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「鍋島」に描かれた7つの壺の謎。勝手に推理!そしてお皿からは食べ物が?!

サントリー美術館の「美を結ぶ。美をひらく。」展を訪ねた2人。つあおは1枚のお皿の前で立ち止まり、じっと眺め始めました。

つあお このお皿、なんで壺が描いてあるんだろう?

まいこ ????? きれいなお花とかならわかるけど、謎ですね。

つあお しかも7つも。よく見ると背景が面白い。

まいこ 波々になってる。もしかして、「墨弾き」(すみはじき)の技法が出てるのは、この波のところなんですかね。

青磁染付七壺文皿サントリー美術館

《青磁染付七壺文皿》(18世紀、径20cm、鍋島藩窯、サントリー美術館蔵)展示風景

つあお すごい! 「墨弾き」なんて言葉知ってるんだ。

まいこ ちょっと前まで、知りませんでした。

つあお パネルに大きい字で書いてありましたもんね。

まいこ 実は「すみびき」って読んでました。今年の夏、戸栗美術館(東京・渋谷)でたまたま「すみはじき」を教えてもらったんですよ。

つあお やきもので有名な美術館だ。

まいこ ちょっと恥ずかしいんですが、通っていた大学が近くて、よくそばを通ってたんです。でも行ったことがなかった。

つあお 学生の大半はそうでしょう。たわくしも同じキャンパスに通っていたから、近くをよく歩いていたはずなのに記憶がないなぁ(遠い目)。

まいこ それでね、戸栗美術館の方は、墨弾きの技法の説明の際に、「マスキングテープみたいなものですよ」っておっしゃったんですよ。

つあお えっ? マスキングテープ?

まいこ 白にしたい部分にマスキングテープを貼って、その上から青い色を塗って、最後にマスキングを剥がせば、残ったところが白くなる。

つあお なるほど。でも、この皿の白い線の模様はすごく細かい。マスキングテープをこんなに細かく貼るのは無理っぽい。

まいこ 実際は、マスキングテープではなくて墨で描くそうですよ。最後に焼くと墨の部分が取れるので、白い線となって現れる。

つあお だからこんなに繊細な模様が描けるんだ。この模様は「青海波」(せいがいは)っていうんですよね。江戸時代に工芸品や衣装などでけっこう使われていたらしい。

青磁染付七壺文皿サントリー美術館青海波

青海波文様の拡大写真

まいこ その細密な文様をやきものの上に描くのに、墨弾きのようなやり方を思いついたというのがすごい! 紐で縛った部分を染め残す絞り染めの技法にも近いですね。

つあお 知恵だなあ。たわくしはこの皿を見て墨弾きの精緻さにすごく惹かれたんだけど、そもそも、皿の上に壺の絵を描くっていうこと自体が奇妙だなあとも思った。

まいこ 陶磁器の上に陶磁器を描いてる!

つあお そもそも壺をこういう風に置こうと思っても、絶対置けないと思わない?

まいこ ほんとだ。宙に浮いている感じ。

つあお 手塚治虫のヒョウタンツギみたいだ。

まいこ 何ですか、それ?

つあお しまった。世代の違いがバレたか。手塚治虫に壺みたいなキャラクターがいるんですよ。たわくしはそういうのが好きなんだな、きっと。

まいこ これも戸栗美術館で聞いたんですが、墨弾きの陶磁器は今の佐賀県の鍋島藩で作られたいわゆる「鍋島」と呼ばれるもので、将軍家などへの献上品だったそうですよ。藩主は、献上品のために飛び切りのエリート職人を集めて作らせた。

つあお だからこんなに美しくて精緻なんだ。将軍は喜んだでしょうね。

まいこ 藩主は大変だったみたい。無期限非営利で作らせたとか。

つあお 将軍は偉いからしょうがない。ご機嫌を損ねると藩がお取り潰しになったりするかもしれないし。

まいこ お皿で済むならって感じですかね。自分の身の回りで使う物も含めて年間2000〜5000個も作ったそうですよ。「同じものばかりじゃつまらないから、ユニークなのを作ってくれ」とかも言われたらしい。

つあお 結構好みがうるさいんだ。逆に考えると、そんな注文をつけた将軍様って芸術好き、クリエイティヴ好きだったんだなという気もしますね。

まいこ ポジティブシンキング! そうですよね!

