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かがしコンテストに参加した話#1 @相生

きっかけ

相生市との接点

相生市は兵庫県の西に位置する、人口2万7千人ほどの小さな街である。
2022年3月、学生生活を終えた私は何のご縁か、この相生という土地で新社会人を迎えることになった。
元々は造船で栄えた街であり、夏にはペーロン祭りという手漕ぎのボートの大会が開かれたり、冬は盛んに牡蠣が水揚げされたりと、海との関連が深い相生市。
しかし、そんな相生市で10月頃から”羅漢の里 もみじ祭り”という看板やポスターをよく目にするようになる。
羅漢の里は山に囲まれた相生の北部にあり、それによると、なにやらかがしが展示されていて、バザーやステージも開かれているそうな。
街を上げての大きなイベントであり、また、北部の方は滅多に行く機会がないため、様子を見に行ってみた。


もみじ祭り≒かがしの展示会

相生駅から羅漢の里までは10kmほどの距離がある。
その日は生憎の雨模様だったが、日頃の運動不足を払拭するため、自転車で向かうことにした。
国道2号線を外れ、山道を一本越えると"羅漢の里 もみじ祭り"という看板が見えてくる。
手前で自転車を停め、案内に沿って進むと、まるでその世界に誘われるかのように、入口から会場へと続く一本道に沿って無数のかがしが視界に飛び込んでくる。
藁で作られた馴染み深いかがしから、流行りの人物やキャラクターを連想させるかがし。思わず、「かがしとは?」と問いたくなるような本格的なものまで、大小様々、多種多様なかがしが並んでいた。

"かかし"じゃなくて"かがし"

そして、作品の横には作品名と賞の名前が書かれた看板が立っている。
何やらもみじ祭りと並行して、"かがしコンテスト"なるものが開かれているらしい。
大賞に輝けば10万円をもらえるとのこと。
しかし、何より気になるのは賞の種類の多さだ。
大賞・優秀賞・入賞だけでなく、審査員特別賞や企業の匂いのする賞まで。
ほとんどの作品が何かしらの賞をもらっていた。

参加する団体の数と比較すると、下手な懸賞よりよっぽど確率は良いんじゃないか、なんて皮算用をしながら”かがしロード”を進むと、今度は地元の団体が開くバザーや露店が軒を連ねるようになる。
相生特産の牡蠣を使った料理やハンドメイドの竹細工、地元の同好会が作ったと思われる陶器など、興味をそそられるものが販売されていた。
そしてその先の特設会場ではステージが開かれており、賑わいを見せていた。
ちょうど紅葉のシーズンだったこともあり、相生ならではの秋の雰囲気を一身に感じることのできた1日だった。

一番好きな季節は秋


何を作ろう?

募集要項

それから一年後の2023年9月。
相生市民には馴染みの"広報あいおい"に1枚のチラシが挟まっていた。
そこには「かがしコンテスト かがし大募集!!」の文字が。
せっかく相生に来たのなら地元の祭りに参加してみたい!
そしてあわよくば大賞の10万円。。。

チラシにはかがしコンテストの審査項目が書かれている。
審査項目は以下の4つ。

①.話題性(最近話題になった人・事柄)
②.アイデア性(アイデア・工夫・ユーモア)
③.懐古性(懐かしさ、田舎ののどかさ、藁を使う等)
④.完成度(作品のクオリティ)

去年の大賞は額縁から飛び出す巨大なモナリザを模した作品だった。
過去の受賞作にも一休さんが屏風の虎を引き出す、とんちを立体化した"飛び出す系"があり、二次元を三次元へと変化させるというインパクトとユーモア、そして完成度が評価されたようだ。

しかし、かかし作りにおいて、何の経験も知識もない"かがし素人"にとって、③と④はなかなかにハードルが高い。
ということで、①と②で勝負しつつ、できる限り③と④を伸ばす方針でかがしコンテストに参加することを決めた。

相生市民の味方、広報あいおい


案決め

さて、参加することを決めたは良いものの、何を作るのか、肝心なところが決まっていない。
そこで、まずは「相生といえば」で一人ブレストをしてみた。

・造船
・ペーロン祭り
・牡蠣
・ど根性大根
・新幹線の停車駅
・海と山
・鹿、猪、熊などの野生動物が出没
・商店街
・少子高齢化
・スプリング8(隣町)
・揖保乃糸(隣町)
・御座候(姫路)

…あとは?

