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#29 〝Daturyoku-No-Susume〟

 手が小さい私は、ピアノのオクターブを掴むのに苦労する。特に、毎日練習に励んだ中高生の頃は、親指の付け根あたりに痛みを感じることが度々あった。
 最近はピアノをほとんど弾くことが無くなってしまったが、職場のパソコン入力や電卓使用で、1日中よく使う指の関節に痛みを感じている。
 ある日、自宅でPCを使って『りんりん』の楽譜作成をしていた時、娘に指摘された。
 『そんなに強くキーボードを叩かなくて良いのでは?』
どうやら私は、キーボードや電卓を叩く指に無駄な力が入り過ぎているらしい。

 PCのキーボードを打つ力が強くなるのには、心当たりがある。昔、まだワープロが主流になる前に、短大の履修科目で散々『英文タイプ』を打つ練習をしていた。その名残が出ているに違いない。あの重いタイプライターのハンマーを深く下ろす指の力、スピード、勢い!? そのままでキーボードを叩いていることに気付く。歳を重ねた私の手指には、少々負担がかかっているのだろう。
 娘はアンダーソンの曲でしか『英文タイプライター』を知らない。YouTubeでタイプを使用する人の動画を見せてみたら、驚愕していた。(笑)

 初めて英文タイプライターに触れたのは、高校1年の春だった。吹奏楽は中学で終わりにし、新しいことをやってみたかった。当時はタイプライターの公式試合もあり、母校はけっこう強かったようで、すぐに興味が湧いた。

 ピアノをやっていたことは功を奏した。体験入部初日から、私は顧問のハートを鷲掴みににしてしまったのだ。あの重いハンマーを振り下ろすのに、10本の指が単独でしかも均等な強さで素早く動く様を見て、『ぜひ入部を‼️』と。数々の褒め言葉に調子付いた私は即入部を決め、顧問の視線を釘付けにしていたのだが・・・。
 
『タイプ部やめれば?吹奏楽部に入って。』
中学で吹奏楽をやっていたことを知る上級生が、1年の教室まで熱心に勧誘に来てくれる。吹奏楽部も新入部員獲得に必死なのだ。毎日のように教室に足を運んでくれたその熱意にとうとう押し切られ、私は入部からたった1週間で退部届を出すこととに・・・💦
 思い返すと、タイプ部をやめて高校生活を吹奏楽に捧げてたきたことは、私にとっては正解だったと思う。英文タイプは今やすっかり廃れてしまったが、吹奏楽は今でもずっと楽しめているし、『りんりん』の活動にも役に立っているのだ。

 『脱力。』
 娘のアドバイスを受けて、指に負担のかからないように気をつけながらPC作業をしよう。腱鞘炎になっては、ベルを振ることも出来なくなってしまうのだから。
 
 ちなみに、『タイプ部をやめろ⚠️』と私に言い続けた吹奏楽部の先輩は、今や
『りんりんの総監督』となっている。(笑)


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