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【第94回アカデミー賞】作品賞にノミネートされた10本をランク付けしてみた。【総評】

みなさん、こんにちは。
映画大好き19歳、トマトくんです。

つい先程、ようやく『リコリス・ピザ』を観てきましたので、今回は第94回アカデミー賞で作品賞にノミネートされた10本を「個人的なランキング」として発表していきたいと思います。

ノミネートされた作品は以下の10本です。
(順不同)

  • コーダ あいのうた

  • ベルファスト

  • ドント・ルック・アップ

  • ドライブ・マイ・カー

  • DUNE/デューン 砂の惑星

  • ドリームプラン

  • リコリス・ピザ

  • ナイトメア・アリー

  • パワー・オブ・ザ・ドッグ

  • ウエスト・サイド・ストーリー

この中からランク付けしていきます。あと注意事項ですが、悪気はなくても下位の作品の感想は、どうしてもキツめの文章になっていたりします…。ご了承ください。

それでも頑張って感想を書いたので、
最後までよろしくお願いします。


第10位『DUNE/デューン 砂の惑星』

受賞:作曲賞・録音賞・編集賞・撮影賞・美術賞・視覚効果賞/ ノミネート:作品賞・脚色賞・衣装デザイン賞・メイクアップ&スタイリング賞

本年度アカデミー賞で、最多6部門の受賞となった『DUNE/デューン 砂の惑星』。公開されるずっと前からかなり期待していたのですが、個人的には全くと言っていいほど刺さらなかった…。

1度目の鑑賞では序盤も序盤で爆睡してしまい、後日再び映画館に足を運ぶも結局こちらも途中で爆睡。やっとNetflixで配信が始まってしっかり再鑑賞しましたが、やっぱりダメでした。単純に好みじゃありません。

本作は、『スター・ウォーズ』がオープニングでパッパっと説明するあのプロローグ部分を、2時間半かけてただただ見せただけ。肝心なストーリーは全くと言っていいほど進展せず、退屈で地味な砂漠の映像がひたすら映し出される。とにかく絵面も物語もつまらない。

唯一魅力的なのは、ティモシー・シャラメやゼンデイヤといった役者陣の美貌くらいで、それなら写真集の方が価値があるなぁ…とか思ってしまうほど。まあ美術や衣装など技術面での評価は確かに納得ではあるけど、あとは良くも悪くも原作の人気が本作の背中を押しすぎている気がしました。

ちなみに、これまで作品賞を逃した作品で「最多6部門」を受賞した映画は、最近だと『ラ・ラ・ランド』や『マッドマックス 怒りのデス・ロード』など。僕はどちらも大好きですが、その中にデューンが並ぶとは…。一周まわって衝撃。


第9位『ナイトメア・アリー』

ノミネート:作品賞・撮影賞・衣装デザイン賞・美術賞

ギレルモ・デル・トロによる1947年の映画『悪魔の住む町』のリメイク作品。僕がノワール作品との相性が悪すぎるというのも相まって、あまりにも淡々と進んでいく物語に、こちらも気づいたら映画館で爆睡をかましてしまいました(あんまり爆睡したとか言うもんじゃない)。

サーカスが舞台の作品なので当たり前のことだけど、美術や衣装などの視覚的な面白さでなんとか最後まで映画としての魅力を保っていたように思えた。それは流石ギレルモ・デル・トロといったところ。

しかし、映像に対してストーリーがあまりにも安直すぎると言うか、展開に目新しさがなく古臭く感じてしまった。まあ40年代の映画のリメイクなのでそこは仕方ないかもしれないけど、始まりから終わりまで全ての展開が読める読める…。

今どきこんなにオチや伏線が分かりやすい映画って珍しいと思いましたね。しかも、それが2時間半も続くんだから、流石に予定調和すぎて途中で限界が来てしまった。もう少し突拍子もない出来事があれば楽しめたはずですけど、どうしても「リメイク」ということが足枷になっていたな…と感じました。


第8位『ベルファスト』

受賞:脚本賞 /ノミネート:作品賞・監督賞・助演男優賞・助演女優賞・歌曲賞・音響賞

この映画に関しては、単純に僕がハマらなかっただけで悪い映画とは全く思っていません。完全に個人的な問題で、欠点が少ない、オーソドックスな映画、王道な作品が苦手というのがあります。

