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私はそこにいなかったけれど。

金曜の事

金曜日、体調が悪く体が言う事を聞かなくなってしまった為、早退して元同僚でもある大の仲良しの彼女に連絡をとった。

体調の悪くなった理由には、前から度々自分の中でも問題となっていたパワハラ問題であったが、それがとうとう先週金曜日、ピークに達してしまったからだ。朝からガンガンに詰められて、狭い社内の事だ、全員のいる前で私はいま『仕事のできない無能な人』の看板を背負っている。元々とても難しい仕事で、誰でもが出来るような仕事ではない為、これができる人は社内でも三人のみのなかなか厳しい現場での事だった。

自分でも今の仕事をしっかりこなせているとは言い難いので、無能は無能に違いないのだろうが、何かミスがあるたびに、絶対あいつがやったのだろうと周囲が決めつけてかかっている事も手にとるようにわかり始めた。ミスをするならあの人しかいない、という烙印を押されたのは、皆の前で罵倒する人間がいるからで、出来る教育者であれば、ミスはこっそりと指摘して、褒める時は皆のいる場所で思いっきり褒める。これがよい会社の鉄則であろう。

しかし、今、私が身を置いているのは、それとは正反対の現場だった。次から次に入っては辞めていく事に仕事の難しさだけを考えていたが、どうやらそればかりではないらしい。上記を踏まえると、今の現場は完全に失格である。これは私が有能無能には関係なくその現場の問題であるので、まぁ早い話、そんなんで体壊して、ばかみたい!(笑)

そうした日頃の圧も後押しして、普段できる事も出来なくなってきてしまっていたのも確かで、凡ミスが増えに増えた。私がずっと頭を抱えているので、主人は、やめなよ、そんな苦しんでまでする事じゃないし、だいたいそれ、あなたの仕事じゃなくない?と言ってくれる。

それでも続けていけているのは、その中の誰一人として友達になりたくもなく、それができるからなんなのだ、と個人的には相手を人として認めていない部分もあるからだった。

"私の事なら主人や友達や子供たちがよく知っているし、言いたいように言っとけよバカ"そう思いながら、すみません、ご指摘ありがとうございました、ご迷惑おかけいたしました、お手数おかけいたしました……私が会社で口にするのは、これ以外には、おはようございます、と、お疲れ様でした、だけで過ぎていく時間、すぐに昼を迎え、昼ご飯をただ流し込むだけで済まし、午後からの業務が始まると、胃が石のようになってもうびくとも動かず、盛大に吐いた。中身が全部出たあとも空えづきだけが続き、副腎に腫瘍のある私にとっては随分とストレスだったのだろう。帰ります、とその日は早退した。

大好きな友達

早退しちゃった!と元同僚でもあり、今ではなくてはならない友人のNちゃんに連絡をとる。
「え!体は大丈夫なんですか?」
とすぐに彼女らしい返信がある。Nちゃんはいつも、優しいお母さんのようにそこに寄り添う。

Nちゃんと出会ったのは、とある企業の海外移管手続きの際、ほんの一か月だけ一緒に働くことになった時のことだった。美人でサバっとした、ぱっと見は一見冷たそうに見える彼女だが、私たちはすぐに仲良くなった。

「美人は損だね、それだけでとっつきづらく思われるから。私はいびつで良かったわ」
私がそんな風に笑うと、そういう謙遜いりませんから(笑)とサラッと、"ほんとはそんな事思ってないくせに!"という意地悪さと、"そんな事ないだろ!なんだよ、自信持てよ!"の配合を絶妙に仕込んでくる。

そんな彼女はきっと、周りからはお高くとまる!と誤解されやすく、それはそれで私にとっては心配であった。彼女の良さをわかっていない人間が増える事が嫌だ。その部分を、とる人によっては大きく差がでるのだろうと思い、彼女に質問をすると

『そうなんですよね。冗談を冗談と受け止められずに、色々と言われる事が多いので、いまでは、他人なんてどうでもよいと思うようになりました✌』

と言っていた。美しければ美しいなりの悩みがある。でも、その部分を包み隠さずにきちんと伝えてくれる素直な彼女が私はとても好きで、一緒に仕事をした間は、会社に通うというよりも、バカ話が出来る時間や彼女が嬉しそうに笑うのを見る事がとても楽しみで通っていたので、離れてしまう際には、寂しくなっちゃうね😢と惜しみつつ、お互い別の仕事についたのだが、何かあるときちんと伝えてくれたり、季節の挨拶を欠かさない彼女の事、私たちは今もずっと仲の良い友達である。

金曜にあった出来事を伝えると、彼女は
『私は麦さんが仕事ができるのをよく知ってるし、麦さんの書く文章も大好きだし、気遣いはいつも最高だと思っているのに、それをわからないやつは可哀想!』
と言ってくれた。美人に加勢される私、最高♡♡それだけで元気出る。

そんなNちゃん、私なんかよりも断然よい性格であるし、気もよく利くのは過去に何があったのだろう……と、私はそれはそれでまた心配!になってしまった時、彼女が重い口を開いた。

