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“ストリーム”という概念

こんにちは、BYARD(バイアード)の武内です。

BYARDは現在、複数の企業様にトライアルを実施していただきながら、改善や様々な機能を開発中です。トライアルを進める中で、ローンチする際には実装されていなければならない機能もだいぶ見えてきたのですが、当初の要件よりもかなり膨らんでしまったこともあり、ローンチ時期は2022年の秋頃を予定しております。

さて、BYARDではあまりなじみのない「ストリーム(Stream)」という概念を中心にプロダクトを組み立てております。今回のnoteではこの概念について説明していきます。

1.TODOでもプロジェクト管理でもマニュアルでもない

業務を管理する際にはTODOリストやプロジェクト管理ツールを使うことが多いでしょう。以前実施したアンケートを見ると、これらのツールに加えてExcelでの管理表も併用されているようです。

BYARDを開発するにあたっては、開発前のヒアリングからβ版利用時のフィードバックなど、様々な形で百社を超える企業のバックオフィスの方々にお話を聞かせていただきました。その中で私たちが感じたのは「どんなツールを使っていても、決してやりたいことが実現できているわけではない」ということでした。

多くの方がおっしゃっていた最大の課題、それは「業務の属人化」の問題であり、「業務を引き継ぐための負担が重い」ということでした。裏を返せば、「業務プロセスを整理」し、「業務の標準化」をしたいということなのですが、TODOリストやプロジェクト管理ツールではこの課題には対応できないところが大きな問題です。

■TODOリスト

経理、労務、法務、営業事務などのバックオフィスの仕事の多くは、やるべきことも期限も明確なものがほとんどです。よって、TODOリストやExcelの管理表などで担当者や期限を管理し、抜け漏れを防ぎます。

仕事の内容や担当者に変更がなく、ずっと同じような仕事を毎日・毎月繰り返すだけであれば問題ないのですが、現実には担当者も変われば、仕事の内容も変化していきます。期限までに完了したかどうかを管理するだけでは、TODO管理はできても、業務管理のレベルには達しないのです。

■プロジェクト管理ツール

複数の工程がある業務ではプロジェクト管理ツールが使われることも多いと思います。企業での業務において、1人で完結する仕事というのはほとんどありませんし、誰が何をいつまでにやるのかが明確になることで仕事はスムーズに回ります。

しかし、製作やイベント準備などのプロジェクト進行型のものとは違い、バックオフィス業務ではガントチャートなどはあまり必要ありません。結果として「ちょっと高度なTODOリスト」として使われていることが多いのではないでしょうか。

また、プロジェクト管理ツールでは、同じようなプロセスを何度も繰り返し実行するという使い方は想定されておらず、バックオフィスの仕事との相性はあまり良くないという側面もあります。

■マニュアル

業務の手順や進める上で必要な様々な情報を記述したマニュアルは、バックオフィスでは定番でしょう。しかし、「マニュアルを読めば誰でもできる」というのは全くの幻想です。業務をそのレベルまで標準化することも、誰が読んでも確実にできるように記述することも、非常に高度なスキルと経験が要求されるからです。

よって、多くのマニュアルは作ることが目的化してしまい、業務の内容が変化しても見直されることなく放置されていきます。マニュアルや社内wikiは作ることがゴールになり、そこで多くの人が力尽きてしまうのです。

2.ストリームという言葉

BYARDのコンセプトについて、CTO・辰本さんとディスカッションしていた際に、「これはワークフローでも、フローチャートでもない」という話になり、そこで辰本さんが命名したのが「Stream(ストリーム)」でした。

IT界隈には英語をそのままカタカナにした用語が多数存在しますが、「ストリーム」という言葉はこれまで日本ではあまり使われたことはないと思います。日本語にうまく訳すことは難しいが、なんとなく言いたいことは理解できる、というちょっと新しい感じを出すにはぴったりだと思ったのです。

例えば「カスタマーサクセス」という言葉も浸透したのはここ数年のことです。今は誰も使っていなくても繰り返し使用することで、いつの間にか標準化していけばいいと考え、ちょっとチャレンジングではありますが、新しい概念と言葉を使うことにしました。

「Stream(ストリーム)」をIT用語辞典で引くと以下のように解説されています。

ストリームとは、小川、流れ、連続などの意味を持つ英単語で、ITの分野では連続したデータの流れや、データの送受信や処理を連続的に行うことなどを意味する。

IT用語辞典

もう少し業務サイドの観点でいくと、『チームトポロジー』では以下のように記述されています。

ストリームとは、「ビジネスドメインや組織の能力に沿った仕事の継続的な流れのこと」とされています。組織が価値を生み出し顧客に届くまでの価値の流れだと考えてよいのではないかと思います。

『チームトポロジー』より

ワークフローツールは電子稟議であり、フローチャートは業務の流れや役割分担を記述したものです。RPAはパソコン上で人間が行う単純作業を自動化するものであり、iPaaSはAPI連携によりSaaSをまたいで処理を自動化するものです。

