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もっと関心を持って考えたいニュース(レアアース・レアメタル問題)

レアアースとレアメタルの市場を巡る世界情勢は、地政学的な要素と経済的な利害関係が複雑に絡み合う形で展開されています。

これらの素材は、現代技術の多くの分野において重要な役割を担っているため、その供給は国際政治や経済に大きな影響を与える可能性があります。

各国は、様々な戦略で重要な資源にアクセスしています。


コンゴ民主共和国(DRC)は、電気自動車、コンピュータ、携帯電話のバッテリーに不可欠な鉱物であるコバルトの世界的な需要の最前線にあります。コバルトの需要は2030年までに4倍に増加すると予想されており、特にヨーロッパの電気自動車ブームが原動力となっています。

DRCは世界のコバルトの70%以上を生産しており、コンゴの鉱山で生産されるコバルトの総量は過去10年間で、2010年の60,000トンから2021年には120,000トンの2倍に増加しました​。

コバルト採掘作業の15〜30%は、小規模採掘(ASM)からのものです。

人力小規模採掘(ASM)は、劣悪な環境・社会活動を特徴としていますが正式な定義はありません。一般的には、労働集約的で、資本、機械化、技術に乏しい採掘活動を指すと理解されています。

このASMは、人権侵害問題そして児童労働問題を含んでいます。

一部の企業は、採掘方法を規制し、労働条件を改善するためのASMの形式化プロジェクトを開始して、鉱山の安全と児童労働に関する共通のASM基準を確立し、ASMコバルトの責任ある調達を保証することを目的としています。


しかし、現在、その実施には統一性がありません。


国際的には、中国がコバルト市場で支配的な立場になっています。


中国のCMOCグループはDRCでのコバルト生産を170%以上増加させ、スイスのGlencoreを上回りました。

生産の増加によりコバルト価格が大幅に下落し、市場の大部分を制御しようとする中国の試みに対する懸念が高まっています。



レアアース(希土類元素)17種類の特殊な元素のグループで、強力な磁力や特殊な化学的性質を持ち、スマートフォン、コンピューター、電気自動車、風力タービンなどに使われます。
レアメタル(希少金属) 地球上で希少なさまざまな金属元素で、これらの金属は携帯電話、コンピューター、航空機の部品、医療機器など、さまざまな先進技術に使われます。コバルトはレアメタルとして分類されます。

レアアースの主要な生産国

中国はレアアースの最大の生産国であり、世界のレアアース生産量の約70%以上(時期によって変動)で、世界の供給の大部分を占めています。
オーストラリアが世界のレアアース生産量の約10%以上です。

レアメタルの主要な生産国

プラチナ:南アフリカは世界のプラチナ生産の約70%以上(2位:ロシア)
リチウム:オーストラリアとチリが供給の大部分(3位:中国)
タンタル:コンゴ民主共和国、オーストラリア
コバルト:コンゴ民主共和国(70%)、ロシア、オーストラリア
ニオブ: ブラジルが世界の供給の大部分(2位:カナダ)
インジウム:中国、カナダ、韓国
ガリウム:中国、ドイツ、カザフスタン
モリブデン:中国、アメリカ、チリ

(注)これらのデータは時代や市場の状況、国際的な政治の動向にも敏感に反応するため、最新の情報を得るためには定期的な市場分析や業界報告の確認が必要です。

2023年にアメリカ合衆国で提出された「クリティカル・ミネラル・インディペンデンス法」は、特に中国やロシアなどの地政学的競争相手からの重要鉱物に対する依存を減らすことを目的としています。

アメリカは、中国からレアアースなどの重要鉱物の大部分を輸入しており、この依存が国家安全保障と経済安定にリスクをもたらすことから、これらの鉱物の加工版に対する外国依存を減らすことを目指しています。

独立した供給チェーンの開発
 中国、ロシア、その他の敵対国からの鉱物に依存しない供給チェーンを構築する戦略を作成するよう国防総省に指示しています。
この戦略は、2035年までに供給チェーンの独立を目指しています。

国内鉱業への投資
国防総省は、カリフォルニア州のMP Materialsに希少金属の処理用に3500万ドルを提供しました。

アフリカ諸国とのパートナーシップ構築
DRCを含むアフリカ諸国が重要な鉱物を供給する重要性を認識しており、タンザニアにおける希少金属処理施設の支援などを発表しました。

多国籍企業のアフリカ進出
アフリカ諸国での製造、チップ設計、品質管理、研究開発に焦点を当てる戦略を推進しています。

さらに、法案には、2024年までの年間1億ドルを重要鉱物の開発、加工、リサイクルのための助成金として割り当てており、特にリサイクルプロジェクトに重点を置いています。

アフリカの希少金属に関する潜在能力は莫大ですが、まだ十分に活用されていません。
この地域への投資と探査が進んでおり、すでにいくつかの豊富な鉱床が特定されています。

アフリカの一部の国々は、リチウムなどの未加工の重要な鉱物に対する輸出制限を課しています。
この動きは、地元での加工能力を開発し、大陸内でより多くの価値を保持することを目的としています。

アフリカ大陸自由貿易協定(AfCFTA)は、供給チェーンの強化や地元製造能力の向上を目指しています。



上記の世界情勢を踏まえて、日本の動きを見てみましょう。

特に注目すべきは、チュニジアで開催された第8回東京国際アフリカ開発会議(TICAD)で、日本が300億ドルの資金誓約を行い、アフリカとのグリーン成長イニシアチブ(GGA)の下で40億ドルの専用基金を設立したことです。

残念ながら、2010年代初頭からアフリカとの貿易関係は停滞しており、市場シェアは大幅に低下しているのが現実です。

中国やインドが経済大国として台頭したことが一因と考えられます。

2020年の日本のサハラ以南アフリカへの公的開発援助(ODA)は、日本のODA全体のわずか7.8%を占めており、過去20年間で減少傾向にあります。

西村康稔元経済産業大臣が、2023年8月6日から13日にかけてナミビア、アンゴラ、コンゴ、ザンビア、マダガスカルを訪問して、資源の取得と投資促進に関して、各国の指導者や大臣と二国間会談を行いました。



アフリカの経済開発は、ヨーロッパやアジアの後発工業化国の経験とは異なっていて、デジタル技術(eコマース、eヘイリング、モバイルマネーなど)によって、アフリカ大陸全体に新しいビジネスモデルの台頭を促しており、開発途上地域でもこれらの普及が進んでいます​。


日本と日本企業がアフリカでの資源開発プロジェクトの開始や資源取得・投資の促進で外国のライバルに遅れをとった要因は様々ありますが

日本経済におけるデジタル化への対応の難しさ

既得権益者(決定権限者)の理解不足とスピード感の無さ


この言葉が全てを表している気がします。


アフリカでの資源開発と投資における日本の遅れた関与は「経済的機会の逃失」「戦略的な不利」「持続可能性・外交・技術革新の課題」につながる可能性しか想像できないのは、私だけでしょうか、、、



しかし、アフリカを深く知ることによって、何らかのヒントが必ず見つかるはずです。



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