私は、たとえ気になっても、本人が話したいと思うまで根掘り葉掘りは聞かないタイプなので、もしインタビュアー等を職業にしていたら、これは自分には絶対に向かない職業であろうと思う。だから、長く友達であっても、誰かの事で知らない事も多い。

彼女が口にした内容によると、学生時代、もう重度も重度の!人間不信になってもおかしくない程のいじめにあった経験があるらしく、私は自分の体調の事など忘れ、それを聞いて、本当に本当に悔しくて仕方がなくなった。

その話は、私がその場にいたら、と悔やむような内容で怒りさえ沸いた。画面のこっち側で涙してしまっただなんて、彼女には秘密だ。それをしていても平気だった彼らには、できればどうかまともな大人になんか育たずにそこら辺で朽ち果てていて欲しい。あの頃は……なんて言葉を聞かされたとしても、私の気持ちとしては聞き入れる余地はない。人の人生や、考え方が180度かわってしまうかもしれないような事だ。償われたところで、その瞬間が灰になるわけでもないのなら、償いはいらないので、どうか酷い大人になってこの先ひとつも学びなどもたらされる事がありませんように!!(祈)

誰にも正しさなんか教わる機会もなく、そんな脳みそもなく、俺はすごいんだ!と言い続けていて欲しい。裏で笑われてるなんて気づかずにそのまま大きくなぁれ~♡です。朽ちろ。

集団と組織とは、愚かなものだ。仕事、学校、その他のコミュニティ、来る日も来る日も、自分の方が出来るから、自分の方があいつよりもてはやされるべきだ、あいつよりあいつより……それに何の意味があるのだろう?

誰かが誰かの足を引っ張るなど非効率な無駄でしかなく、協力していった方が効率的で皆が楽しい、それが理解できないとはどういう事なんだ。どういう脳みその作り?そんな奴は私より仕事ができないぞ!?と思う。

私が彼女を、彼女が私を好きな理由がわかった気がした。

私はそういう事は放っておかない人間でもあるし、彼女もまた、そういう苦しみを抱えて生きてきた人間だった。誰かを癒す事で、過去の自分が癒される、そうした事が度々、人にはある。私がその場にいたら。見て見ぬふりは絶対にしなかっただろう。

私がそこにいたら

残念な事に現実では、私はそこにいなかった。その出来事は彼女の未来を大きく変えてしまった。あんなにも美しいのに、中身は本当に純粋で美しく、耐え忍ぶように咲いている花のような一面も彼女にはある。だから私は必死に水を与えていたのだ。ふと見せる彼女の優しさと、どこか満たされない寂しさを含んだようなあの雰囲気。その出来事は、彼女の本来あるべきだった心の形を踏みにじってしまった。

でも。逆を言うと、彼女はそれがあったから、今の私のよい友人でもいてくれる。彼女は人として優れている。それがあったから、今のNちゃんだ。自分がそれで苦しんだからそれを人にはしないでおこうとする彼女、誰かと誰かが集って他者の悪口を言っていると
『愚かだ。あいつらは人生で楽しい事のひとつもないのか。他人の事なんか話題にしてないで、自分の事で時間使った方が楽しいのに、それを知らないなんて可哀想だし、絶対、モテない(笑)』
と憎まれ口のひとつを挟みつつ、冗談のふりをして辛辣な事を言う。

そんな彼女を、その過去の出来事が作った。彼女には学びがあった。"他人の事なんかどうでもいい"以前にそう言い放った彼女の一言を、冷たいと取るか、正しいと取るか、その真の意味が読み取れる人間でいられたのは、私にも色々があったからだし、私たちは最高だね♡と思った。

息をするのも辛いくらいに押していた胃の痛みは知らぬ間に拭われて、もういっちょ頑張るか、と思わせてくれた。そう、私たちは最高である。

私はそこにいなかったけれど


今後、あなたが次に泣くような事があれば、私はそれを許さないだろうし、逆も然りで、そういう友達が出来た事、それがいまの私の幸せです。

愛する人たちが取り巻く環境で、それを心底幸せだなと思わせてくれる出来事が、生きる時間の中でたまに訪れるのは、そういう事を忘れてるよ!や、そういう人がいるんだよ!を気づかせてくれて、悪い事も悪いばかりじゃないな、と少し笑った私がいたから、私はその時、そこにはいなかったけれど、大切な人をいつでも護れる様に、大切な人がいつも味方でいてくれる事、忘れないようにお互いに生きていこうね。

私はそこにいなかったけれど、今はしっかりそばにいるよ!
私ももう少しだけ頑張ってみます。
いつでも寄り添ってくれてありがとう。

大好きな美しい友達へ。

追記


それから今つらい状況にある方。一人で抱え込まないで、誰でもいいから誰か、この人になら話してもいいなと思える人に吐き出してみて下さい。受け止めてくれる人が必ずいるから、諦めないでよ!!世界は広い!そこだけが世界じゃない事、忘れないで。

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