つあお やっぱり何か面白いものが欲しいなと思ったんでしょう。自分で絵を描いていて、有名な狩野探幽のような画家に習った将軍もいた。

まいこ それはすごいですね。逆にレベルアップし過ぎちゃうと、要求がハイレベルになりすぎて周りの作家が振り回されるかもですね。

つあお それは大丈夫。将軍はすごく下手だったから。でもやっぱり、将軍はアートが好きだったんだな、とは思います。ひょっとするとこのお皿は、すごく壺好きの将軍に献上されたのかもしれない。

まいこ なぞが解けたかも!!!

つあお えっ?!

まいこ なぜ、美しい花や風景ではなく変わった「壺」を描いたのか!

つあお ほー。

まいこ 献上先の将軍が「壺フェチ」だったんですよきっと。プレゼントする相手が最大限喜ぶものを差し上げる♪ これ現代も同じ♪ しかも、その将軍、なかなかの美術通で平凡なものにはダメ出しをしたとみた!

つあお なるほどー。まいこの「勝手に推理」出ました。笑。ホントかどうか知らんけど、まずは一件落着ということで。お腹すいてきましたね。

まいこ つあおさんは、このお皿にはどんな料理を盛りたいですか?

つあお うーーーーん。💡 蛸!

まいこ えっ?!!

つあお 蛸は壺に住んでいるのです。7つの壺に7匹の蛸。出てきたのを1匹ずつゆでて食べちゃう。

まいこ ステキです! ドラえもんの4次元ポケットみたい💛 おなかが空くとゆで蛸さんが出てきてくれる、魔法のお皿ってことにしましょう(^^♪ これで人類から飢餓がなくなる!!

蛸の宇宙

Gyoemon画《なくて七壺 蛸の住まい》
美しい皿で蛸を食べたいという思いが結実した作品。Gyoemonはつあおの雅号

飾り罫色点

「リニューアル・オープン記念展Ⅲ 美を結ぶ。美をひらく。」
サントリー美術館、2020年12月16日〜2021年2月28日

古いものと新しいものが時代の枠組みを超えて結びつき、新しい美が生まれるという理念に基づき、古伊万里、鍋島、琉球の紅型、和ガラス、浮世絵、ガレのガラス器などを館蔵品で構成した企画展
【公益財団法人 戸栗美術館】
住所 〒150-0046 東京都渋谷区松濤1-11-3 tel. 03-3465-0070

✨ワンポイント追加✨

「リニューアル・オープン記念展Ⅲ 美を結ぶ。美をひらく。」
@サントリー美術館の まいこのイチオシはこれ☀

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新収蔵!!! 
エミール・ガレ《壺「風景」》(一口、1900年頃、高さ21.5cm、サントリー美術館蔵)展示風景

うっそうとして茂る黒い森の木々を通して、温かく美しい人里の風景が360度無限に広がるツボ💛 壺の外周を幹と根っこで絡め、内側に光を通すと人里のグラデーションが浮かび上がる演出が麗しい~💛 壺の周りを何回も周ってしまいました(^_-)-☆ 珍しい逸品でもあります👑

✨壺のナゾ、勝手な推理の補足✨

《青磁染付七壺文皿》タイプの青磁染付は、8代将軍・徳川吉宗(在職1716〜1745年)の時代に急増したとのこと! 理由はあの「享保の改革」。
かの質素倹約ってやつです。その流れで、なんと「献上品の見直し」もあり、華美なものは質素にしなさいとの命令が鍋島焼にも来たというのです!将軍、自分にも厳しくてエライ。。。のか?!
とにかく、やはり当時の将軍の意向や政治が、このやきもののデザインにも色濃く反映されたことがわかりました(^^♪
吉宗が、壺フェチだったかどうかに関しては未確認です(;^_^A
どなたか、よい情報がありましたら教えてください!


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