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労働力不足の解決策としての業務設計

こんにちは、BYARDの武内です。
GWは、旅行などに行かれた方も多いと思います。新型コロナウイルスの影響も一段落したということで、街中でも国外からいらっしゃった方をたくさん見かけるようになりました。

なお、GWという大型連休は日本だけなのですが、日本→国外の飛行機がたくさん飛ぶ関係上、国外→日本の便が比較的お安く購入できるということから、この時期の日本への旅行は結構人気があるようです。

さて、本日のnoteは業務設計は何のためにやるんだっけ、というお話しです。

1.労働力不足はAIでは解決しない

生産年齢人口の推移(総務省「H28情報通信白書」を基に作成)

日本がこれから確実に直面すること。それは人口の減少と高齢化による労働力不足です。未来のことを正確に予測することは難しいのですが、年代別の人口は減ることはあっても増えることはありません。つまり、数少ない予測ができる未来なのです。

生産年齢人口が減少するわけですから、これまでと同じやり方をしていれば業務が回らなくなるのは自明です。これを解決するために「DX」という名のデジタルシフトを各社が試みているわけですが、現時点では多くの企業(特に現場のスタッフ)にはまだ危機感がありません。

コロナ禍を経て、マネジメント層からは「業務がどのように回っているか分からない」「進捗状況が見えない」というご相談が増えたのですが、現場の方にヒアリングしてみると「前任者の時からこのやり方でやっているし、私は困っていません」という回答をいただくことが多いのです。

いや、困ったときにはもう遅いのですが・・・

仕組みではなく、現場のマンパワーによってなんとか回っている状態だと、休職者や退職者が数人出るだけであっという間に崩壊します。中長期的な観点で、担当者に依存しすぎない仕組みを作るのも大事なマネジメントの役割です。

では、今ブームのAIはこの状態を解決する銀の弾丸になるのか。
答えは(少なくともすぐには)「NO!!」です。

GPT-4やChatGPTによって、もう何度目かの「AIすごい!」「AIに仕事を奪われる!」みたいな記事が量産されるようになりました。たしかに、LLMの進化には目を見張るものがありますし、上手に使えば人間のいいアシスタントにはなると思いますが、AIに奪われる仕事は本当に限られた範囲に留まり、全体としての労働力不足の解決策にはなり得ないと現時点では私は考えています。

テクノロジーによって、人間の仕事や生活が脅かされる未来、という話はSFでよくある設定ですが、その未来が現実のものになるかもしれないという論調で語られるようになったのは2013年の『雇用の未来(The Future of Employment)』という論文(以下「オズボーン論文」)がきっかけでした。全訳をnoteに掲載されている方がいたので、ご興味がある方はどうぞ。

野村総研とオズボーン准教授との共同研究(2015年)では、「特定の条件下では日本の労働人口の49%がAIで代替可能」という予測も掲載され、非常にセンセーショナルな内容であったため、当時も非常に多くの記事がでましたし、いまだに「AIに仕事を奪われる」という主張の根拠としてはこの論文を提示するものが多いようです。

しかし、その後、これらの「人工知能脅威論」の多くが否定されており、その代表が2016年にドイツのZEW研究所のメラニー・アーンツ研究員らが作成した論文(以下「アーンツ論文」)でした。

オズボーン論文の問題点は、職業そのものを代替する、という風に論じたことです。自動化されるのはあくまでもタスクであり、職業そのものではありません。アーンツ論文では、職業をタスクごとに分解した上で、AIに置き換えられる確率が高いタスクがその職業のどの程度の割合を占めているかを機械代替リスクとして算出しています。

アーンツ論文を基にOECDが作成したレポートによると「自動化の可能性が7割を超える職業はOECD21カ国平均で9%」となっており、AIに仕事を奪われる未来はまだまだ遠いということがよく分かります。

さらには、AIなどの技術進化がどれほどのスピードで進むのか、人件費などのコストと比較してどうなのか、雇用というデリケートな問題をドラスティックに対応できるのか、等の様々な要素がからむこともあり、テクノロジーが労働力不足の解決策になるとは当面は期待できない、というのが現実的な解だと思います。

2.リソース不足か仕組みの不備か

労働力不足という問題をもう少し噛み砕いてみると、「今と同じやり方で業務を続けた場合、それを担うリソースが不足する」ということです。直接的な解決策は十分なリソースを確保することであり、デジタル上の単純な繰り返し作業であればRPAなどのツールで代替する、などがすぐに思い浮かびます。

