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業務設計のPDCAサイクル

こんにちは、BYARD(バイアード)の武内です。

前回のnoteではBYARDの「ストリーム」という概念について書いたので、今回もその延長で私たちが考える業務設計のPDCAサイクルについて書いていきます。

1.業務設計とは

業務設計には2つの段階があります。多くの人がイメージする業務設計は後者の「業務再構築(最適化)」の方だと思いますが、前者の「業務整理(把握)」を疎かにすると、最適化とはほど遠い業務の再構築になってしまい誰も幸せになりません。まずはこの2つを説明していきます。

(1)業務整理(把握)

既存の業務プロセスがどうなっているかを理解し、整理し、可視化していくことは必要不可欠な作業です。全く新規の業務をゼロから業務設計をするケースでも、既存の業務プロセスを参考にしたりしながら構築していきます。

いわゆるタスク分解(タスクを適切な粒度で分解する)と近しいものです。やるべきことは「業務プロセス全体で、業務を適切な粒度に分解し、適切な順番に並べる」です。

これが、きちんとできている企業は実はほとんどありません。マニュアルやフロー図があればいい、というわけではないのです。読んでも理解できないマニュアル、細かすぎて全体像が把握できない指示書や手順書、実際の運用とは違う古いフロー図、こういうケースがゴロゴロしています。

マニュアルやフロー図があるだけでもまだいい方です。私の経験では、どちらも存在せずに、「担当者が自分の裁量で対応している」というケースの方が多いのではないでしょうか。

実際に業務を行っている人が整理していくのが一番いいのですが、自分が担当している業務の前後の流れを把握していないことも多く、なかなかスムーズに整理することができません。

まずは全体の概要(流れ)を大まかに整理し、そこから細部を整理していくのが遠回りのようで、一番不整合が起きにくいやり方です。

「○○さんがいないと分からない」というブラックボックスを残さないこともこの段階での大きな目的の1つです。大まかな流れを整理した上で、分からないところはそれぞれの担当者にヒアリングしたりして、細部を埋めていくことが必要です。

(2)業務再構築(最適化)

前述の業務整理を行った上で、ようやく業務の再構築(最適化)に着手することができます。再構築時には利用するシステムの入れ替えなどとセットになるケースが大半ですが、システムの導入を目的にしないことが重要です。

システム導入はあくまでも業務効率化のための手段。業務プロセスそのものをきちんと再構築して、生産性をあげることが目的です。システムベンダーさんは導入することが仕事なので、業務再構築や最適化の責任は当然に導入企業側にあります。

とはいえ、ここで最初からハードルを上げすぎると何も進みません。新しいシステム、新しい運用に移行するのですから、やる前から正解が分かることの方がまれです。

前段の業務整理がある程度出来ていることが条件ではありますが、最初から大きく変えずに、小さな改善をした業務プロセスを回してみて、再度改善点を洗い出してまた回してみるという、小さな改善を積み重ねていくやり方がオススメです。

急に大きく変えてしまったことで業務が回らなくなっては元も子もないですし、バックオフィス業務には繰り返し行うものが多いため、検証する機会は比較的多くあります。

重要なのは変え続けるということを当たり前にすること。設計はあくまでも仮説であり、それを実行することで検証し、改善して、また実行する。業務設計というのは、設計図を書いて終わりではないのです。

2.鳥の目と虫の目

ここまで業務設計をする上での把握→最適化の流れについて書いてきましたが、業務設計を行う上でもう1つ重要なのが「鳥の目と虫の目」という考え方です。

アナログな環境での業務はどんなに効率を上げたとしても、時間やリソースの制約があり、処理することが出来る量は限られます。担当者は自分が対応できる範囲で業務を把握しておけば良かったのが、ビフォア・デジタルの時代でした。この感覚で各担当者が仕事を最適化しようとすると、間違いなく個別最適に陥ります。

これが「虫の目」(ミクロ)の視点です。もちろん担当領域も狭く、専門的な知識や経験値が蓄積されるため、虫の目が必ずしも悪いわけではありません。しかし、デジタル化が進行し、業務の処理量・スピードが上がっていく中で、担当者は一昔前よりも広範囲を把握することが求められるようになっているのです。

単に新しいシステムを導入するだけではDXが実現されないのが、把握する範囲を広げるというマインドチェンジが行われないからだと私は感じています。

フレデリック・テイラー(1856-1915)が推進した科学的管理法には、業務担当者は虫の目、管理者は鳥の目、という前提が存在しますが、当時は労働者は与えられた仕事をこなすだけでした。デジタルに移行する際にもその前提が維持されると、担当者はいつまでも虫の目のままです。

デジタル化によって業務が効率化され、全体最適が行われるためには、担当者も鳥の目、つまり全体を俯瞰して見ることや、自分が担当している業務の前後の流れを把握することが不可欠です。この観点が欠如しているケースでは、どんなに素晴らしいシステムを導入してもうまくいきません。