もっと言い方を変えれば「安牌」な作品。あまりにも凡庸的と言うか、無味無臭。ケネス・ブラナーがオスカーを取るために置きにきた感があって、正直冷めてしまいました。

また、映画を観ている最中に『ROMA/ローマ』や『ジョジョラビット』『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』『リトル・ミス・サンシャイン』『シンドラーのリスト』など、数々の名作が何度も頭の中をよぎってしまう。どのシーンも、どのエピソードも既視感があり、この映画特有の唯一無二な魅力を見つけることができませんでした。

よく出来た自伝映画だとは思いますが、僕の中では佳作の域を抜け出せてはいなかったですね。


第7位『ドント・ルック・アップ』

ノミネート:作品賞・脚本賞・作曲賞・編集賞

レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、メリル・ストリープ、アリアナ・グランデ、ティモシー・シャラメ…。豪華キャストで、かなり期待値の高い状態での鑑賞となり、あまりにもその期待値が高すぎるせいで乗り切れなかった…という自滅パターンの映画でした。

完全にコメディ映画として観てしまったので、全然面白くないし、全然笑えないという状況。パニック映画/SF映画として観ていたら結構好きな作品になってた可能性もありますが、そこに気付くのが遅かった…。

ただやはりハマらなかったとはいえ、ブラック・コメディとして、社会風刺として、そして群像劇としての完成度はめちゃくちゃ高く、宇宙規模の話を上手くまとめあげた脚本と編集は素晴らしいと思いました。

そのためハマらなかったとはいえ、ひとつも受賞できなかったのは結構悔しいなぁ〜なんて思ったり思わなかったり。デューンという強敵がいなければ、もっと高い評価を得ていたかもですね。


第6位『リコリス・ピザ』

ノミネート:作品賞・監督賞・脚本賞

ノミネートが発表された時はなんとも思ってなかったけど、まさに今、この感想を書いている瞬間に「あれ?この映画って3部門しかノミネートされてなかったんだ」と気付いた。

主演男優賞も、主演女優賞も、助演男優賞も、撮影賞も、作曲賞もノミネートされていない。これはどういうことなのかと言うと、意外と作品評価はそこまで高くないということ。

そうなってくると、なぜ逆に主要部門の3つにはノミネートできたのか?と疑問が湧きます。それは、この作品を手がけたのがポール・トーマス・アンダーソンだから…です。

それは「PTAにオスカー像を与えたい!」という会員たちの計らいもあると思いますが、そもそもこの作品の面白さがPTAだからというのもあります。

正直、この作品は「PTAの映画」として観るから補正がかかって面白く感じるだけで、結構退屈な内容です。要所要所にバッチリと決めてくるシーンはあるものの、基本ずっとダレている。音楽の魔法で誤魔化してはいるけど、あまりにも無駄が多く感じました。

「ポール・トーマス・アンダーソンが描く、15歳と25歳の年の差の恋愛」という視点で観なければ面白くならない特殊な作品。

PTAという男のブランド力に圧倒されるので、そういう意味では素晴らしい映画でしたが、好きかと言えばそうでもなかったですね。でも嫌いでもなかったです。なので、ど真ん中の6位にしました。


第5位『ドリームプラン』

受賞:主演男優賞 /ノミネート:作品賞・助演女優賞・脚本賞・歌曲賞・編集賞

例のクリス・ロックへのビンタ騒動で、良くも悪くも注目の的となったウィル・スミスが、念願の主演男優賞を受賞した作品。

結構ゴリゴリのスポ根映画でありながら、ブラック・ムービーでもあり、家族ドラマでもある。様々なジャンルが融合してるのに、とっ散らかることなく、最後まで一貫したテーマで進んでいくのが地味に凄くて、よく出来ているなと思いました。

ただこの物語の主役は、アスリートの娘たちではなく、あくまで指導者の父親。なのでスポーツによるカタルシスはあまり得られず、サクセス・ストーリーとしての魅力もそこまで感じられませんでした。それが個人的に唯一残念だった点。ずっとおやじの自慢話を聞かせれているような気分でしたよ、とほほ…。

それとウィル・スミスの演技は素晴らしかったとはいえど、主演男優賞は流石に過大評価な気がしてなりません…。どう考えても『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のベネディクト・カンバーバッチの方が良かったです。ウィル・スミスの演技なら、過去にノミネートされた『アリ』や『幸せのちから』の方が好きでした。


第4位『ドライブ・マイ・カー』

受賞:国際長編映画賞/ノミネート:作品賞・監督賞・脚色賞

我らが日本映画が、史上初めて作品賞にノミネートされたことで話題となった作品!しかも外国語映画賞の受賞は『おくりびと』以来じつに12年振り。濱口監督、本当におめでとうございます!

