Manageboard:アウトプットから逆算した業務フロー構築
Manageboard主催の経営管理セミナーに登壇してきました。セミナーレポートは別途公開しますので、こちらのnoteではセミナーでは詳しく話さなかった内容を中心に書いていきます。セミナーのスライドはこちらです。
今回のセミナーは2019年9月にMoneyForward社のセミナーでお話しした「バックオフィス業務の効率化には、きちんとしたデータをいかに会計に集約するかがポイントである」という話の後編の位置づけで、その集約された会計データをどのように経営管理に活用するかというお話しです。その際のスライドはこちらです。続けて見ていただくと、フロント→会計→経営管理という部分が一気通貫して理解できると思います。
経営管理の手法や細かい財務分析の話が知りたい方はその手の本を何冊か読んでいただくことをオススメします。このnoteでは、手法や分析の型よりも「なぜそれが大事なのか」という部分について書いていきます。
1.なぜ月次決算はスピードが大事なのか
月次決算に関しては中小企業ではまったくやっていないところもあるかと思います。税理士に丸投げで、年に1回の申告書作成のためだけに経理処理をするパターンですね。期中は社長の頭の中の銭勘定のみ。
それで回るのであればいいのですが、どんぶり勘定経営はコロナショックのような外部環境の変化には非常に弱いです。損益分岐点はどうなっているのか、今の状況で売上が30%減ったらどうなるか、などのシミュレーションを行うために必要なもの、それは「実績」データであり、それを把握するために必要なのが月次決算なのです。
経営とは意思決定です。正しい意思決定をするために必要なのは、正確な情報です。メーターが壊れた車は怖くて運転できないと思いますが、自分の経営している会社に関しては、モニタリングのための月次決算を行わなずに経営する人が多いのが不思議です。会計数値を眺めているだけでは業績はあがりませんが、経営した結果が会計数値には表れるので、客観的な事実としてあの意思決定が正しかったのか間違っていたのかを把握し、軌道修正をする必要があるのかないのか、そういう判断を下すためにも月次決算は必要不可欠です。
日次決算はかなりの仕組化が必要なので現実的ではありません(やっている企業は超大手に限られます)。かといって、年次決算のみだとフィードバックサイクルが長すぎてPDCAが回せません。よって、月次決算がちょうどいい落とし所です。
さて、月次決算をやることが経営管理上は不可欠だという前提を理解していただいた上で、次に問題になるのは月次決算が締まるまでのスピードです。IPO準備企業だと5営業日が1つの基準とされますが、これはかなりハードルが高いです。そういう外部要因がない場合は、なるべく早くとしか言えないのですが、翌月以降に締まるようではダメだということは分かるでしょう。世の中の変化がこれだけ早い時代に、情報が1ヶ月遅れでは話になりません。
だからこそ「早く、(なるべく)正確に」が要件です。細かい部分にこだわりすぎることなく、スピードを優先で月次決算をしめる。大きなミスがあってはいけませんが、意思決定を変えるようなインパクトがない程度(重要性の判断)であれば、スピードの方を優先します。
2.なぜ予実管理は重要なのか
予実管理とは、予算(目標)と実績の差異を把握すること。そんなことは誰でも知っています。問題は、差異を把握した後、改善のアクションを起こしているか否か。そこが業績が上がるかどうかの大きな差になります。
弊社はスタートアップ案件を手掛けることが多いですし、弊社自身も大した規模でもないのですが、ほとんどの中小企業においては予算を立てること、予算を達成することよりも、結果が出た後の改善の方が遙かに重要です。
正直、未来のことなんて分かりません。3年後とかもはや占いレベルで、1年後も確実に予測が立てられるわけがないのです。有識者や有名経営者の年始の「今年度の予測」がいかに当たってないかを見れば一目瞭然です。
かといって、目標や予測を立てずには経営はできません。大事なのは、「予測は絶対に当たらない」という前提にたち、結果をちゃんとモニタリングし続け、そこからきちんと軌道修正をすることができるかどうかなのです。中小企業においては、精緻な予算計画など無駄だと私自身は思っています。
よって、予算を一度立てたら、フィードバックサイクルをきちんと回すことの方が重要で、それが前述の月次決算サイクルをちゃんと回してモニタリングするということです。
3.なぜ着地シミュレーションは重要なのか
今の税理士に不満を持っている理由の上位に「直前になって今期の税金が◯円ですと連絡してきて困る」というのは良く聞きます。まぁ気持ちは分かりますが、納税額のシミュレーションをちゃんとするためには月次決算がきちんと回っている必要があり、そういう文句をいう客に限って、まともに資料も出さないし、こちらからの依頼も無視して・・・なんてこともよくあります。
納税額って、そんなにポンと出せないんですよ。月次決算もまともにやっていないくせに、そういうときだけ文句を言うのはやめていただきたいものです。といいつつも、税理士側も顧問先を抱えすぎてて、放置しているケースも多いので、この問題に関してはどっちにも言い分はありそうですが・・・
さて、月次決算がきちんと行われているという前提にたって、予実管理とは別に「今期の着地シミュレーション」も非常に重要です。前述の通り、「予想は絶対に当たるわけがない」のですから、目標値ではあるものの、それにこだわるほどのものではありません。実績のトレンドを無視して、当たるわけがない予算をベースに着地予測をするのはナンセンスです。実績を見ながら「今期はこの辺で着地するだろう」と考えて管理するのは多くの企業がやっていることかと思います。着地シミュレーションに基づけば、納税額のシミュレーションを出すのもそんなに難しくありません。