まだまだ相生のポテンシャルに気づいてないのか、社会人にもなった自分の頭の硬さを認める他ないのか。
前者であることを願いつつ、審査項目の①〜④と組み合わせて案を出してみた。

案1:溶接工かがし
造船業が栄えたころから相生という町を支えてる人たち。この人たちなく、今の相生はないといっても過言ではない。人ではなく、かがしだけれども。④勝負になりそう。

案2:藁納豆かがし
藁と言えば納豆。藁で作られたそのかがしは内なる納豆を秘めている。究極のSDGsマン。③の懐古性狙いではあるが、いかにして藁と納豆を集めるか。

案3:ペーロン・マスク氏
今話題の某CEOが相生にやってきた!「脱IH○後の相生」なんてことは口が裂けても言えません。①と②狙いではあるが、②に関しては親父のユーモア?

案4:鳥獣被害と格闘するかがし
猪や鹿はたまに見かける上、熊の出没情報も出る相生。農家と野生動物との戦いという意味では本来の意味を持ち合わせていそうな社会派かがし。ただ、動物のかがしを作るのは難しそう。

相生はこんなところです

以上4つの案を第三者にも聞きながら一つに絞った。
現実的な作りやすさも含めると、案3が一番良さそうだったので、「ペーロン・マスク氏」で出品することに決定。


デザイン

お題を決めた後はデザイン。
ペーロン・マスク氏をどうかがしで表現するか。
今年話題になったTwitterからXへの社名変更を組み込んだかがしを作りたい。
そこでまずは一つ案を出してみた。

イラストの出来については触れないで

旧Twitterの社員が大量解雇されたこともあり、危機感を覚えたX(旧Twitter)社員が、テスラ製の舟を必死に漕ぐ様子を描いてみた。
そしてその音頭を取るのはマスク氏。
風刺は効いてるものの、舟や大人数のかがしなど、現実的に作るのは難しそうだ。
作りやすいようになんとか一体のかがしに収めたい。
そして出した案がこちら。

ペーロン・マスク氏

舟を漕ぐための櫂(オールのようなもの)をテスラ仕様にし、それをクロスさせることでXを表現。
水色の服にTwitterのロゴの白い鳥を描き、それが服から逃げ出そうとする仕様にした。
櫂作りなど、多少製作に時間と手間がかかりそうな部分はあるが、現実的に作れそうな範囲に収めた。
一体で表現する分、顔の表情作りがより大切になるが、果たして。。。


いざ、作ってみよう!

コンセプト

製作する中で今回のかがし作りの趣旨を曖昧にしないため、コンセプトを定めた。
定めたコンセプトは以下の三つ。

1.なるべく家にあるもので作ること
→買えばなんでも揃えられるが、ゴミも、かかるお金も増えてしまう。いかにコスパ良く作るかは工夫のしどころだと思うので、環境にも財布にも優しいかがし作りを心がけたい。

2."人形"でなく、"かがし"であること
→かがしは本来、野生動物たちから農作物を守るために作られたもの。田畑に突き刺せる簡易的なもので、なおかつ、野生動物が寄りつかないような存在感を持たせたい。

3.ディティールにこだわること
→1と2は意識するものの、何を表現しているか分からないと意味がない。顔は特に大事。胴体や裏面など、見えないところは良しとして、顔の表情やロゴの書き入れ作業などは丁寧に。必要であればしっかりお金をかける。


かがしの作り方

そもそもかがしはどうやって作るのだろうか。作り方を各種サイトから集めてまとめた結果、大まかな手順は次のようになるらしい。

  1. 木や竹で骨格を作る

  2. 新聞紙等をビニール袋に入れ、骨格に肉付けする

  3. 服や布を被せ、形を整える

要するに木や竹を使って骨組みを作りさえすれば、あとは思い思いの材料や作り方で形にしていけば良いとのこと。
ただ、一番鍵となりそうなリアルな顔作りに関して、参考にできそうな情報が載っておらず、自力で工夫しながら作るしかなさそうだ。
何はともあれ、やってみないと始まらないので、とりあえず材料探しから始めてみることにした。


材料集め

今回のかがし作りのメインとなる櫂と骨格。その部材となる木をどうやって調達するか。

とりあえず家にあるもので何か使えるものはないか探していると、隅に追いやられたように置かれた木の板を発見した。
おそらく引き戸か何かだが、家のどの部屋の仕切りも欠けることなく機能しているので、必要性がなくなって外したものなのだろう。
我が家は大家さんからセルフリノベーションOKと言われている古民家物件なので、この板を拝借して櫂とかがしの骨格作りに使うことにした。

とても都合よく、木の板が。

その他、必要と予想される材料、工具類の中で家にあるもので代用できないものについては一部、実家から送ってもらった。
今後、製作過程で必要な材料がさらに増えていくだろうが、家にあるもので賄えなければ随時購入して揃えていくこととする。


長くなったので、今回はここまで。
次回「かがしコンテストに参加した話#2 @相生」に続きます。


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