ZOKU SHINGOは楳図かずおのシン黙示録なのではないか
大阪・あべのハルカス美術館で開催中の「楳図かずお 大美術展」へ。一部撮影可だったので、会場写真を散りばめた。
筆者の頭の中で凄まじい記憶として残っている楳図の作品は、『漂流教室』だろうか。テレビ放映を途中から見てはまったのだが、原作が楳図かずおだと知り、魅力が増した。
怖いのに凝視してしまう。それが楳図の漫画だ。細部まで、とにかく描きこむ。だから、凝視せざるを得なくなるのだ。
この展覧会は回顧展ではない。メインの展示は27年ぶりの新作『ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』(101点の連作絵画)の公開にあるという、驚くべき漫画家展だった。80代後半にしてこの画力。映像で展示された短いインタビューの中で、「左右にしろ上下にしろ、対称に描くのは大変だ」といった内容のことを話していた。漫画には略筆が多いが、楳図の漫画は真逆と言っていい。隅々まで、それほど入念に描かれているのだ。
物語の主人公は2人のロボットだ。人間に育てられた少年ロボットは、ある日、なぜ自分はこんな顔をしているのかと疑問に思う。そして、ある場所で少女ロボットと出逢い、2人で人間になろうとする。さまざまな経緯を経て行く先には、女神たちがいる。はたしてロボットがそこに行ってもいいものかどうか?
不思議な背景だ。ロボットがいて、人間がいて、神がいる。今よりも科学が発達した結果の行き先だろうと思われる世界で、ロボットたちは実に人間らしい悩みの中を“生きる”のだ。
SFなのだけど、ホラー物語に近い。そして根っこには、地球を救いたいというメッセージが込められている。怖さで読者の心の深奥にゆさぶりをかける。今流の言葉を借りれば、これはもう、『シン黙示録』と言ってもいいのではないか。
その怖さは作り物ではない。現代の人間がやっていることを、単に単眼鏡でクローズアップして見たような、つまり現実に人間たちが抱えている矛盾した思考や傾向を真摯に見つめた結果浮かび上がった怖さだった。数十年前から知っていたのに、ようやくそんな表現をする作家であることがわかった。
『14歳』という作品でも、死にかけた地球をテーマに、人類が本当に生き残れるかどうかを探っている。
アオムシは救世主になるのだろうか。
展覧会名:楳図かずお 大美術展
会期:2022年9月17日〜11月20日
会場名:あべのハルカス美術館(大阪)
公式ウェブサイト:https://umezz-art.jp/
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?