問題は毎月更新される最新の実績に基づいて、シミュレーションを補正するのが結構大変ということです。会計ソフトというのは基本的には「実績」を正確に管理するためのものなので、過去の情報を集積するものです。そこに未来の情報を入れ込むのはナンセンスです。時々「予測値」を仕訳で入れてしまっている会社を見ますが、実績とグチャグチャになりますのでオススメしません。
シミュレーションは、常にアップデートしてこそ意味があるのですが、実績に変更があるたびにシミュレーションもアップデートしていくのはかなり骨の折れる作業です。多くの場合はExcelを使っているかと思いますが、実績値を可変でシミュレーションを反映するシートを作るのは難易度が高いですし、複雑になればなるほど、1つのミスで間違った結果をはじき出してしまいます。そして、高度なExcelは属人化のもとです。
Excelは超優秀なソフトだと思いますが、データ加工で使うものであって、シミュレーションをダイナミックに変更して追っていくには全く向いていません。何でもかんでもExcelでやろうとするのは、かなりリソースの無駄遣いです。Excelが得意な人を否定しているわけではないのですが、Excel=万能ではない、ということを知っておいたほうがいいと思います。
4.Manageboardの存在意義
管理会計に関しては、企業の数だけ作法がある、というのが今の状態です。Manageboardを開発しているナレッジラボ社は複数人の公認会計士・税理士が企業再生案件を手掛けてきた会社でした。そのノウハウを集積して、「とにかくこれだけを押さえておけばいい」と自信を持っていいきれるものをシステム化したのがManageboardなのです。
各社の要望を柔軟に対応する、細かい要件を取り込むのではなく、経営管理のベストプラクティスを実現するシステムになっています。この分野のプロの方からすると物足りない部分もまだあるかと思うのですが、中小企業が必要な機能は一通り揃っています。
中でも中小企業自身ですぐにでもフル活用できるのが「業績シミュレーション」機能です。会計ソフトの実績は「過去」のものであるのに対して、この機能はその過去のデータをもとに「未来」の情報をシミュレーションすることに重きをおいています。
実績値を見ながら予測値を1つずつ入れることも出来るのですが、「前年同月と同じ値」「実績最終月と同じ値」など、シミュレーションとしてパッと埋めてくれる機能があります。あくまでも予測値ですので、まずはザッと埋めてみて、現在の状況を踏まえて着地見込を管理していくという使い方がオススメです。
この作業はExcelでやることももちろんできますが、ボタン1つで簡単に、というわけにはいきません。経営管理に特化したツールならではの簡単なシミュレーション機能は魅力の1つです。今期の着地予測は1回やって終わりというわけではなく、毎月の実績を見ながら何度も何度もやり直していくものです。特に中小企業の場合、期末に近づくほどに「利益はどうなるのか」「納税額はどうなるのか」という部分は非常に関心が高いはずです。
実績を会計ソフトから取り込みさえすれば、着地予測はManageboardで簡単に作成することができます。そして、着地予測ができるということはキャッシュフローの予測もできるということです。Manageboardは公認会計士・税理士が作ったソフトらしく、納税額のシミュレーション機能もついていて、それもキャッシュフローの予測に反映することができるのはさすがです。
これらの作業をExcelでやることの問題は、「管理することが大変なのでそこで終わってしまう」ということでした。それが簡単にできるようになることで、実績やシミュレーションを見ながら今後の打ち手を考えるということに使えるのが最大の効果だと思っています。
弊社の得意領域は、「月次決算をきちんとやるために業務フロー全体を再構築する」という部分であり、その中ではManageboardなどの経営管理側のでアウトプットももちろん意識した上で構築していきます。
繰り返しになりますが、予実管理、業績シミュレーションをきちんと行うためには会計ソフト側できちんと月次決算が行われていることが大前提です。月次決算を当たり前に10営業日以内に締められるようになった上で、次のステップとして経営管理側のレベルアップを考えることがオススメです。
弊社サービス「Brownies Works」ではStandardプラン以上では、月次決算処理からManageboardでの管理をする部分まで総合パッケージとしてサービスを提供をしておりますので、このあたりに課題のある場合はお気軽にご相談ください。
経理や経営管理の現場はまだまだExcel作業にあふれていますが、Manageboardのような現場にベストプラクティスを提供するようなツールが増えてくれることで、本来やるべきことに集中できるバックオフィスを作ることが出来るのではないかと考えています。ツールを入れれば即座に解決することなど皆無です。全体の運用フローや業務の目的から見直してこそ、バックオフィスの効率化は実現するはずです。
SaaSと業務双方の深い理解があるからこそできるのが弊社の「業務設計」です。まだまだ規模は小さいですが、この領域では絶対に負けないように精進していきますので、今後とも何卒よろしくお願いいたします。
ノートの内容が気に入った、ためになったと思ったらサポートいただけると大変嬉しいです。サポートいただいた分はインプット(主に書籍代やセミナー代)に使います。