椿 吾十
こんにちは。椿です。 日本絵画歳時記、「初夏」の2回目です。今回は初夏に行われる、この季節ならではの風俗風習について、風俗画や浮世絵を見ながら考えたいと思います。 初夏に行われることと聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょう?地域によって色々あるかとは思いますが、全国で広く行われるものとして、まずは田植えに注目してみたいと思います。 といっても、都会で生まれ育った方には、あまり馴染みはないかもしれません。映像などで見たことはあっても、実際に田植えがいつどのように行わ
こんにちは。椿です。 立夏も過ぎてさわやかな初夏となりました。暑くもなく、寒くもない、過ごしやすくいい季節です。そこで今回からは「初夏」の様々な風物について、絵画でどう表されてきたかみていきたいと思います。 江戸時代中期の俳人、山口素堂による、大変有名な句です。基本的には名詞を三つ並べただけの、シンプルでひねりのない句ですが、かえってストレートにイメージがわいてきます。「青葉」「ほととぎす」「初鰹」と、いずれも初夏の風物で、それぞれに視覚、聴覚、味覚を象徴したものにな
こんにちは。椿です。 少し間隔が開いてしまいました。GWも終わり、立夏も過ぎましたが、日本絵画歳時記、桜の第4回目です。今日は宗教絵画、特に仏教関連の絵画に描かれた桜について見ていきたいと思います。 仏教絵画に桜?と疑問に思われるかもしれませんが、意外に多くの作品に桜は描かれています。その理由は様々ですが、ここでは大きく分けて二つのパターンをご紹介します。 まず一つ目は、勝地(しょうち)の象徴としての桜です。勝地とはすぐれた土地、特に景色などが素晴らしい場所を指して
こんにちは。椿です。 さて、桜といえば花見でしょう。昨年までと打って変わり、今年は花見にでかけた、公園で宴会をしたという人も多いかと思います。考えてみれば、桜を見ることを単に「花見」と呼ぶのも、不思議といえば不思議です。日本人がそれだけ桜の花を愛しているということでしょう。というわけで、今回はお花見をテーマにした絵について見ていきたいと思います。 前回もお話ししましたが、春の花見、秋の紅葉狩りは昔の人々にとって大きな楽しみでした。過ごしやすく外出にも適した季節に、美し
こんにちは。椿です。 日本絵画歳時記、桜の第2回目です。今回は花鳥画に描かれた桜をご紹介します。 梅が春の中でも新春の象徴とされてきたのに対して、桜は春の盛りの象徴として親しまれてきました。現代の感覚だと3月の末から4月にかけて、ちょうど卒業入学のシーズンになりますが、旧暦でいうと如月(2月)から弥生(3月)にかけてとなるでしょうか。まさに、うららかな春を代表する花と言えます。 これは江戸時代後期に活躍した絵師、酒井抱一の掛け軸です。1月から12月まで、それぞれの
こんにちは。椿です。 今年は暖かくなるのが早かったですね。おかげでちょっとタイミングを逸してしまった感はありますが、今回から日本絵画に描かれた桜について、お話ししていきたいと思います。 桜はまさに日本全国至る所で見ることができます。最も人気のある花と言っていいでしょう。菊と並び、日本の国花でもあります。しかし、前にも話したとおり、古代日本では中国文化の影響で、梅の方が人気があったといいます。 梅の回でも紹介した『枕草子』の一節ですが、桜は梅に続いての言及となってい
こんにちは。椿です。 日本絵画に見る歳時記、梅の第3回目です。今回は掛け軸や浮世絵版画など、比較的小さな画面に描かれた梅について見ていきたいと思います。 まずは伊藤若冲からご紹介します。若冲は近年非常に人気の高まった画家ですが、特に有名なのが「動植綵絵」シリーズでしょう。文字通り動物と植物を鮮やかな彩色で描いた本シリーズは、全部で30幅あり、現在は宮内庁三の丸尚蔵館の所蔵となっています。もともとは若冲自身が「釈迦三尊像」3幅とあわせ、全部で33幅の絵を京都の相国寺に寄
こんにちは。椿です。 梅の絵に関する第2回です。文学などに見る梅のイメージ史については、前回お話ししましたので、今回は絵の紹介を中心に話していきたいと思います。まずは襖や屏風などに描かれた花鳥画です。 花鳥画というのは、文字通り花や鳥が主題となった絵のことです。その場を華やかにすることから、古くから襖絵や屏風絵の主題として描き継がれてきました。四季折々の花木を季節ごとに、あるいは織り交ぜて描くことで、その場を理想の楽園のように飾り立てるわけです。そうした花鳥画において
こんにちは。椿です。 今回から「日本絵画歳時記」と題した連載を始めたいと思います。このシリーズでは、四季折々の風物について、日本の絵がどのように表してきたか、作品を見ながら紹介していく予定です。第1回目はすでに各地で盛りを迎えている梅です。 梅は現在でも大変ポピュラーな花木で、至る所で目にすることができます。自宅の庭に植えているという方や、盆栽で育てているという方も多いでしょう。 原産地は中国で、かの地では古来、大変愛された花です。寒い中、他の花に先がけてひとり咲き
はじめまして。椿吾十と申します。 大学で日本美術史を専攻し、博士号を取って教員などしていましたが、少し時間に余裕を持てる立場になったので、今まで講義や授業で話してきたことを、つらつらとまとめていこうと思いました。 どうせならネットで見知らぬ人にも読んでいただきたいと考え、色々と方法を考えたところ、noteにたどり着きました。個人でブログを開くよりも、こちらの方が同じようなテーマでまとめてもらえるし、図版を貼り込むのも簡単そうでしたので、ちょっと試してみようかなと始めた次