ただ、そのリソースが確保できる見込みが立たないからこの問題が顕在化しているのであり、RPAなども本当に一部のタスクしか代替してくれないため、結局は多くの現場では非常にしんどい状態が続きます。

日本における生産年齢人口が減少することは目に見えており、テクノロジーによる代替も大して期待できない。そうなると次に考えるべきは「今と同じやり方で業務を続ける」ということを維持するべきなのかどうか、ということです。

多くのプロセスはそれが決まった時点では、必要性・最善性をもって構築されているはずです。しかし、その意義は時間とともに失われ、テクノロジーなどの登場によって外部環境が変わったとしても、見直されないことが多いのです。「今までのやり方」を聖域化してもあまり意味がないことがほとんどです。

新しいテクノロジーを導入するということは、それまでそこに限界が存在していたことを意味する。その限界と長い間、共存してきたということだよ。どうやって共存してきたのかだが、わかるかい。限界の存在を認識したら、それに合わせて習慣、評価尺度、ルールなどを作ってきたはずだ。
(中略)
テクノロジーというのは必要条件ではあるが、それだけでは十分ではないんだ。新しいテクノロジーをインストールして、そのメリットを享受するには、それまでの限界を前提にしたルールも変えなければいけない

チェンジ・ザ・ルール!』(エリヤフ・ゴールドラット著)より

日本においては前例主義をとることが多く、最適な業務プロセスになっていることの方が少ないと思います。常に業務プロセスを最適化するのは非常に大変だと思いますが、リソース不足で業務が回らない、という緊急事態には少なくとも、前提としていた「今までのやり方」を見直して再構築する必要があるのではないでしょうか。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉には、本来は業務のやり方そのものを見直し、デジタルでの処理に最適な形に再構築するという意味が含まれています。その過程で、新しいデジタルツールを導入する必要性がでてくる、という順序なのですが、業務の再構築は非常に大変で難易度も高いので、デジタルツールの導入という部分だけを強調して、「DXした(気になっている)」事例がなんと多いことか。

RPAなどによる小手先の業務効率化よりも、仕組みの再構築による本質的な業務効率化こそ、人手不足の日本に必要なものです。もはや「大量のリソースを投入してなんとかする」という選択肢は取れない、という現実から目を背けるべきではありません。

3.業務設計をするためのツール・BYARD

BYARDというツールは業務設計をするために作りました。機能的にはまだ十分ではないところも多いのですが、このツールを使うことで業務設計のPDCAサイクルを正常に回すことを容易にしたいという意図があります。

「業務設計」という言葉は今では色んな人が使うようになってしまい、単なる「業務プロセスを整理(可視化)して、改善する」程度の意味に使っているケースも見かけますが、業務プロセスといういつでも改変可能なものに対して、たんに一度改善して終わりではなく、常に改善し続けるというマインドで取り組む必要があります。

新しいテクノロジーが登場しなくても、常に企業を取り巻く状況は変化しており、当時は最適だった業務プロセスが、これからもずっと最適なものである保証はありません。

だからこそ、業務プロセスを可視化し、その上で業務を回しながら、いつでも改善をすることができる、という状態をつくるためには専用のデジタルツールが必要でした。ExcelやPowerPoint上で作ったフロー図ではメンテナンスに手間がかかりすぎるため、最新の状態を反映することはほぼ不可能だからです。

SaaSと同様に、業務プロセスにも「完成」はありません。常にアップデートし続ける必要があり、そのためにはデジタル上で業務プロセスを管理することができなければいけないのです。

まずは現在の業務をBYARD上に落とし込むことが必要ですが、そこで終わりではなく、BYARDの真価はその先の「改善を即座に反映できること」にあります。多くのフロー図やマニュアルが作りっぱなしでメンテナンスされないという問題を抱える中で、BYARDの「ストリーム」という概念は、業務を行う上で常に参照してもらうにはどうすればいいだろう、という発想から生まれました。

業務を行う上で常に開いているからこそ、改善も即座に反映することができるのです。「業務設計」というハードルが高そうに聞こえるかもしれませんが、基本はこのPDCAサイクルをいかに高速で回すかということです。

仕組みの再構築にBYARDを活用してもらえると幸いです。

↓↓BYARDに関するデモ動画(約13分)はこちら↓↓


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