体外診断薬と医薬品の知財戦略

最近もいろいろ知財戦略の相談を受ける。そんななかで、体外診断薬に関する相談があり、低分子の知財戦略と体外診断薬の知財戦略の相違点について考えさせられる局面があった。

低分子は、いわゆる基本物質特許展開戦略なので、極論すれば、1特許で十分という局面も多い。しかし、体外診断薬は、分類は歴史的経緯もあって医薬品分類だが、構造的には医療機器であり、知財戦略も複合戦略をとらざるを得ない。実際、同じ知財専門家でも、その点の認識がなく、「薬」だから、ということで、盲目的に1特許で押さえきれますとの意見を強烈に主張する人もいる。同じ知財戦略といっても、レギュレーションがあったり、技術標準等の考え方もあったりするところ、知財戦略の多様性を認識して進めなければならない。

特許権は、独占権であるとの認識がある。一面で結果的にそのようになる効果が得られるのは事実であるが、直接的に得られる権利は、排他権である。他者排除を積み重ね戦略的にポートフォリオを積み重ねることによって、(これには、他者の権利取得を妨害することなども含む)、自己のフィールドを固め、独占できるか、あるいは競争力を確保できるか、ということになる。あくまでビジネスツールであってどのようにポートフォリオを形成するか、が重要になってくる。そして、このようなポートフォリオは、プロジェクトを進めることが決定した時点で、策定をしておくべきである。

また、低分子にしろ体外診断薬にしろレギュレーションを見据えた知財戦略を立てなければ、空振りになる。

スタートアップや中小さんの相談を受けるときによくある事象であるが、アドバイスを与える方も分野ごとにきめ細やかなアドバイスをしなければミスリードする結果になりかねないことを痛感した局面であった。

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