いや、これ本当とんでもない映画でしたよ…。村上春樹と濱口竜介の才能が全速力で衝突して、余計な干渉はし合わずに、お互いの魅力を最大まで引き出すという…まさに奇跡のような映画。

この衝撃はもはや暴力と言っても過言ではない。それくらい強烈なパンチを食らった気分だった。

とにかく登場人物の心理描写が繊細。ゆえに人種や言語の壁をも越えて心の奥にずしんと響く。どんな人生を歩んだらこんな脚本が書けるんだ…って思ってしまうほど一切無駄がない。圧巻すぎる。

本来なら1位にしても良かったんですけど、あまりにも長すぎてお尻が激痛。そのせいでイボ痔が悪化してしまったので4位にしました()


第3位『ウエスト・サイド・ストーリー』

受賞:助演女優賞/ノミネート:作品賞・監督賞・音響賞・美術賞・撮影賞・衣装デザイン賞

流石、巨匠 スティーブン・スピルバーグ。あの傑作ミュージカル『ウエスト・サイド物語』をこれまでにないほど完璧なクオリティでリメイクしてしまう…。恐ろしいまでの天才っぷり。

世界観や価値観を見事に現代風にアップデートし、美術や衣装の華やかさに加え、撮影や照明による視覚的な面白さまであるという。過去最高のミュージカル映画のひとつだと思いました。

随所にオリジナルへのリスペクトもあり、ほとんど非の打ち所なし。原作『ウエスト・サイド物語』への思い出補正も相まって、感極まりそうになるシーンもあったりなかったり…。文字通り「心躍る」ような瞬間が多く、まさに究極の映画体験だったと思います。

ただ、やはりオリジナル版を知らないとしんどい部分があったり、アンセル・エルゴートの例の件が頭の中にチラついてしまったのが悔しい…。特に後者さえなければもう少し映画の世界に入り込めていたかもしれません。


第2位『コーダ あいのうた』

受賞:作品賞・脚色賞・助演男優賞

はい!言わずもがな今年の作品賞です!しかも、フランス映画のリメイクでありながら、初のストリーミング配信映画の受賞という快挙!

おめでとうございます!👏👏👏

これも『ベルファスト』と同様に、かなりオーソドックスで無難な映画。リメイクということを考慮してもめちゃくちゃ置きにきた感があり、特筆するほどの個性は持ち合わせていない。

しかし、それが良いんです!!!!!

この映画の強みは親しみやすさであり、普遍性であると僕は思います。聾唖をテーマにした映画でありながらも、本質的なテーマは「家族愛」にあります。そんな庶民的な内容によって、エミリア・ジョーンズの透き通るような歌声と、家族のリアルなCODAの様子がより一層輝くという構造。

終始グッと胸を撃たれ、まんまと惹き付けられてしまう。後半はむしろやり過ぎなんじゃないかと思えるほど感動演出の連発で、映画の魔法から冷めそうになる瞬間もたびたびありましたけど、そこにたどり着くまでの下地をしっかり描いていたおかげで飲み込みやすかったのも良かったです。特に助演男優賞を受賞したトロイ・コッツァー(主人公のお父さん)の存在にまんまと泣かされましたね。

この年最も優れた映画か…と言われれば、正直それは微妙なところですけど、コロナ禍やウクライナ侵攻によって揺らぐ世の中に、がっちりと人々の心を掴んで離さなかったのは間違いなく『コーダ』だったと思うので、割と納得の作品賞ですね。


第1位『パワー・オブ・ザ・ドッグ』

受賞:監督賞 /ノミネート:作品賞・脚色賞・主演男優賞・助演男優賞×2  助演女優賞・撮影賞・編集賞・作曲賞・美術賞・音響賞

本年度最多11部門12ノミネートながら、結果は監督賞のみの受賞となった本作。マジで納得いかない。

始まりから終わりまで、とめどなく流れる不穏な空気。そしてヒシヒシと伝わる緊張感。乾いた牧場の風景と、息を飲むような大自然…。丁寧すぎる人物描写によって、善にも悪にもなりうるキャラクターたちの構成があまりにも素晴らしい。

