くかかります。見えないけど、とっても時間がかかるのです。)


さて、そうやって人の建物ばかり設計していた私が念願の自分の家を考えた。

予算は少なめの1千万円台の狭小住宅。狭い土地や予算がないということは、工夫しがいがあります。(そりゃぁどっちも大きい方が嬉しいけど)
なんと行っても自邸なので施主にいちいち確認作業をしなくていいのは最高。失敗しても怒られないので実験もできる。

私自身、あまりこだわりはない方だけど、嫌な場所は作らない、嫌な材料は使わない。

潔く諦めたところと、どうしても譲れないところの折り合いを、どうにかつけた設計になった。

そのえさんは、我が家に玄関がないのが好きだと言ってくれる。
中庭を通って(散らかった)仕事部屋から家に入る。
一階は低く狭いけど、その分、二階への動線(階段)が短くて、中庭を通してぱっと広がるリビングは狭い割に開放的。
中庭を通して子供部屋まで視線が抜けるので狭さも気にならない。

我ながらなかなかいい設計だと思います。

さてさて。そうやって楽しく設計し、ペンキにウッドデッキなどDIYを施し、楽しんで建てた自邸は、住んでみたらどうなったと思います?


なんと、へとへとに疲れたのです!

いちいち答え合わせをしてしまう。
想像していた光の入り方か?
思ってたように風は通るか?
思っている景色が見えるか?
動線や収納のチェック。
子供と大人の動線は?視線は?
フックの高さはこれで良かったか?
掃除のやりやすさは?

日々の行動から、とんでもない情報量が入ってきて、オーバーヒートしそうになりました。

四季を経験し、それも落ち着いたけど、その頃は、住宅のことばかり考えていた気がする。

そして、その答え合わせの結果は、「うん。今までやってきた妄想(設計)は間違ってなかった!」でした。
毎日が気持ちよくて楽しくて住みやすい。
いたれりつくせりの住宅ではないから、住みながら多少の工夫は必要だけど。

そろそろ飽きてきたなあと思う頃にペンキを塗ったり、庭木を足したり。
部屋がほしいなぁと思ったら、壁を作ったり、建具入れたり…。そんなまだまだ変貌できる余白のある家。10年経っても住心地はいい。
今のところ家族全員が気に入っています。


いつかもう一軒、景色のいい場所に小さな家を建てたい。
草原や湖が見えるともっといい。
湖で釣り。(したことないけど)
ああ。贅沢すぎるこの妄想。
大きな木の横がいいな。
妄想だけならタダやもん。(これでまた数日は遊べます)


松デザインオフィス一級建築士事務所

https://matsu-d.jimdofree.com/

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