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コロナを超えた先を予言するワルリ画『Recreation』

現在、ロックダウン中の村で、彼らは牛糞を塗ったキャンバスにこんな絵を描いた。ビヨンド・コロナ=コロナ禍を超えた先にあるものは何か、そんなテーマで描かれた絵。タイトルは『Recreation』。

なんて美しい村だろう。最初に村を訪れたときの印象だ。インド、先住民のワルリ族の村を最初に訪ねたのは2011年だった。

ワルリ画という壁画文化をもつ先住民ワルリ族の村。ムンバイからのアクセスということはわかっていたけれど、当時、彼らの住む場所については謎に包まれていたと言えるだろう。ワルリ画を扱う店の人に聞いても、どこにあるか知らないと言う。「なんとなく」を頼りに、チャーターした車を走らせた。

随分と遠回りをしたのかもしれない。なんども同じ大木のある交差点を通り、予約したホテルにたどり着いたのだった。

朝起きたら、ホテルのロビーにワルリ画があり、ついに来た、と言う確信を得る。そこからオートリキシャーのおじさんを頼りにワルリ画家を訪ねた。

福岡アジア美術館の招聘で来日したこともある著名なワルリ画家ジブヤさんにも会えた。3軒目に行ったワルリ画家、ラジェーシュさんを、当時、私たちがビハール州で開催していた壁画の芸術祭「ウォールアートフェスティバル」に呼ぶことから始まったワルリ族との交流。

まさか、こんなにも長い付き合いになるとは。このnoteの記事では、「Love and Peace for Tribes❤️」をテーマにインド先住民との交流を少しずつ紐解いていきたいと思っている。

話を戻そう。牛糞でメンテナンスする土間でチャイをいただいたとき、ここはなんて美しい場所だろうと思った。都市部にいれば、排気ガスやPM2.5、乾季の埃っぽさから逃れることはできない。ところがここにはシンとした、30℃超えの外気温でも、ひんやりした空気が漂っている。

今はコロナ禍で、大都市ムンバイに近いこの地域はもっとも感染者の多いレッドゾーンに指定されている。ロックダウンが長引き、買い物に便利な街へ行くことも禁じられているそうだ。

そんなロックダウンの最中に、ワルリ画家のワイェダ兄弟が描いて、先ごろ完成したばかりの絵、それがこの『Recreation』だ。

あなたはこの絵をどう見るだろうか。

新型コロナウィルスが点在する森の中に都市のアイコンである建造物が埋もれている。よく見るとスカイツリーもあるし、凱旋門もある。それは現代人が生きた証だ。

ワルリ族やインドのトライブたちと付き合っていると、時間は私たちが作り上げた幻想に過ぎないと気づく。果てしない幾世代にも渡る宇宙の時間の中で彼らは生きている。

絵の中には、ワルリの神話に登場する2人の創造主が命の種を撒いている。私たちはウィルスとの共生を果たしていけるのだろうか。再創造されるこの世界に人類は登場するのだろうか。

#ゆたかさって何だろう  #インド #先住民アート #新型コロナウィルス

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