現代のアメリカに蔓延るマッチョイズムを、男社会の「西部劇」によって崩壊させるという衝撃ったらもう凄い。しかもフェミニズムや、ジェンダーレスを逆手にとったストーリーで、これまで積み上げてきた全てを覆すかのようなラストシーンには声が出るほど痺れてしまった。たまらないですね。

もはやジェーン・カンピオンの長編デビュー作にして最高傑作である『ピアノ・レッスン』に勝るとも劣らないクオリティ。圧巻の一言です。

個人的にこの映画の魅力を構成する大きな要素は3つあって、まずは演技部門に4人もノミネートされたことから分かるように、役者たちのハイレベルな「演技合戦」にあります。

言わずもがな主演のベネディクト・カンバーバッチと、助演のコディ・スミット=マクフィーは他を寄せつけない圧倒的な演技力と不気味さで、物語に緊張感を持たせ、最後まで強烈な存在感を放ちます。

そして僕が最も注目したのは、この物語の全ての引き金となった「真の主人公」とも呼べるキルスティン・ダンストの存在。ベネディクト・カンバーバッチ演じるフィルに怯えながらも、息子や夫を愛し、お酒に逃げながらも戦う…。彼女こそ助演女優賞の受賞に値すると思ったし、それほど最高の演技を魅せてくれました。

にも関わらず全員総スカン…。ありえない。

そして2つ目の要素は「撮影」。序盤にも言った通り、牧場の殺伐とした、広く乾いた景色が、この映画の面白さをより一層増幅させています。ただそこにベネディクト・カンバーバッチが立っているだけで怖いと思えるほど、恐ろしく美しい。

さらに物語の途中では、何の変哲もない山の風景が、ベネディクト・カンバーバッチとコディ・スミット・マクフィーの2人の関係性に大きな変化をもたらすキーとなる。やはり撮影賞こそ、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が最も獲るべき部門であったと思ってしまう。(なんで砂漠の映像ばかり映して、CGを多用したようなデューンが撮影賞を撮れんねん!おかしいやろ!!!)

そして最後に「音楽」。ジェーン・カンピオンはデビュー作の『ピアノ・レッスン』以来、「音の持つ力」を理解し、信じ、貫いているように感じます。今回の映画で特にそれが顕著したのは、キルスティン・ダンストのピアノ演奏に、ベネディクト・カンバーバッチがバンジョーの音色を被せてくるシーン。

それはセッションでもなければ、バトルでもない(一応煽ってはいるけれど)。キルスティン・ダンストはピアノを弾き、ベネディクト・カンバーバッチはバンジョーを弾いているだけ。それ以外のことは起こらない。しかし、キルスティン・ダンストはそんな彼を恐れているため、その音色からははっきりと恐怖が伝わってくる。そしてその音によって観客の緊張感はより増大する…。

とにかくジェーン・カンピオンは、音楽に感情を乗せる演出が驚くほどに上手い。これは普段から人間をよく観察している証拠だと思います。凄い。また同様にジョニー・グリーンウッドの奏でる不安な音楽が、作中の緊張感とバチッとハマる。こんなに感情を掻き乱される作曲を生み出せるのが素晴らしすぎる。

と、ここまでダラダラと語ってしまいましたが、つまり何を言いたかったかと言うと、少なくとも僕の中では『パワー・オブ・ザ・ドッグ』はもっと評価されても良いということ。完全にアカデミー会員の「アンチNetflix精神」によって『コーダ あいのうた』に票が流れたように見える。

もうね、監督賞だけの受賞が本当に受け入れられない…。少なくとも作品賞・監督賞・主演男優賞・助演男優賞・助演女優賞・撮影賞・作曲賞の全てを受賞するポテンシャルは十分にあったはず…。ほんと信じられない…。きつい…。


ということで、総評は以上となります。

察しの良い方ならもしかしたら気付いているかもしれませんが、結局は『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が作品賞を受賞できなかったことに文句を言いたかっただけです。そのための総評…。

パラサイト、ノマドランド、と2年連続で個人的に納得の作品賞が続いたので、余計に僕の中で反動がきてしまった感がある。

ああ、ジェーン・カンピオンがクリティックス・チョイス・アワードでヴィーナス&セリーナ・ウィリアムズに対する失言さえしなければ、もっと評価されたろうに…。結果的にコーダはノミネート数が10本に増えたことの恩恵をでかでかと受ける形となった。

また時間があれば色んな年のノミネート作の感想を書いてみたいなあ。最後までご愛読ありがとうございました!

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