次世代バックオフィスのキャリア戦略

次世代バックオフィスのキャリア戦略

SBO(Startup Back Officer)勉強会&Meetup #2に登壇し、これからのバックオフィスのキャリア戦略についてお話しをしてきました。SBO勉強会という位置づけだったのですが、ターゲットはスタートアップのバックオフィスよりも少し広げて「次世代バックオフィスを目指す方々」としました。

スタートアップのバックオフィスは、創業期は特に「1人で何でもできる」「とにかく何とかする」という能力が求められます。新たなビジネスモデルを構築し、市場を開拓し、社会を変える。それがスタートアップですので、そのジェットコースターのような経営を状態を支えるために、縁の下の力持ちとしてとにかく会社を、お金を、人を回していくのがSBOに求められる役割だと思っています。SBOには世間でイメージされているような受け身の事務職的な要素はあまりありません。仕事はいくらでもあるので、みずから業務を構築していく、というよりも文字通り「とにかく何とかする」という感じです。

一方で、企業規模がある程度大きくなるとバックオフィスは、経理・人事・労務・・・などと役割ごとに細分化され、マニュアル通りに当たり前のことを当たり前に、ミスなくこなすことを求められます。ここでは、バックオフィスの人員の多くは、事務処理をするために雇われている人たちと言っても過言ではありません。

しかし、人手不足が深刻化し、経済が停滞している先進国において、自動化できる仕事をわざわざ給料を払って人間にやらせるような余裕はなくなってきました。経営者の本音を代弁すると「作業しかしない人員はもういらない」ということになります。

今後10〜20年程度でいわゆる事務作業と呼ばれる仕事のほとんどはシステムに代替されていくことは間違いないでしょう。ただし、システムで自動処理をするためには誰かがその要件を定義し、フローを決め、データを流し込む仕組みを作らなければなりません。現時点でこれができるのは、ITリテラシーが高いバックオフィスの人たちです。この方々こそが「次世代バックオフィス」であると私は定義しています。

マニュアル通りに処理をするのではなく、業務全体を俯瞰し、処理を可能な限り自動化するために業務フローを構築することができる人たちです。プログラミングはできなくても、自動化や効率化を実現するためのシステムの要件を自らの言葉でエンジニアに伝え、業務フローを可視化し、標準化を進めていくのです。

バックオフィス方面でキャリアを築いていくための1つの方向性は、間違いなくITツールを駆使して業務自体を再構築できる方向だと思っています。もちろん、法律、税務、会計などの専門領域をより深掘りしていくという従来通りのキャリアも否定しているわけではありません。ただ、そっち方面は非常に競争が激しく、一握りの優秀な人しか生き残れない領域ですので、いわゆるH型人材として、複数の分野を掛け合わせてキャリアを設計していく中の選択肢の1つに、ITによる業務の再構築というスキルは入ってくるだろう、というお話です。

この方向性の中で、私自信はkintoneやSFDCなどのCRM構築とクラウド会計の導入支援をして、業務プロセスを圧倒的に効率化させるという仕事をしています。この仕事はkintoneやSFDCの構造を理解し、会計側の処理に精通し、営業やマーケからバックオフィスまでの業務フローを構築できる、という3つの能力の組み合わせで成り立っています。自分で言うのもあれですが、これまでバックオフィスをやっていた人が簡単に目指せるほど甘い仕事ではありません。

今回のキャリア戦略として伝えたかったのは、「業務設計士を目指して欲しい」ということではなく、自分の能力、情熱、そして稼げるという3拍子揃った仕事をする、という気持ちで自分のキャリアの方向性を模索して欲しい、ということです。ここでいう「稼げる」は、自分の手の届く範囲の人たちを幸せにできる程度です。決して、大金持ちになって大成功するというレベルまでは考える必要はありません。

バックオフィスの仕事はマニュアル通りに処理すればOKというほど甘くはないですし、多くの方々はそこで貴重な経験をたくさんしてきているはずです。しかし、当たり前のことを当たり前にやることに関しては、システムに勝つことは不可能です。今の仕事を極めるのではなく、今の仕事のスキルにどんなスキルを掛け合わせていけばいいか、を考えなければいけない時代になってきているということです。今の仕事の延長線上には、幸せなキャリアプランを思い描くことの方が難しいのではないでしょうか。

次世代バックオフィスのロールモデルはいません。自分のスキルと経験が活かせて、情熱を注ぐことが出来て、そして稼げる仕事。そういう仕事がきっと作り出せるはずなのです。ぜひ、自分だけの次世代バックオフィスのキャリアを切り開いてください。

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