しかし、私たちが作りたいと考えているのは(大きな意味での)業務全体のプロセスを漏れなく整理し、かつ、その上で進捗管理を行うことができ、(将来的には)各種SaaSへの連携や自動化まで繋げることができるものです。

SaaSが普及すればするほど、オールインワンのツールは減り、1社で数十個のSaaSを使うのが当たり前になりつつありますが、ツールをまたぐことは当然ながら、人の判断や処理も含めて全体の業務プロセスをコントロールできるようなプロダクトは現時点では存在しません。

ツールや担当者のところで分断されてしまっている業務を、ストリームという大きな流れの中に組み込むことで全体を把握することが容易になり、新しい業務の設計図として機能するような未来をイメージしています。

また、業務全体のプロセスがデジタル上にあることで、あらゆる業務がBYARDを起点に処理され、進捗状況が管理されれば、人やシステムの処理ログもここに集約されるはずです。そうなれば、複数のシステムをまたぎ、かつ、人の処理・判断が介在する業務全体の分析や振り返り、改善が行えるプラットフォームになり得ます。

後者については、少し未来のお話にはなりますが、あらゆる業務のプロセスを「Stream(ストリーム)」という枠組みであれば受け止めることができるのではないか、と考え、言葉そして概念から提唱することにしました。

3.全てを自動化することなどできない

業務の標準化。いろんなところでこの言葉を目にしますが、これは全てをシステムで自動化するという意味では決してありません。AIをはじめとしたテクノロジーの進化の文脈の中ではいつも「人間の仕事が奪われる」という話が出てきますが、仕事が全て自動化されるような未来はまだSFの中だけの話です。

私たちが日常的に行なっている仕事は人間からしたら簡単な内容に思えても、複雑な要素が組み合わさり、状況に応じて柔軟な判断や処理が求められるものがほとんどであり、処理の一部を自動化したり、判断を支援するようなレポートを提供することがシステムが対応できる部分です。人間の仕事が全て代替されるのではなく、テクノロジーはあくまでも人間の仕事を支援するために存在するに過ぎません。

単純作業を自動化することで業務を○○時間削減したり、OCRで紙の書類を読み取って正確にデータ化したり、といったデモンストレーションは分かりやすいですが、それは業務の「点」の改善にすぎず、本当に改善すべきは業務プロセス全体という「線」であり、仕事のやり方そのものという「面」の見直しです。

AI、ブロックチェーン、DX・・・。現れては消えていくバズワードに乗っかるのではなく、私たちはもっと本質的な業務プロセス全体の可視化や、人とシステムが共存した処理プロセスを全て受け止められるものを作りたいと考えています。

人間の思考や行動は私たちが考えているよりも遥かに複雑です。それらを単純化して自動化してしまえば、柔軟性がなく使い勝手の悪い業務プロセスが出来上がるだけです。業務の現場に本当に必要なのは自動化ではなく、人間の頭の中にある処理プロセスを忠実に再現しつつ、標準化できるツールなのではないでしょうか。

だからこそ「Stream(ストリーム)」という言葉と概念を使って、全体を俯瞰しつつ、個別のTODO管理や進捗管理も行うことができるプロダクトを作りたいと考えました。完全な自動化など絵に描いた餅だからこそ、仕事の裏側にある業務の流れを全て押さえることが今こそ必要なのです。

ストリームは業務の一連の流れを記述した設計図であり、かつ、デジタル上に存在することによりそこで進捗管理を行うことができ、いつでも見直しができ、集まったログ見ながら分析改善ができます。

複数人が関わる業務であればお互いに全体の流れを理解しながら進めることができますし、1人で完結する業務であっても処理プロセスをストリームとして残すことで、スムーズに引き継ぎを行うことができるようになります。

自動化やAI○○は手段に過ぎないので、もっと本質的な「業務設計ができるようになる」ツールとしてBYARDを提供していきたいと考えています。

4.おわりに

何度説明しても超絶地味で、裏方的なプロダクトであるためポカーンとされることも多いのですが、刺さる人には刺さる領域でもあります。業務の標準化や全体のプロセスの改善には特効薬などありません。1つのツールを入れることで魔法のように解決することもありません。

だからこそ業務設計領域から支援し、繰り返し業務を行いながら改善しつつ、業務を標準化していくためのプロダクト、というものに本気で向き合うことが必要なのです。

業務設計士®︎として、私がこれまで業務設計する際に取り組んできたことを具現化しつつ、ヒアリングやトライアルに協力いただいた方々からのフィードバックも取り込みながら、業務を行う上でなくてはならないプロダクトになるように現在開発を進めております。

コンセプトやプロダクトの方向性についての期待値は非常に高い状態ですので、しっかりチームを作っていいプロダクトをお届けしていきたいと考えています。絶賛採用中ですので、ご興味がある方はこちらからエントリーをお願いします

カジュアルに私からもう少し話を聞いてみたい、BYARDについて話したいという方はmeetyもありますので、こちらもどうぞ。

BYARDを引き続きよろしくお願いいたします。

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