赤トンボの姿をしたキミ*またね。
アスパラは夏の間に
私の身長と同じくらいまで大きくなって
もしゃもしゃした髭みたいなものを
たくさんたくさん繁らせて光合成をして
来春にまたにょきにょきと顔を出すために
栄養分をためこんでから
冬にはゆっくり休眠するのだけれど
黄色く枯れた茎は
地面から5センチくらいだけ残して
あとは全部刈り取って
雪が積もる前にする作業
さあ、刈り取っちゃおうと
ふと見上げたそこには
冷たく強い風に吹かれて
ゆらゆらぐわんぐわん
とっても頼りなげなトンボが一匹
しがみついていて
ふと見上げたところ
もうこんなに寒いのに
朝晩はマイナスだったりするのに
この一匹だけ
きっとすごく遠くから来たんだろうな
夢中で夢中で飛び続けて
気付いたらこんな寒いところまで
はぐれちゃったんじゃないのかな
そして、もう力尽きそうに
風に揺らされてしがみつくのに精一杯
ごめんね
そのアスパラは刈り取らなきゃいけなくて
こっちのお花はどうですか
移動してもらってもいいですか
このトンボにとって
最後に見える景色かも知れない
もう、何も見えていないのかも知れない
ただそこにゆっくりとしがみついて
一匹だけのとっても静かな時間
枯れた黄色のもしゃもしゃの上より
白くて明るい可愛い場所に
最後に見える景色が
こんなだったらいいなって
勝手に押し付けて
次の日にはもうどこにもいなくて
最後じゃなかったなら
もっといいな
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