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かがしコンテストに参加した話#3 @相生

前回までの振り返り

前回の記事はこちらから。

兵庫県相生市の秋の一大イベント、紅葉祭り。
それに合わせて開催される、かがしコンテストに参加するため、題名を“ペーロン・マスク氏”に決め、かがし作りにとりかかった。
制作する上でのコンセプトは以下の三つ。

1.なるべく家にあるもので作ること
2."人形"でなく、"かがし"であること
3.ディティールにこだわること

はっきりとした作り方が分からない中、試行錯誤しながら期日までになんとか形にするところまで持っていくことができた。
完成したかがしを現地で設置するところから続きます。


かがしを展示する

設置要項

かがしコンテストの出品申込書を市役所の地域振興課に提出しに行くと、「後日、書類をお送りします」とのこと。
その後日、設置場所の地図や展示する際の立て看板が郵送で送られてきた。
設置場所は入り口付近。
比較されにくい上、搬入・搬出のことを考えると良いポジションかもしれない。

顔文字だと理解されたから横向きなのか


設置

かがしの運搬と設置は車を持っている知人が手伝ってくれることに。
かがし本体と道工具を車に積み、現地に向かうと、狭い道路脇にそれぞれの出品者の名前と番号が書かれた仕切りがされていた。
自分の区画を確認し、貸し出されている看板設置用の木杭と木槌を使って地面に穴を空ける。
そこに胴体の支柱と櫂を差し込むような形で設置していく。

深めのラフ

その他、首元にタオルを巻いたり、櫂の交差部や腕の部分に仕込んでいた空き缶をテープで留めたりと、表から見た時に違和感のないように固定した。
少しでも見栄えが良くなるように、櫂の位置や体の向きなどを正面から見ながら微調整も入念に。
それがまさかあんなことになるとは...

ヘッダーの写真が設置完了後の写真です


事件

設置も無事終わり、あとは審査を待つだけ。
そんなある日、朝から雨風が強かったため、仕事終わりに様子を見に行くと、綺麗に立てていたはずの櫂やポスターが倒れていた。
本体部分に目立った損傷はなかったものの、櫂と腕とを繋ぎ止めていた紙粘土製の手が折れて散らばっていた。
ショッキングな光景ではあったが、くよくよしててもしょうがないので、すぐに補修に取りかかる。

ブレたのは手のせい?夜のせい?涙のせい?

本体と櫂を繋ぐ腕の部分を空き缶で作っていたため、その弱い部分からバランスを崩したと考えられる。
そこで、本体から櫂の持ち手まで針金を通し、結びつけるように修正した。

このままだと見栄えが良くないため、接着剤で上から手を付けようとしたが、朝露で濡れた粘土はうまくくっつかない。
最終的には新たな粘土で補修し、絵具を塗り直すことにした。
さらに、より安定感を出すため、櫂をかがし本体に立てかける仕様に変更し、二つの櫂の交差部は釘を打って固定した。

色が違うのはあかぎれを表現したからです。そういう表現です。

審査日まで平日しかなく、仕事の前後で作業時間を確保する他ない状況。
ただ、段々と日が短くなっており、朝は作業できてもせいぜい1時間が限度、定時で上がっても絶妙に日が暮れてしまう。
そんな限られた時間の中、朝の日があるうちに組み立てや粘土での補修を行い、乾いた頃を見計らって、仕事終わりに暗闇の中で絵具を塗った。
車がないため、バイクでの移動になったが、極寒の山道を仕事前後に片道30分かけて往復する日々。
かがし作りの大変さと、田んぼに何カ月も立ち続けている先人(かがし)たちの凄さを実感した。

手のかかる子


結果は...?

