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市場の反応も予想どおり?答え合わせ:11月FOMC展望

昨日の「展望」の予想は正しかったのか。答え合わせです。

声明文の変化、パウエル議長の記者会見での発言、そして市場の反応、すべて予想どおりであった。
dovishと解釈したがる市場の反応もこれまでと同じである。
一方、パウエル議長の記者会見での発言は、「展望」でご紹介したクオールズ副議長の講演と全て整合的だった。
FRBは市場が考えるよりhawkish」という私の見方が正しいかどうか、率直で分かりやすい同副議長の講演テキストをぜひ読んでご判断頂きたい。

以下、具体的な予想の答え合わせです。
「テーパリング開始はこの会合で決定。米国債毎月100億ドル、MBS毎月50億ドルずつ削減で8か月で完了(=今会合で決定し12月開始で来年7月末完了)。インフレや景気動向に応じてペース調整が行われる可能性に言及し、市場が求めるdovishなトーンにも配慮するだろう。」
⇒◯ テーパリングは11月中旬から開始(later this monthに開始とあるが、12月の次の削減はmid-Decemberと説明しているので、おそらく第3週<15日週>開始だろう)、予定通りの削減ペースで進めば、来年7月央<7月FOMC前>に完了。予想どおり、ペース調整の可能性に言及し(it is prepared to adjust the pace of purchases if warranted by changes in the economic outlook)、dovishなトーンを求める市場に配慮した。

「テーパリングは、前回(9月)同様、「ペースこそ落ちるものの、市場に資金供給は続けるので緩和は続いている」と位置付け、hawkishな解釈に偏ることを牽制しようとするだろう。」
⇒◯ 声明文に、The Federal Reserve’s ongoing purchases and holdings of securities will continue to foster smooth market functioning and accommodative financial conditions, thereby supporting the flow of credit to households and businesses.を加え、テーパリングは引締めでないと強調した。

「また、テーパリングと利上げの関係についても、引続き「両者は別物。利上げの条件はテーパリングの条件より厳しく、最大雇用が見通せるまでは利上げしない」とするだろう。」
⇒◯ パウエル議長の冒頭発言で、Our decision today to begin tapering our asset purchases does not imply any direct signal regarding our interest rate policy. We continue to articulate a different and more stringent test for the economic conditions that would need to be met before raising the federal funds rate.と従来(9月FOMC記者会見、10月クオールズ副議長講演)での説明を繰り返した。

「一方で、インフレに対する警戒感を強めるとのメッセージを打ち出すために、「インフレは一時的」という看板が後退することは間違いない。もし完全に取り下げられたらhawkish surprise。ドットチャートを出さない11月会合ではそこまで冒険する必要はないが、「インフレは一時的」としつつも、①人々の期待インフレの上振れ傾向への警戒感、②2%を大きく(moderatelyでない)上回る高インフレが長期間持続する可能性への言及があるとみる。これは政治に対する答えでもある。」
⇒◯ まず「インフレは一時的」という評価は「一時的と見込まれる(Inflation is elevated, largely reflecting factors that are expected to be transitory)」に後退した(会見でもwe took a step back from transitoryと「後退」と説明した)。同時に、記者会見の冒頭発言で、期待インフレの上振れ、高インフレの持続に対する警戒感を明確にした(If we were to see signs that the path of inflation, or longer-term inflation expectations, was moving materially and persistently beyond levels consistent with our goal, we would use our tools to preserve price stability.)。何より、冒頭発言において高インフレで生活苦となる人々への配慮を2回も言及した(①We understand the difficulties that high inflation poses for individuals and families, particularly those with limited means to absorb higher prices for essentials such as food and transportation.、②we understand that our actions affect communities, families, and businesses across the country. )。バージニア州知事選などでRed Wave(共和党旋風)が吹き荒れるバイデン政権への配慮すら感じさせる。

利上げ条件についての声明文の文言の変更は予想通りなかったが、記者会見では「最大雇用」と「インフレ抑制」のトレードオフに関する質問が予想どおり複数出て、クオールズ副議長講演と同様の説明を行っている。

最後に市場の反応
「今回のFOMCを悪材料出尽くしのきっかけと捉え、株価上昇の材料としようとしているようにみえる。」
⇒◯ 少なくとも直後の市場の反応は、声明文や記者会見での議長発言のdovishな部分に反応し、株価は史上最高値を更新した。金利や為替の反応は限定的だった。7月FOMCや8月のジャクソンホール後にみられた反応と同じである(9月FOMCですら発表直後は金利は低下し、イールドカーブの上方シフトが始まったのは、その翌日からである)。
マイナスの実質金利が継続しているので、金融環境が緩和的であることは間違いない。ただ、これまでのようなリスクプレミアムの圧縮が継続する理由はなくなっている。リスクプレミアムが拡大方向に転ずれば、バリュエ―ションの修正(株価でいえば適正なPER水準)の見直しがいずれ起こる可能性には留意すべきであろう。

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