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東京裁判判決の日に、通訳の仕事について想いを馳せる

山崎豊子著の「二つの祖国」を読んで、そのモデルとなった #デイヴィッド・アキラ・イタミ の経歴と東京裁判での通訳業務に興味をもちました。そこで、読んだのが「 #東京裁判における通訳 」(武田珂代子著/みすず書房)。

そこには、通訳者・モニター・言語裁定官という、通訳手続きにおける三層構造が解説されています。これは、翻訳の国際規格であるISO 17100:2015の「翻訳→ #バイリンガルチェック →最終検品」をどこか思い出させる体制です。著者によると、(ニュルンベルク裁判とは異なり)東京裁判におけるこのような体制は裁く側と裁かれる側の力関係を反映したものだといいます。雇い手が通訳者をどれだけ掌握できるかという視点で、同書では「他律的」または「自律的」通訳者という特殊な用語が使われていますが、なかなか含蓄の深い言葉です。

時折、翻訳会社からクレーム対応の相談をもちかけられることがあります。ソースクライアントからのクレームに対して、「独立した(中立的)」翻訳者として鑑定意見を書いて欲しいというものです。往々にして、翻訳会社からは「自律的」翻訳者(=自分たちの息がかかった翻訳者)としてのコメントを期待されるので、心理的な負担の大きい仕事です。ソースクライアントと翻訳会社の利害のせめぎ合いのなかで、言葉の専門家としての自己の判断を弁護しなければならない羽目になることも。

東京裁判に臨んだ二世モニターたちの苦悩とは比べものにならないレベルの話ですが、「 #中立性 」は #通訳者#翻訳者 )にとって永遠のテーマです。

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