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妄想旅行記〜五島列島編〜(その6)

改めて書いておくとこれはフィクションだ。最近、記憶を頼りに書いているのか、脳内で勝手に行程をつくっているのか、自分でもわからなくなる時があるので、きちんとこれはフィクションだと文字にしておこう。
早く、この行程を実際に辿る、答え合わせの旅に行きたい。どんな気持ちで旅をすることになるのだろうか。初めての経験なので楽しみだ。

高浜海水浴場

途中休憩も挟みながら、小一時間ヴィッツを走らせると、ようやく高浜海水浴場が見えてきた。ここで一つ問題がある。まず高台から全景を見るか、近づいて砂浜から見るか。

これは結論から言うと、遠くから見るのをおすすめしたい。完全に性格が出ただけだが、まず全体像を掴んで、これから行く場所はどこだろう、どうやって行くのだろう、その場所からはどう見えるだろう、と想像すると、期待感が最高に高まって良い。

最初に近くで見てから、引きの風景を見て「ああ、あそこはああだったなあ」と思い出にふけるのも悪くないが(それはそれで風景が一層はっきり見える気がする)、この旅行記を読んでいただいて分かる通り、私は完全に期待感で生きている人間なので、まず遠くから見て、それから感動の対面を果たすことにした。

というわけで、魚藍観音展望所に向かう。その展望所は、南から向かうと海水浴場を少し行き過ぎた場所にある。なので、途中車の中から左手に海水浴場が見えるはずだ。見たいような見たくないような、会いたいような会っちゃったら勿体ないような、好きって言っちゃいたいようなこのむずがゆい状態をもっと続けていたいような、そんな恋をしているような気持ちになったけれども、現実の私は全く辛抱のきかない人間なので、実際に海水浴場の横を通った時にはなんの葛藤もなく普通に見た。

いや晴れていて良かった。写真で見るより綺麗だ。この写真から小汚いおじさんを消したくらい綺麗な風景だった。(ちなみにこれはキリバスの写真。人生で一番いい笑顔に近い)

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これだけ着く前からテンションが上がってしまえば、もう実際に行かなくても十分満足じゃない?とも思ったが、とはいえ全景は見たい。はやる気持ちを抑え、制限速度を守りながら展望所に向かった。海水浴場側だけでなく海が一面に広がっている反対側の景色も負けず劣らず美しかった。

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それから、海水浴場まで降りて、近くでも見てみた。まだ泳ぐには寒いのが残念だ。夏にもぜひ来たい。そうか、近づくとすぐ泳ぎたくなっちゃうから先に遠くで落ち着いて見た方がいいのだな、なんて思ったりしながら、しばらくその辺に腰掛けてぼーっと海を見ていた。

そこでこの旅のきっかけとなった先輩のことを少し考えたりした。

先輩の少年時代についての想像

ここで先輩はどのような少年時代を過ごしたのだろうか。いまでこそアラフォーで小太りのおじさんだが、そんな先輩でも少年だった時代があったに違いない。頭の中で時計の針を巻き戻し、先輩を若返らせていく。

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梅雨明けの季節。雨上がりの海水浴場に白いランニングシャツに紺の半ズボン(海パンだろうか)、元は白かったはずの汚い運動靴を履いて、少年の先輩が小走りで現れる。泳げる季節が待ちきれなかったようで、様子を見に来たのだ。その後ろには薄いピンク色のワンピースの幼なじみが息を切らせて追いかけてくる。先輩にも出会いに困らない時代が30年以上前にはあったのだ。

しかし少年の先輩はそんなことは全く気にせず海を見ている。雲はどんどん遠ざかり、湾は日の光で照らされていく。

少年の先輩は笑顔を我慢することができない。そして思わずこう言った「梅雨明けたんですか?」「やったー!!」
しかしそこに突然の豪雨。先輩は泣き叫ぶ「梅雨明けてないじゃないですか!」「やだー!!」

不毛なのでこれ以上は考えるのをやめた。

晩飯

そんな不毛な時間を過ごしつつも、トータルの行程としては、むちゃくちゃ満足して宿に向かった。密度の濃い1日であった。しかしまだまだ濃い1日は終わらない。晩ご飯と言う重大イベントが待っているのだ。この晴天の中一日中動き周り、幸い腹はペコペコ、喉も乾き切っている。自分のコンディション調整能力が完璧すぎて恐ろしい。

今日の晩ご飯は、ひとりで居酒屋に行ってみることにした。こういうときには宿の人におすすめを聞くのが一番だ。そうしたら宿から港まで行く途中にある居酒屋を教えてくれた。地元の魚が食べられ、牛も食べられてかつ手頃、そしてカウンターもあり一人でも入りやすいというめんどくさい条件を言っても優しく教えてくれて宿の人には感謝しかない。

昼間はできなかった、ビールと海鮮という組み合わせを楽しんだ。やはり食事は酒と一緒になって初めて完成するなあ。刺身も揚げも、焼きもうまかった。魚がうまいから島は好きだ。勢いがついて、結局〆にうどんまで食べてしまった。牛は我慢して明日以降にとっておいた。

明日の行程

食事から戻ってきて、ほろ酔い気分で明日の行き先を考える。行程は直前に考えればいい。この自由さが一人旅の良さである。

明日はさらに離島に行く。候補は3つ。久賀島嵯峨ノ島黄島・赤島か。

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それぞれの特徴は調べてみると以下の通りだった。

久賀島・・・五島列島の中で3番目に大きい島で面積は37.5km2。八丈島が約70km2くらいなので、ひょうたん型の八丈島のどっちか半分くらいと思えばわかりやすい。だが人口は約400人で利島や式根島とほぼ同程度である。「久賀島の集落」が世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産となっているなど、隠れキリシタン関連の見どころが多い。

黄島・赤島・・・ちいさい。二つ合わせて2km2、人口70人くらい。一番離島感を楽しむならここだろう。

嵯峨ノ島・・・面積3.16km2、人口約160名。青ヶ島くらいだ。教会もあるがこの島の推しは地層である。ウィキペディアの嵯峨ノ島の項目によると、

(前略)特に東シナ海に面する西岸は男岳・女岳の頂上付近まで山体をほぼ両断したように削られており、「火山海食崖」をなす。ここは火山の内部構造が露出し、噴出状況が顕著に示されていることから学術的にも著名で(後略)

であるとか、

男岳・女岳の中間(集落の西側)には凝灰岩が浸食された断崖「千畳敷」があり、火山噴出物が幾重にも積み重なった層理を観察できる

などとむちゃくちゃテンションが上がることが書いてある。そして椎名誠らが選定した、「日本の秘境100選」に選ばれている。

というわけで

文章の熱量でわかったと思うが、明日は嵯峨ノ島に行くことにきめた。地形好き・椎名誠好きとしてはぶっちゃけ選択の余地がなかった。船は今日行った高浜海水浴場の近くの貝津港から9時10分に出る。7時過ぎに宿を出発することまで決めて、2日目は終了した。おやすみなさい。

(つづく。明日は離島の離島へ)

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