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夏日記⑫ イタリアンとパラレルワールド

8月が終わり、9月になろうとしている。
この夏日記だが、いつまで続けるかと悩んだ結果、あと1回か2回で終了することにした。
日記を続けてもいいなとは思ったのだが、夏限定だからこそ「noteを書くか!」と自分を奮い立たせることができていたので、これが恒常的になってしまうのはどうだろうか……そこのところはどうなんですか仲村よ……と自分に問いかけてみたが、色よい返事を聞くことができなかった。

また『秋日記』や『冬日記』をはじめるかもしれないし、お仕事のお知らせや思いのままに書きたいことがあればnoteは随時更新していく予定である。
とりあえず、夏日記というタイトルで日記を書くのはもうすぐ終わりである。

そのため、今回は最近起こった出来事のなかで、ならべくポジティブなものをふりかえっていこうと思う。


少し前に、鳥村さんとイタリアンを食べた。
スパークリングワインを開け、いざ乾杯した後に鳥村さんがおもむろに取り出したのが、よくわからんおもちゃだった。

見た目はシーツをかぶった生き物のような、ステレオタイプのおばけである。ピンク色でころりとしていて、押すと光ってふにゃふにゃしゃべる。

鳥村さんは「今日の検証のためにわざわざ買ったんだよ」と自慢げである。
今日は、とある区間のパラレルワールド化現象を調べるために集まったのだ。

東京都と埼玉県の境にあるとある沿線で、駅間を移動するあいだに、全く違った時間軸の同駅に降り立つことができるというホラーな現象がネット上で噂になっていた。
私は何度か例の場所を通ったことはあるけれど、不思議な現象にはお目にかかったこともないし、そのあたりに住んでいる知り合いに聞いたが、噂自体知らないという。


なので、眉唾物の噂であることは間違いないのであるが、まぁ近くに美味しそうなイタリアンもあったことだし、行ってみるべという気持ちであった。

私の中では完全にイタリアンがメインになっていたので、鳥村さんが謎のおもちゃを購入するほどこの調査に気合を入れているとは思わなかったのである。

それは幽霊がいると反応するおもちゃ?で、その界隈では有名な品だそうなのだが、私はお目にかかったことはない。私の生活圏にこのおもちゃは存在しないのであろう。

「このお店にはおばけはいないみたいだよ!」と鳥村さんはさっそく調べている。幽霊らしきものがいると、色が変わるらしい。青だか赤だか、もうワインの飲みすぎで忘れてしまった。しかもお店のBGMでおもちゃの声が完全にかき消されてしまい、なにを言っているのかわからない。

私はおもちゃなどそっちのけで、イチゴのような味のロゼワインを飲み、チーズのたっぷりかかったピザにはちみつをかけて、はふはふと口に運ぶのに忙しかった。パスタもシンプルなのに繊細でおいしいし、ワインはスパークリングだけで何種類もある。このお店はリピート確定だ。

正直私はパラレルワールドとかどうでもよくなっていた。なんならもう1件寄ってもう帰らない?と言いたいが、おもちゃまで購入した鳥村さんの手前、しぶしぶ検証の場所に向かった。

「そのおもちゃ、本当にたしかなの? 十回くらい押せば、一回はランダムでおばけがいることになるんじゃないの?」
と私はおばけの腹を連打したが、意外とそんなことはなかった。

しかし、街をぶらぶらしてもなにも起こらない。酔った女が二人、おもちゃを持って歩くだけだ。ガールズバーの疲れた客引きとか、すでに仕上がっている酔っ払いの間をぬって歩き、焼き鳥の屋台に吸い寄せられそうになりながら、なんとか終着地点までたどりついた。

線路沿いでおもちゃが何度か違う色に光って動揺したように見えたのだが、まあおおむね気のせいであろう。

ふと、あのおもちゃを『ゴムゴムの女』がまだいそうな家で使ったらどうなるか気になったが、真っ赤にアラートを鳴らされても気分が悪いので、やめておいたほうがいいなと思った。
世の中、知らない方が幸せなこともあるだろう。

この日、鳥村さんから、彼女の好きな作家さんの本をもらった。何度も読んでよと言われていたが、私も積読が塔になっているため、これ以上資産(積読はけして負債ではない。確実に資産である)が増えすぎるのもちょっとなぁと思っていた。

そのため、鳥村さんのおすすめをのらりくらりとかわしており、「近くの本屋さんにないしな~買ってくれたら読むわ笑」とへらへらとしていたら、ズンと重たいビニール袋を渡された。
なんと、本当にシリーズで買い求めてくれたらしい。せいぜい購入したとしても一冊か二冊程度だと思っていたので、完全に悪いことをしてしまった。
まぁ、まだ読んでないのですけれどね……。そろそろ積読を崩しながら手を出してみようかなと思っている。

鳥村さんはパラレルワールドに出会えずがっかりした感じでもなく、あのイタリアンは美味しかったねということに落ち着き、駅で別れた。
今日の収穫は、おすすめ本と隠れ家イタリアンである。

この夏は本当に謎解きをしたし、セルフでホラー経験にもチャレンジしようとした。次回は幼馴染のまゆちゃんと出かけた話を書きたいが、今日はここまでにしておく。

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