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銀座だよ! 彫刻家絹谷幸太と画家ルオーの「奇跡」のコラボ

みなさん、こんにちは。「つあおとまいこのゆるふわアート記」の記念すべき第1回。『絹谷 幸太、ルオー「Georges Rouault Inspire Kota Kinutani ~時代を超えた2人展~」』が開かれている東京・銀座の吉井画廊を訪ねました。彫刻家の絹谷幸太さんと19世紀後半から20世紀前半にかけて、フランスで孤高の境地を切り開いた画家ジョルジュ・ルオーのコラボ展。あるときいつも作業をしているアトリエで優しい光を放つ石があり、作業場に運んで無心に手を動かすと十字架が浮かび上がったそうです。ちょうど吉井画廊の吉井篤志社長からは展覧会開催の話をもらっており、同画廊が古くから扱っているルオー作品とのコラボ展ができないかと相談、実現の運びとなったとのことです。ルオーの作品がなければ生まれなかった絹谷さんの作品の数々をめぐる「ゆるふわアート記」をご笑覧ください。

それでは、絹谷幸太+ルオーの巻の始まりです。

絹谷幸太の巻

つあお 絹谷幸太さんって、〝 石の探し人〟なんですよね?

まいこ 欧州、南米、オーストラリアなど世界中を旅して自分の表現にぴったりの石を見つけて来るそう。すごいですね!

つあお  いったい、石の何がそんなにいいんだろう?

まいこ 触感はもちろん、温度や香りもあるとおっしゃってましたよ。

つあお そういえば、子どもの頃住んでいたヴェネツィアのサン・マルコ寺院で床に寝転んでいた話をされてましたね。

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絹谷幸太さん(右)とまいこの2ショット。左の彫刻がノルウェーの石で絹谷さんが制作した《祝福された領域》。右に写っているルオーの絵画《子どもたちを我がもとに来させよ》に触発され、三位一体と十字架を象徴する作品になった

まいこ そうそう。今回一番大きい、それも私たちの背よりも大きな作品がそうでした。ノルウェーから持ってきた石ということにまずびっくり。存在は知っていたけれども、この展覧会ではコラボレーションすることになったルオーの絵を見た時に「ああ、この石だ!」とひらめいたとか。そして彫ってみると、ピンクの部分は固くて白い部分は柔らかかった。部分によって彫り方を変えるとのことだったけど、子どもの頃の床の感覚から自然と彫れるという感じでしたね!

つあお 子どものころの記憶がそういう形で蘇るってすごい!

まいこ 本当ですね! 私が一番驚いた話は、パリのサクレ・クール寺院を作ったのと同じ石で彫ったお花の形の彫刻です。

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フランスの石で制作した絹谷幸太《花のイデア》

つあお サクレ・クール寺院ってパリのモンマルトルの丘の上に立っているやつですよね?

まいこ そうです。真っ白なパリのシンボル。ところが、絹谷さんの彫刻はベージュっぽかった。時を経ると真っ白になるそうですね。驚いたのはパリのアトリエでこの石を彫っていると、ふわっとワインの香りがしてきたとのこと!!

つあお やっぱりフランスといえばワインだ!

まいこ パリの香り! ロートレックやモネやマネも飲んでいたのでしょうね。パリの人々の生活や楽しみが石に染み込んでいるのかも!

つあお パリではワインは水より身近ですもんね。たわくしはランチタイムに飲むと酔っ払ってしまうけど(笑)

まいこ そうですか!私は昼酒大好きです(笑)

つあお じゃあ、もう明日からパリジャンになれる!

まいこ やった! でも彫刻を一人で彫っていたら、ふわっと香水のような香りがして何だろうと思ったら自分の彫刻からワインの香りがするなんて素敵ですね。そして、この彫刻を合わせたのが、ターコイズブルーのルオーの自画像でした!

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ルオーの自画像と《花のイデア》

つあお そうそう、ルオーといえばキリストの像を真っ先に思い浮かべるのだけど、自画像が出てくるとは!

まいこ ルオーも、コラボで展示されたお花の彫刻からワインの芳香がのぼってきて、まんざらでもないのでは?

