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リベロ・コンサルティングの社長からSmartHRグループにジョインしました

こんにちは、武内です。
かなり唐突な報告になってしまうかもしれないのですが、本日、2021年4月1日よりSmartHRグループの一員になることになりました。このnoteではその経緯や今後やりたいことなどを書いていきます。

■リベロ・コンサルティングのこれまで

独立開業してから3年、リベロ・コンサルティングを起業してから2年が経ちます。この間、Twitterでの発信や様々なイベントでの登壇、そしてスライドの共有などによって、バックオフィス界隈を中心に様々な立場の方々と交流することができました。

中でも大きかったのは2018年10月に公開した「MFクラウドとfreee」というスライドを多くの方々に閲覧いただき、それをきっかけに色々な場面でお声かけいただいたことです。

2020年にはBrownies Worksを立ち上げました。リリース後すぐにコロナ禍による緊急事態宣言があり、多くの企業が強制的に変化を求められましたが、Brownies Worksはもともと「リモートワーカーによるサービス提供」を前提に設計していたため、ほとんど影響はありませんでした。

順調にお問い合わせやご紹介をいただき、現在のメンバーで対応できるキャパいっぱいまでお客様を増やしてきています。そのBrownies Worksも次のフェーズということで、分社化を行うことを先日発表しました。

このnoteの中でも「次はバックオフィスのプロジェクト管理領域をやりたい」ということは書きましたが、今回はその事業をリベロ・コンサルティングとしてではなく、SmartHRグループの一員として実施することにしました。なぜそういう結論に至ったのか、これからその経緯などを説明していきます。

■なぜSmartHRグループ?

「新規事業としてバックオフィス支援領域のSaaSを作りたい」という漠然とした思いを持っていた2020年の秋頃、Twitterで流れてきたSmartHRのこんなイベントに参加しました。

SaaSをゼロから開発するためには、既存事業の利益の範囲で行うか、そのための資金調達をしてから実施するか、のいずれかになります。前者では必要な資金がかなり不足しそうだと思っていたので、資金調達をどうしようか、どういう風に事業計画を立てようか、ということをなんとなく考え始めた時期でしたので、「へぇSmartHR子会社って外部から社長募集してるんだ」「強くてニューゲームっていい言葉だな」ぐらいに思って、軽い気持ちでイベントに参加しました。以下、上記のブログから私が興味をもった部分を引用します。

一方、ヒトに関しては SmartHR 社に限らず、どの会社でも苦労していることだと思います。特に新規事業向きの人材の希少性は高く、「自分で起業する」と比較したときに、選択肢に入るようなスキームを用意する必要があります。

彼ら/彼女らに興味を持ってもらえるスキームとして、会社を分け、資金は SmartHR が提供し、めんどうなバックオフィス業務は本体が巻取り、SmartHR の各種アセットを活用しながら新規事業に集中できる、そんな「強くてニューゲーム」ができる手法をとっています。

起業が「ハイリスク・ハイリターン」、大企業の中での新規事業が「ローリスク・ローリターン」だとすると、SmartHR のグループ会社は「ミドルリスク・ミドルリターン」な仕組みです。

イベントの内容は面白かったので、その後NDAを結んで参加する「(本当に)全部答える会」にもエントリーし、各社のぶっちゃけ話もたくさん聞いた上で、新サービスを開発していく上での選択肢の1つとして面白いな、と感じるようになりました。

特に魅力を感じたのは
・ミドルリスク・ミドルリターンの仕組み
・SmartHRの知見やアセットを有効活用できる
・事業開発に集中できるようにSmartHRから支援を受けられる

という部分です。

こんな条件なので応募も殺到するだろうし、まぁダメ元でエントリーしてみるか、ぐらいの軽い気持ちで応募し、CEO・宮田さん、CFO・玉木さん、COO・倉橋さんという経営陣やSmartHR社の方々との面談を実施しました。

面談としては「新規事業のネタの善し悪し」はあまり重視しない方針のようで、ビジネスコンテスト的な面談ではなく、「これまでやってきたこと」「これからやりたいと考えていること」などを中心に色々な話をさせていただきました。

相性の問題もあるだろうし、自分としてはダメ元で応募しているので、最初の頃は「ダメだったら自分でなんとか資金調達するんで」みたいな飄々とした受け答えをしていたのですが、面談が進むにつれて「あれ?これはいけちゃう?」みたいな妙な緊張が生まれ、だんだんと受け答えが堅くなっていったように思いますw

そして、2021年のはじめに「ぜひ一緒にやりましょう」というご連絡をいただきました。新規事業を実行するための1つの選択肢として軽い気持ちで応募したものが、まさか採用されるとは・・・

1000に3つと言われるスタートアップの世界。最初からうまくいくわけがなく、何度も仮説検証をして、ピボットをしながらサービスを構築していく必要があり、結局は「なんど打席に立てるか」が非常に重要です。同時に「すでに証明されている失敗をしない」ということも大事であることをこの2年間で痛感していました。

今回のSmartHRの新会社を作るという試みは、SmartHRのアセットや支援をフル活用することで「成功の確率を上げる」という観点ではかなりいいのではないか、と感じており、「SmartHRから資金調達した」というイメージで新しいサービスを作ってみようと考えて、SmartHRグループにジョインすることにしました。

■SmartHRグループでなにをやるの?