なお、全体を俯瞰するだけでなく、鳥の目と虫の目、いわゆる具体と抽象を行き来して考えることが重要です。アナログな環境では絶対に出来なかった切替が瞬時に行えることもデジタル化の強みなのです。

3.業務設計のPDCAサイクル

ここからが本題のPDCAサイクルのお話しです。Plan(計画)・Do(実行)・Check(検証)・Action(改善)のサイクルについては知らない人はほぼいないと思いますが、これをきちんと回せているケースはかなり少ないのではないでしょうか。

(1)PDCAサイクルの必要性

対象としているのは「業務」というソフトであり、最初から最適解を導き出すことはできないという前提で、小さなサイクルをガンガン回して最適解に近づけていくというアプローチが有効ですが、ほとんどは「最初に頑張って設計して、その後見直さない」ため、非効率なまま放置されてしまうのです。

TODOリストやプロジェクト管理ツールは、PとDは行えるのですが、その後のCとAを回すことはほぼ念頭に置かれていません。Excelで作成した管理表においても同じでしょう。Salesforceに代表されるSFAなども、商談管理ができるのは当たり前で、そのデータを蓄積し、分析した上でCheck→Actionに繋げられることで真価が発揮されるのですが、バックオフィスにおいてはやはりアナログな環境のせいもあって「目の前の業務を処理すること」で精一杯だったため、この小さな改善を積み重ねていくという場所まで到達しなかったのでしょう。

バックオフィスの業務設計においてもPDCAサイクルをきちんと回したい、PDCAサイクルを回す前提で設計したい、と思っても適切なツールがありませんでした。私自身も過去に業務設計士®として何社もの業務設計に関わらせていただいたのですが、最初の計画(P)どおりに進むことは皆無であり、実行(D)して、すぐに検証(C)して、改善(A)して、また検証、改善・・・というサイクルをいかに回すが重要であると痛感しています。

(2)マネジメント層の意識改革

この業務設計のPDCAサイクル、という考え方ですが、実施するためにはマネジメント層の意識改革が必要です。1つ目は「業務はずっと改善し続けるのが当たり前」という認識をマネジメント層に持ってもらうことです。

現場の判断で柔軟に運用がいつの間にか改善されているケースは結構多いのですが、それをマネージャーがきちんと把握していることはほとんどありません。現場の判断が前述の鳥の目も踏まえての変更であれば問題ないのですが、大抵の場合は虫の目だけで判断してしまうため、徐々に全体のプロセスが歪んで非効率になってしまう事態を引き起こします。

マネージャーは常に改善が必要であるという前提のもと、定期的に現状把握を行い、個別最適が行き過ぎている場合は、全体最適になるように軌道修正することが必要不可欠です。

2つ目は、業務の定量的な把握です。プロジェクトマネジメントにおけるベロシティのようなものがなければ、きちんとした検証(C)が行えないはずですが、バックオフィスの定型業務において数値的な把握がされていることはほとんどありません。

経営工学のように、科学的な観点から分析し、改善し、評価し、改善し・・・というのが理想ですが、いきなりそこまでのレベルにしなくとも、まずは数値的な把握をきちんとしようとする意識が必要です。

バックオフィスはプレイングマネージャーが多いので、こちらをきちんと把握した上でマネジメントをするというよりも、自分自身もトッププレイヤーとなり周囲を引っ張っていく方が多いのですが、組織が大きくなるにつれてマネジメントが機能しなくなるのは明らかです。

バックオフィスは定型業務が多いので、仕組みをきちんと作れば業務量や配分の可視化はできるはずです。アナログなやり方でもいいので、まずは数値で把握し、マネジメントをするという意識を持つことが重要です。

4.業務設計プラットフォーム・BYARD

現在開発しているBYARDというツールは、業務設計のPDCAサイクルをきちんと回すことを念頭に要件定義を行い、開発を進めています。

やりたいこと、必要な機能がたくさんあるので、現時点ではまだまだな部分も多いですが、「タスクをこなす」「期限を管理する」ことをうまくやるツールの延長線上ではなく、業務プロセスを最適化していくためのプラットフォームにしていきたいと考えています。

業務整理→改善プラン検討→実行→見直し→実行・・・というサイクルを正しく回すこと。また、あらゆる業務をBYARD上に集約することで、これまではほとんど把握することができなかった業務プロセスの可視化や定量的な把握ができるようにしたいとも考えております。

2022年秋頃のローンチに向けて、現在絶賛採用中ですので、ご興味をおもちいただけたようであれば、ぜひご応募ください。

また、BYARDのこと、業務設計のこと、バックオフィスのことなど、お気軽にお話しできるカジュアル面談も実施しております。こちらもお気軽にお申し込みください。

新しいバックオフィスを構築していくためのプラットフォームを作りたいと考えておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。

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