つあお 確かに、気持ちよさそうな顔してましたね! 絹谷さんの彫刻を見て、これまで冷たいイメージだった石が、実はぬくもりを持ったものなんだなぁと思ったりしましたよ。

まいこ つあおさんの感想ステキで優しい! ところでブラジル産の石の作品もありましたね。こちらも触らせてくれて、真ん中の辺りはふわっと暖かくて、端っこはヒヤッとしてびっくりしました。

つあお そうだ、一つの石なのに触った感じが場所によって違うなんてことがあるんだなあと思った。

まいこ そうですよね。実は絹谷さんの作品との出会いは、3年前に東京ガーデンテラス紀尾井町で開催していた展覧会。「触ってください」と英語で書いてあったのです!これには結構嬉しくてノックアウトされましたよ(^^♪

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つあお をを、触れるアートなんてなかなかないですよね。まいこさんはそこで5億年前の石に出合ったとか?

まいこ そうなんです。それがブラジル産のブルーの石で、しかもなんと、その展覧会で絹谷さんが仕掛けていたハッシュタグキャンペーンで当たったものだったのです!

まいこが愛する絹谷幸太の作品

この写真をハッシュタグを付けて投稿して当選しました! byまいこ

つあお くじ運最強!

まいこ ふふふ。写真を見ると、このときも触りまくってますね。

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その時当てたペンダント

つあお 素晴らしすぎ! それにしても5億年前の石ってすごい。

まいこ 悠久の時を感じます。それで私は家に飾って毎日触れています。そしていつか絹谷さんにお会いしたいと思っていたのです。

つあお そしたら願いがかなった!

まいこ Yes! 改めて石のパワーを感じました。

つあお そういえば、神々しい石でした。

まいこ まいこパワーも3年分加わったからかな? なんちゃって(笑)

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今展で見られる、同じブラジル産の石を彫った作品

つあお あやかります(笑)。最近思うんだけど、石って古びない。人間が作ったあらゆるものは傷んだり壊れたりするんだけど、石は転がって摩耗することはあっても、それが古さを表すことにはならないと思ったんですよね。古さも新しさもない。やはり石は本当に神に近い存在なのかなとも。

まいこ 深い! さすがつあおさん! 一神教の強靭なキリスト教と、よろずの神のゆるふわ日本版の違いも感じますね。

つあお ゆるふわ日本も好きです(笑)。 神といえば、ルオーの作品と並べていることもあって、この展覧会ではキリスト教にかかわる表現が多いのだけど、一つ、小さな十字架の作品がありましたね。あれ、気になった。

まいこ そうですね。とても小さな作品なのに密度が濃かった!

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絹谷幸太《神を石に見ようという切なる願望》

つあお 十字架が浮かび上がってきたかのような。いつも作業している日本のスタジオである時石に光が当たっているのを見て、彫り出しなさいと言われていると感じたとか。

まいこ 何年も放ってあった石が突然語り始めたのですね! しかも、無心に彫り進めたら十字架が出てきたなんて! 聖書に出てきてもおかしくないようなお話!

つあお ずいぶん深く彫り込んでましたね。彫り進めるにつれて、石の色が変わるから一番いいところを探すのだとか。

まいこ かなり深く彫り進めて十字架の側面が何十種ものグラデーションになっていて美しかったですね。そして彫ってできた広い断面がピンク色でした!

つあお そうそう、すごく美しかった!

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まいこ この作品が出てきたので、ルオーを古くから扱っている吉井画廊にルオーとのコラボレーションを持ちかけたというのですから、今回のアイコン的存在ですね! まさに イコン! そしてコラボしてあったルオーの作品に黄色い太陽が煌々と照っていたので、もしかしたら、これがアトリエに差し込んだ太陽の光だったのかも!

つあお 奇跡の展覧会ですね!

展覧会情報:絹谷 幸太、ルオー「Georges Rouault Inspire Kota Kinutani ~時代を超えた2人展~」:2020年12月14日(月)~12月26日(土)、吉井画廊(東京・銀座)

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