今後、新設法人をSmartHRのグループ会社として設立し、そこの代表に就任する予定ですが、4月1日段階ではまだ法人が設立できていないため、いったんはSmartHR社・新規事業責任者という肩書きで、新規事業の立ち上げに向けて色々と活動をしていきます。

まだまだ仮説検証を繰り返し、ヒアリングなどをさせていただく段階なのでだいぶ柔らかいのですが、領域としては「バックオフィスのプロジェクト管理領域」を考えています。

バックオフィスの業務は繰り返しが多く、期限が厳格であるにも関わらず、いわゆるプロジェクト管理としての科学的な検証や運用改善が行われていない領域です。この2年間、様々な企業のバックオフィス構築を支援する中で痛感したのは、多くのバックオフィスが抱えているのは「API連携やAI、自動化以前の問題」だということです。

例えば、受取請求書の処理の自動化については、LayerX INVOICEsweeepinvoxなどの参入企業が増え、今後も機能改善が繰り返され、圧倒的な効率化が実現されるでしょう。それ自体は素晴らしいことだと思いますが、「受取請求書の処理」というの効率化を深掘りしたとしても、バックオフィス業務全体というの効率化にはそんなにインパクトがないのではないか、と感じています。

『ザ・ゴール』シリーズでも繰り返し問題提起される「個別最適と全体最適」の問題です。仕訳の入力や請求書の処理などのの効率化や改善、自動化は分かりやすく、各SaaSのアップデートの目玉になりがちですが、バックオフィス全体の業務プロセスの効率化や生産性の観点では、点ではなく面の改善が重要というのが私の持論です。

DXにまつわるもののほとんどが、点ではなく全体の業務プロセスの再構築を通じた本質的な改善があってはじめて効果が出るものです。このあたりは、2020年度に何度も依頼をいただいた「バックオフィス×DX」というテーマでの登壇の際にもお話しさせていただきました。

バックオフィスの業務プロセスや運用はかなり専門性が高く、属人化しやすい領域であり、システムの導入で簡単に効率化できるほど単純なものではありません。そもそも全体の状況を正しく把握している人もいないし、フロー図やマニュアルは最初に作ったまま見直されずに形骸化しています。

そこで、業務プロセスを常に最新の状態にアップデートしながら、期限や進捗状況などを簡単に把握ができ、コミュニケーションや資料、データのやり取りが一元管理ができ、そしてそれらを振り返りや分析することで改善PDCAを回すための基盤になるようなツールが必要なのではないか、と考えています。

例えば、月次決算や入社手続き、予実管理や役員会の資料作り、開示資料の作成などをここでは「プロジェクト管理が必要な業務」として定義しています。おそらく、現時点でこれらをプロジェクト管理対象として捉えている人は誰もおらず、チェックリストやマニュアルは存在し、なんとなくのスケジュールも決まっているが、期限までに終わらせるのが精一杯で、属人化したまま業務が回っているという会社がほとんどではないでしょうか。

こういう状態をなんと言えばいいのか。先日読んだCADDiさんの記事ですごくぴったりな表現を見つけたのでここで紹介させてください。それは「非効率の常態化」という言葉です。日本のバックオフィスと製造業などの現場の仕事って実は本質的な課題は似ているのではないか、という仮説を持っていて、CADDiさんやKAMINASHIさんの記事は欠かさずチェックしているのですが、この言葉は言い得て妙だと思いました。

バックオフィス業務は個人的には段取りが8割方成果を決める領域だと考えていますが、プロジェクト管理はまさにこの「段取り」の部分をコントロールするために必要なものだと思っています。

バックオフィスの構築ノウハウを駆使して、バックオフィスによるバックオフィスのためのプロジェクト管理ツールを作りたい、それが私がこれからやりたいことです。

長々と書きましたが、具体的な機能の選定や開発はまだまだこれからです。ただ、既存のタスク管理ツールやflow型のチャットツール、stock型のドキュメントツールのスキマに落ちてしまっている領域がかなりあると思っていますので、そこを深掘りしながら、本質的にバックオフィスの業務全体が効率化することができるようなものを作っていきたいと考えています。

■実際、SmartHRグループ会社ってどうなの?

