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マイルス・デイヴィス流『両義性』を認識した上での人材育成術

社会生活において「良い」と「悪い」 「好き」と「嫌い」 「古い」と「新しい」 「若者」と「老人」など 様々な事象を2項対立型で分類して整理するとが多いですが『互いに矛盾するが どちらも妥当な二つの命題が存在する』ことが多いのも事実だと思います

「多様性を認めて受け入れる」と口では言うものの 日本型経営企業は『2項対立の綱引き』が大好きなようで『両義性を認める』というところには至っていないような気がします

この『両義性の認識』という観点で考えてみたいと思います

企業・組織における『両義性』とは何か?


『両義性』とは

一つの事柄が相反する二つの意味を持っていること。対立する二つの解釈が、その事柄についてともに成り立つこと。(精選版 日本国語大辞典)


職場において それぞれの「正義」を主張するだけで 自分サイドの偏った「在るべき論」を押し付け合っていては 絶対に解決しません 

そこで リーダーは 何らかの組織としての方向性・方法論を示さなければなりませんが「一つの事象の視点が一つである必要性はない」と考えておかなければならないでしょう


しかし残念なことに 経営陣 中間管理職が イノベーションを望む一方で 【秩序維持】 という呪縛に憑りつかれていて 自らの判断で 変化や差異の発生を受入れることができないようにしている気がします

そこには「失敗すると責任が問われる」「失敗は自分の出世に影響する」と考え方があるのかもしれません 


【秩序維持】という名目の組織の規範やルールこそ「良」「悪」の基準ではなく両義的な解釈が必要

という考え方がリーズナブルな気がします



音楽性の追求のためには人種・年齢は関係ない


相手の音楽を理解するっていうのは、その人間を理解するってことじゃないか。肌の色なんて関係ない。

マイルス・デイヴィスは 多くの白人ミュージシャンを起用してきました

『Kind of Blue』期の ビル・エヴァンス

エレクトリック導入期の ジョー・ザヴィヌル ジョン・マクラフリン チック・コリア キース・ジャレット デイヴ・リーブマン 


23歳~24歳のマイルスは 『Birth of the Cool』(録音:1949/1/21 4/22 1950/3/9)には リー・コニッツ ジェリー・マリガン といった白人ミュージシャンが参加させます

当時のアメリカの人種者別社会を考えると マイルスのファンであるアフリカ系アメリカ人層から 白人を雇ったことに対するバッシングは凄かったと想像できますが マイルスは毅然とした態度で 次のように言い放ちます

リー・コニッツみたいに素晴らしい演奏ができるんなら たとえ緑色の肌で赤い息を吐いてようが オレは使うぜ。オレが買ってるのは肌の色じゃない演奏の腕なんだ


マイルスは アメリカにおける人種差別問題には常に批判的でしたが

「白人文化におもねらない」という点は マイルス・デイヴィスという人間の内面を捉える上でとても重要です


『音楽性の追求のためには人種・年齢は関係ない』

という姿勢を貫くという 両義性 が最も現れている部分です 


✅ 仕事に関しては プロフェッショナル であること


「あんたは白人であること以外に何をしたんだ?オレかい?そうだな、音楽の歴史を5回か6回は変えたかな。」



若いアーティストの積極的採用


すべての芸術的表現における創造性や才能には、年齢なんてないんだ。年季はなんの助けにもならない。


20歳にもなっていなかった トニー・ウィリアムスをドラマーとして採用

『A Tribute to Jack Johnson(1970)』の録音には 当時18歳のベーシスト マイケル・ヘンダーソンが参加しています

1970/04/10の『フィルモア』でのライブは ウェイン・ショーターの後釜として 当時19歳の スティーブ・グロスマン を抜擢します


まずは教えてやることだ。今度は、それが自分に返ってくる。


マイルスは 自分よりも年上のミュージシャンから考え方や技術を教えてもらうのではなく あえて年下のミュージシャンに教えるという形をとりながらも 実は自分自身も 彼らから多くを学んでいたようです



コルトレーンの才能を開花させた『自主性』


マイルスは 『自主性を重んじる』という考え方で ライブやレコーディングでメンバーに細かい指示をすることはありませんでした

第1期マイルス・デイヴィス・クィンテットの正式メンバーにしたジョン・コルトレーンのことを次のように語っています 

短いツアーや何度かリハーサルをしたがうまくいかなかったのは、奴(トレーン)が どういう演奏をしたらいいか、悪いかといちいち聞いてきたからだ。そんなことにかまってられるか? そうだろ。プロなんだから。誰だろうとオレとやる奴は、自分で自分の居場所を音楽の中に見つけなきゃだめなんだ。

マイルスは 『指示待ち族』が大嫌いだったんです


当時のコルトレーンは  

マイルスの反応は、全く予想不可能なんだ。突然、何小節か吹いてみせたかと思うと、"後はお前らで勝手にやれ”と放っておかれる。音楽のことを質問したとしても、それをどうマイルスが受け止めるかも予測がつかないんだ。
だからいつも彼と同じ気分でいられるよう、注意して耳を澄ませていなければならなかった。        
マイルスは変わった男だ。もともと言葉数は少なく、音楽の話をすることなどめったにない。他人が気にすることに一切関心を示さないし、ビクともしない。そうだから、俺は自分が何をすればいいのかわからなかったんだ。
だから最終的に、自分のやりたいようになったんだと思うよ


マイルスは『指示待ち』だったコルトレーンの「強み」も「弱み」も認めた上で 大きな可能性を信じていたんでしょう


✅メンバーは自主性の中で成長しグループの演奏をより一層の高みに運ぶ



『両義的解釈』を併せ持つことの重要性


マイルスは『両義的な解釈』することによって 様々なイノベーションを創造できたんだと思います


両義性を持ち その両義性から深みを醸し出すためには

「視野の広さ」が不可欠 です

リーダーは 絶えず発生している変化に対する気付き その差異を認める開放的な秩序の形成とアップデートに取り組むことができなければならないでしょう


マイルス曰く

音楽における自由というのは、自分の好みや気持ちに合わせて、規則を破れるように規則を知っている能力だ。

規則を知ってることがベースで

規則どおりにやってうまくいかなければ、規則を破ることだって平気でやった。


この「慎重さ」と「大胆さ」の両面を併せ持つ必要があるのでしょう



まとめ


✅ 自分の「好き嫌い」に左右されるのではなく 少数派の意見だったとしても『全体最適』に繋がる考え方であれば採用する

✅ 自主性を重んじながら それぞれのメンバーに考えさせて そのアイデアを積極的に投入させる

✅ 年齢や過去の職歴といった基準をベースにしない

✅ 慣習やルールも状況に応じたフレキシブルな解釈をして活動のスピード感を高める


職場では 上司・部下の間 同僚間における「両義性」を認識した上で それぞれの役割や活動を高いレベルで実行すること


仲良しクラブ的で ウェットな人間関係は 必要ないと考えます



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