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【読書記録】アフターデジタル2 「僕らが掲げるDXは、どこに向かっているのか」

藤井保文著「アフターデジタル2 UXと自由」(2020年)を読みました。各章のまとめと、感想を書いていきます。昨年、発売されていた前作「アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る」では、オフラインとオンラインの区分けではなく、オフラインがオンラインを包括するOMO(Online Merged Offline)という考え方には、非常に驚かされました。なので今回、書店で見かけた時には、すぐに手を取りました。
まずは、各章のまとめから

第1章 世界中で進むアフターデジタル化

まだまだ日本のDXが進まない理由は、

日本のDXは、「リアルを中心に据えて、デジタルを付加価値と捉える」という「ビフォアデジタル」的な考え方に根ざしている例がほとんどです。

  日本のメーカーにとって、分かりやすい例は、アメリカの寝具メーカー「Casper」だ。これまでは百貨店での店頭販売だけでしたが、雑誌の刊行やSNS発信、美しい包装や100日間の返品、ベッドにセンサーを組み込み商品改良など、単純な商品販売を超えたブランド力に力を付けています。世界観を作り、テクノロジーを駆使して、顧客とのリレーションを作っていく

第2章 アフターデジタル産業の生き抜き方

 同じように見える事業でも、各社の世界観によって、違いにが出てくる。決済PFの送金例が出ていた。アリババは、「デジタルによって、商取引を円滑にし、中小企業を支援する」ことをコンセプトに、効率的に素早く的に送金できるように構築している。テンセントは、「すべてをコミュニケーション化する」ことをコンセプトに敢えて、無駄と思われるアクションを増やすことで、ユーザ間のコミュニケーションのきっかけを作っている。世界観を作ることで「この企業は、こういう存在」と認識される

 中国のカーメーカーであるNIOは、単に車を販売するだけでなく、定期的なメンテナンスや専用のラウンジを設け、「鍵を渡してからの付き合い」を生み出し、顧客接点を増やしている。

 Wechatのアプリに、体験型ビジネスを支援するミニプログラムが存在する。サービサーが自社でアプリを作ると費用もかかる上になかなかダウンロードして貰えない。という状況になる可能性があるため、決済プラットフォーマーの接点の中に組み込むことで接点を増やすことが可能。

 DXを行う企業は、まずシステムの先行導入やビジネスモデルの変更を考えてしまいがちですが、顧客との関係性の変化を捉えて、価値を再定義することは何よりも率先して行われるべきである。

第3章 誤解だらけのアフターデジタル

 ECが20%を超えている国は、存在しない。中国が20%、アメリカが15%で頭打ちになっています。中国がこれまで以上にオンラインに力を入れている理由は、顧客獲得のコストがオンラインよりオフラインの方が安くなったため。

 DXの進め方の中で、様々なデータの取得を目的にすることがある。だが残念ながらそのデータによって、どのような解釈が得られて、ベネフィットを生み出せるかが分からなければ、データに価値がない。
データの活用方法は原則3つ
 1.マーケティングや広告
 2.金融(支払い能力があるか)
 3.インフラ(交通や医療など、チェック)
 アリババでも取得しているデータを全て使っているわけではなく、限定的な範囲での活用に留まる。

 UXとは、どのような顧客との関係性はどのようなものであり、どのような体験を提供する存在になるべきなのかを考える活動である。ユーザの状況理解とそこに提供すべきUXがないまま、DXを進めようとしてしまっているのです。

 DXの事業は2つの方針
 1.顧客との関係性を新たにすることから生まれる提供価値やビジネスモデルの変化
 2.コストや生産性の効率・パフォーマンスを高めるための変化

エコシステムやデータ売買など、実現性の見えない大きな絵ばかり書くことが間違いに繋がる。

第4章 UXインテリジェンス 今私たちが持つべき精神とケイパビリティ

 Capabilityとは直訳すると能力。企業のコンセプトに繋がるものとして、日本の「おもてなし」がある。おもてなしは、美徳やモラルが共有されていることを前提に、むしろこちらが作り出した世界観を相手に伝えること。
 アーキテクチャーは、環境の設計を通じて、行動をコントロールする手段。テクノロジーが社会のアーキテクチャーを作る。

■UX企画力のケイパビリティ
・全体像:バリュージャーニーを形作るUX・データ・AIのループ
 →掲げる世界観をもとにどのようなデータを取得し、どのようなアウトプットをAIから出すか決定する
・基礎ケイパビリティ:ユーザの置かれた状況を理解する
 →ユーザにとっての価値がない、すでに市場に代替え手段が存在する
 →ユーザにとって、遠すぎる幸せな状態を定義する。
・ケイパビリティ①:ビジネス企画のためのUX企画力
 →ビジネスモデルから先に考えない。
 →企業の系譜と環境の変化を見る。
 →ペインポイントをゲインポイントへ転換す
・ケイパビリティ②グロースチーム運用のためのUX企画力

第5章日本企業の処方箋

 今までの言われたことを高品質で実現するだけのを命令型組織では、流動的に変化していく中でもの各人の行動を、お互いに対話しながら世界観を作っていける対話型組織に変わっていく必要がある。方向性や指針など、明確な数値を追うこれまでとは違い、意味を作っていくことになる。
 組織の中で、具体的な意味やどういう未来を良しとしているのか、最近の書籍や記事、動画などで、シャアしたいものは何か、車内事例のどれを評価しているかのか、共有しながら行動を規定していくことが大切。

読書コメント

 自分自身ここ1年、仕事をする中で曖昧なDXに多く触れてきた。自社ももちろんだが、各システムベンダーが「DX」という名ばかり旗を降っていたように感じる。私自身も同じくDXを使って仕事をしていたが、「ITによって、一人ひとりがより便利に、効率的になること」くらいに定義していました。これまで以上に”一人ひとりにパーソナライズされたサービスになってきて、便利になる”という意味合いです。ですが今回本を読みながら、企業の世界観の内容をこれまでの自分の考え方とは、違うので面白かった。

 システムというのは、より早く、より楽に、より便利に、と大きな方向性は決まっていると勝手に思い込んでいたが、今回本に登場した企業が掲げる世界観というのは、ユーザをファンにするものを持っている。(より早く、より楽に…というのも突き詰めれば世界観かもしれないが、そんなレベルではないので)。そこで改めて自分の企業における世界観とは何か?を考えているが、なかなか難しい。昔ながらの大企業であることは、お客様にとっては馴染みのある安心感や長年、業界に根ざしたノウハウなのだろうか。これから会社の人に話を聞きながら、整理していきたい。

 実際に今後も社内のDX事業に関わるにあたって、エンドユーザへの視点が非常に掛けていると思っていた。「こんな技術が…」「ビジネスモデルが…」「回収計画が…」と全て大切な視点だと認識しているが、DX推進に当たって、まず第一に考えるべき「エンドユーザの状況を理解する」ことだと感じる。私のような下っ端ではあるが、社内に発信しながら、今後の仕事もやっていきたい。

 またビーマップのHPを見ながら、面白そうな仕事だな〜と思っていました。自分の今の仕事でDX事業を推進できた時には、色んな企業のDXを推進するビーマップのような会社で働くのが面白そうだ。

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