このスキームは「SmartHRのアセットを活用できる」と書きましたが、初期は完全にプロダクトをゼロから作っていくことになりますので、そこは創業者が脳に汗をかきまくるしかありません。CEO・宮田さんもよく「プロダクトを作るという部分でのキツさは変わらない」とおっしゃっています。

領域は基本的にはB2B SaaSで、SmartHRとシナジーがありそうなものという条件はありますが、そこから大きく外れなければSmartHRとしては「好きにやってください」というスタンスのようです。現在、定期的にCEO・宮田さんと1on1のお時間をいただいていますが、あくまでも「自分自身が情熱を持って取り組めることに全力で取り組んで欲しい。必要なら支援はします」という感じです。いい意味で自由、ある意味では突き放す感じですが、大企業の子会社社長として「この事業をやってください」というお題を与えられるのとは全く違う感じです。

また、創業メンバーもグループ会社社長が自分で集めてくることも条件になっています。MVPを作り、PSF(Problem-Solution Fit)を見つけるまでは基本的には創業メンバーで回す必要がありますので、エンジニアの方が創業メンバーに含まれているのは必須条件だと思います。

仮説検証をして、Burning Needsを掘り当てるまでのキツさは、このスキームだからといって楽になるわけではありません。0→1は自分たちでやりきる覚悟がもちろん必要です。

しかし、CEO・宮田さんをはじめとした経営陣やSmartHRのプロフェッショナルなメンバーが色々な局面で相談に乗ってくれたり、事務作業や法的手続きの部分をバックアップしていただけるのは非常に心強く感じています。通常の起業ですと結構些末なことにリソースを取られたり、一人で悶々と考えていると負のループにはまってしまったりするのですが、そういうマイナス面を排除するためのバックアップ体制があるのはすごく嬉しいです。

そして、プロダクトがある程度立ち上がり、きちんとグロースしていきたいとなった段階では、SmartHRのマーケティングや広報も含めた知見を活用させていただくことができるというのは、プロダクトを作ったことがある人なら喉から手が出るほど欲しいサポートなのではないでしょうか。

まだプロダクトができてもいない段階でグロースの部分の話をするのも恐縮ですが、0→1が得意な人は1→10→100が得意ではないケースも多いと思いますので、後ろのことは気にせずにとにかくプロダクト開発に全力投球できるという環境だということです。

例えば、優秀なマーケティング担当者は基本的にはある程度の予算を持っている企業にいきたいと考えるので、予算が小さいスタートアップ初期ではなかなか優秀なメンバーにはジョインしてもらうことは難しいです。それが、SmartHRグループとして支援いただける枠組みがあるので、小さなスタートアップでは一緒にお仕事をするのが難しいような方と一緒にマーケティング施策を進めることができたりします。

グループ会社の社長は現在は募集をいったんストップしているようなのですが、このスキームに興味を持った方は募集が再開された際にはぜひよろしくお願いします。

■さいごに

バックオフィスは月末月初が忙しいです。経費精算や勤怠を締めて、会計処理を締めて、予実管理表を作って、役員会の資料を作って・・・

IPO前も忙しいですし、IPO後も開示やらなにやらでずっと忙しい。月初は良くて終電、へたすると2徹とかしてでもとにかく期限に間に合わせなければいけない。なんかそういう世界です。

果たして、こういう働き方をしていて幸せでしょうか?

真面目で責任感が強い人が多いので、頑張りすぎてしまうからか、こういう状態で働き続ける中で、燃え尽きてしまったり、体調を崩してしまう人をこれまで何人も見てきました。

ITの進化によりバックオフィスで使われる専門ツールはここ10年で劇的に進化しました。特にSaaSの台頭はこれからも業務を大きく効率化していく可能性を秘めています。

しかし、仕事のやり方や仕組みが驚くほどに進化していない。それが露呈したのがコロナ禍であり、だからこそ日本の生産性は低いままなのだと思います。すべてが場当たり的な打ち手であり、問題がありすぎる仕組みをそこで働く人達の頑張りだけで支えてしまっているのが現状です。

本当に足りないのはリソースやスキルではないし、ITツールの機能ではありません。ましてや現場の担当者が手を抜いているわけでもありません。ただ、誤解を恐れずに言うのであれば「頑張るところを間違えている」という状態です。そういう非効率の常態化はここで断ち切りたい、という強い思いを持ってプロダクト開発にのぞんでいます。

DXとは「オフライン(アナログ)がなくなった世界に変わる」ということです。システムはプログラムされた通りにしか動かないという前提のもと、それが円滑に機能するような仕組みを構築し、改善をし続けることが最も重要です。

それは担当者の頭の中や、阿吽の呼吸で回している仕組みから脱却し、科学的な検証や運用改善を行って、正しい型を作っていく作業でもあります。その基盤となるようなツールを作るのが私の目指しているものです。

課題しかない領域ですし、多くの人が「今のやり方が最高」だとも思っていないはずです。だいぶ大きなテーマですが、SmartHRグループの一員としてこの課題に正面から向き合い、解決に向けての一手を打てるようにやっていきますので、何卒応援をよろしくお願いします。

ノートの内容が気に入った、ためになったと思ったらサポートいただけると大変嬉しいです。サポートいただいた分はインプット(主に書籍代やセミナー代)に使います。