なんとか審査日までに修復が終わり、迎えた祭り当日。
審査自体はすでに終わっているため、賞を獲れていれば昨年同様、自分の作品の横に看板がついているはず。
バスを降り、真っ先に見に行くと、"JA兵庫西特別賞"と書かれた看板が新米のイラスト付きで添えられていた。
さすがに大賞ではなかったものの、どんな賞でももらえると嬉しい。
後日、市役所の観光課に問い合わせると、お米がもらえるとのこと。
その場で引換券と交換し、5kgの新米をいただいた。

美味しいお米でした

今年の大賞はというと、団体の部がディズニーのキャラクターを並べた、100周年を記念した作品で、個人の部は将棋の藤井聡太の一手を解説する一コマを再現したものだった。
どの作品も完成度が高く、バラエティあるかがしたちは見る者を楽しませてくれる。
はしゃぐ子供、カメラを向ける人、走り回る犬、それぞれが思い思いにこの場を満喫しており、改めて地域に根付いた素敵なお祭りだと感じた。

今年の受賞作品たち


お片付け

「後片付けまでが、かがしコンテストです。」
と言わんばかりに撤去日が指定されているため、後日、片付けに向かった。
家に持ち帰っても仕方がないので、その場で解体・分別する。
相生市はプラスチックの分別がないため、空き缶以外はゴミ袋に収まるように細かく切ってまとめた。
端材を詰めた1袋を含め、30Lのゴミ袋を合計4袋使用した。
作ったものを壊すこと、そしてその様子を書くことは多少なりとも憚られる気持ちはあったが、最初から最後までリアルな記録としてここに残しておきたい。

お遊びに付き合ってくれて、ありがとう。


振り返り

反省点

2023年のかがしコンテストはこれにて終了。
次回また作るかと言われたら何とも言えないが、一連のかがし製作の中で難しいと感じたことを含め、反省点をまとめた。

・顔が丸くなってしまった
→ザルで骨格を作ったため、形を変えるのが難しかった。ただ、もっと上手に紙粘土を貼るべきだったのか、他の方法で作るべきだったのか、未だに答えは分からない。

・バランスが悪かった
→かがしは野外に晒されるため、重さ、重心、地面への埋まり具合など、どの角度から力が加わったとしても倒れないような構造を第一に考えなければならなかった。櫂の重さと風に対する抵抗を見誤っていた。

・絵具でうまく塗ることができなかった
→塗る範囲が広かったこともあり、均一な色を出すのが難しかった。顔もうまく表現できたとは言えないが、こればかりはセンスの問題かもしれない。

・一目で伝わらない作品だった
→他の受賞作品とお客さんの反応を見る限り、題材云々ではなく、パッと見のインパクトで評価をされているようだった。その点で言うと、わかりづらく、完成度も高いとは言えない出来になってしまった。


原価計算

使用したもの
・水性ニス
→1個@110円 110円
・油性ニス
→1缶@2178円 2178円
・防水スプレー
→1缶@602円 602円
・紙粘土
→10個@110円 1100円
・ザル
→2個@110円 220円
・接着剤
→木工用ボンド:2個@110円 220円
→アロンアルファ:2個@283円 566円
・釘
→1個@162円 162円

計 5158円

思ってたほどお金はかからなかった印象。
ただ、上記の金額はあくまで今回の材料費になるため、木の板や適当な衣服がなかった場合、工具類を一式揃える場合、搬入時にレンタカーを使用した場合はさらに費用が嵩む。
予想以上に多く使用した紙粘土や、大きいサイズで買ってしまった油性ニス、結局のところくっつかず、無駄な買い物となった接着剤など、削減できそうなポイントはいくつかあるが、かけた時間数も含め、金銭的な面だけで言えば元は取れない結果となった。


所感

大賞をとることができていれば収支はプラスだったが、大賞は一枠。
世の中そんなに甘くない。
けれども、こうして一つのかがしを作り上げたこと、相生という地域に関わる一人として祭りに参加できたこと。
アイデアを思いついた時のワクワクする瞬間、進め方がわからなくてモヤモヤする瞬間、気は向かないのに少しずつでも前に進めるしかなくてイライラする瞬間、段々と完成に近づいていく時のドキドキする瞬間。
そのどれもが印象的であり、生きた体験ならではの面白さがあった。

これからも続いていくであろう、かがしコンテスト。
ぜひ一度立ち寄ってみてはいかがかしら?

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