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#5 【ちょっと寄り道】適応障害→退職→無職になった人の雑感:「知る」ことで別の道が開ける


現在、働けなくなったとき/無職になるとき/無職になったときの手続や制度に関する記事を、マガジンにまとめています。

何本か記事を書きながらこれまでのことを振り返っていたら、いろいろと気づいたことや言葉にしてみたいと思うことが出てきました。
なので今回は少し脇道に逸れて、それらについて書いてみようと思います。

いまさら感もありますが、記事を書いている人の簡単な背景紹介も兼ね、お付き合いいただけたら嬉しいです!

「知ること」で選択肢が増える、心持も変わる(かも)という話

その日は突然やってくる

まず、筆者が適応障害と診断されるまでとそれ以降について少しお話させてください。

筆者は、適応障害の診断を受ける半年くらい前から、心因性の体調不良を自覚していました。
その時点で、職場の水が自分には合っていないということも感じていました。ただ、業務内容自体は楽しくて、しかも自分に向いていると思っていました。そんなこともあって、仕事はほぼ通常通り続けていました。

体は、変な表現ですが休むまでもないような中途半端な不調が続き、体重はじわじわ減少。メンタルは起伏が激しい。でも頭は一応今まで通り働くし、仕事をしたい気持ちはある。
なんだか、自分のパーツが全部噛みあってないような状態でした。
それでもしばらくは心療内科で処方された薬を飲みながら、だましだまし勤務を続けていました。

そんなある日、突然ぷつりと糸が切れたように、仕事ができない状態に陥りました。すぐに心療内科に行き「適応障害」の診断を受け、結果的に3ヶ月休みを取ることになりました。

その時点では有給休暇がほとんど残っておらず、休み中はほぼ無給状態でした。
当初、私はそんな状況を悲観していました。どんな支援が受けられるかなど知識も全くありませんでした。
早々に良くなって仕事に復帰しなければ、という焦りがあったように思います。

焦らずに、できるだけ感情の渦から一歩引いて現状を見てみる

でも、傷病手当金(前回記事参照)について知り、「どうやら入ってくるお金がゼロという状況にはならなそうだ」と考えると、ほんの少し気が楽になりました。
そして徐々に、この先どうするかという方向に思考を切り替えられるようになりました。

療養期間の初期を振り返って思うのは、焦っているうちは視野が狭くなり、限られた選択肢しか無いと思い込んでしまって、結果症状が悪化してしまう悪循環になりかねないということです。

知識を得たうえで、「こんな制度があるのなら、もしかしたらどうにかなるかも?」というふうに、ぐちゃぐちゃになった感情から一歩引いた視点で考えられれば、実はいろんな選択肢があることが見えてくると思うのです。
(とはいえ不安の渦中にあると、「一歩引いて見る」こと自体がなかなか難しいですよね……)

早期に回復して仕事に復帰できれば、それに越したことはないかもしれません。
ただ、その会社で仕事を続けたいと思うのであれば、むしろ思い切って休職し(※1)じっくり腰を据えて療養するほうが、再発を抑えるという観点からはよいかもしれません。

(※1)休職制度は法律上必須ではなく、制度自体設けていない会社もあります。自社の制度がどうなっているかは、会社の「就業規則」に書いてあるはず。一度目を通してみると何かと参考になると思います

他方で、もし今の勤務先に違和感や不満があるならば、もちろん転職は一つの選択肢です。その他にも、退職して雇用保険(いわゆる失業手当)に頼ることも考えられます。

私自身は、在職中に受け取っていた傷病手当金を、引き続き受け取る選択肢を取りました。
※傷病手当金について、詳しくはこちらでいろいろ書いてます:

単純に、体調的に外で働く準備が整っていないためです。
(メンタルの浮き沈み、人が多い閉鎖空間にいられない、他人の気配を感じていると飲食できない、たまに唾液も上手く飲み込めなくなりパニック寸前になるときがある、etc…)

さしあたっては、療養を継続しつつ、フルリモートでできそうな仕事を今のうちに調べてみたり、今までやらなきゃと思いつつ全然進んでいなかった勉強に手を付けています。


……と自分語りも交えて色々書きましたが、まずは何はともあれ、自分の現状とそれをフォローしてくれそうな制度について知っておくことは重要かと思います。

実際にどうするかは元気になってきてから考えればよくて、その近い将来のための土台を、簡単でもいいから作っておくようなイメージです。

何も知らず先が見えない状態が続くのと、なんか取りうる道はいろいろあるらしいとぼんやりとでも知っておくのとでは、心の持ちようが変わってきます(少なくとも私の場合は)。

なので、「知ること」が、不調からの回復への一歩に繋がりうるのでは? ということを自分の経験上感じています。


知識を得て、権利があるなら行使しよう

もし私と似た状況にある方がこの記事を読んでくださっていたら、以下のふたつをお伝えしたいです。

(1) 少しずつ元気になって本を読めるくらいまでになってきたら、いろんな社会保障制度について、簡単にでもよいので調べてみるのおすすめです

(2) そのうえで活用できそうなものがあれば、「使えるものは使い倒していくぜ!!」くらいの気持ちでいて大丈夫ですよ!

例えば、傷病手当金などは、毎月のお給料から差っ引かれていた社会保険料が回りまわって今の自分を助けてくれるものです。要件さえ満たせば、申請する権利があります。
ただしこれは裏返せば、その権利を行使しない限りは、自分がどんなに困った状況にあっても支給されることはないということでもあります。

基本的に社会保障関係は、助けが必要になったら自動的に支援が提供されるという素敵なしくみにはなっておらず、ある程度自分から行動することが求められるのが現状のようです。

手続面は面倒なところもありますが、主治医や会社と連携しながら進めていければ一番安心かと考えます。

また、あってほしくないことですが、万が一会社側があまり信用できなさそうな場合は、直接しかるべきところに相談することも視野に入れておくと良いと思います。
(例:傷病手当金関係で会社の対応が遅いなら健康保険組合、離職票がいつまでたっても送られてこないならハローワーク、等)


遠慮は無用、いろんな人に頼ってみよう

これは自戒のために書きますが、「助けが必要な状態であること」は、自分から声をあげないとなかなか周りに気づいてもらえません。
まだ自分は大丈夫、薬を増やしてもらったからまだまだ仕事できるよ、と自分をごまかし続けたあげく、突然折れてしまってからでは遅いのです。

もうだめかもと感じたら、遠慮やプライドにはいったん蓋をして、自分が「頼れそう」と思える人や機関に思いきり頼ってみましょう。わからないことが出てきたらガンガン聞いてしまいましょう。

私は当初、会社の人事部門に質問するのさえためらっていました(ひどく忙しく大変な状況にあることを知っていたので)。
でも会社を辞めると決めてからは、自分の人生に関わることなんだしと開き直って細かいことも質問しまくっていました笑


おまけ:筆者が参考にしていた本

ちなみに私は、以下の本を図書館から借りてきてめくってみたり、都度健康保険組合や自治体のサイト等を検索したりして情報収集をしていました。

【1. 病気やケガで働けなくなったときに知っておきたい「制度」と「お金」】2018年1月、ビジネス教育出版社

タイトル通り、働けなくなったときの最大の懸念事項であるお金の話と、退職した場合の手続についても取り扱っています。
わかりやすいし、これ1冊で大枠はだいぶ掴めるし、かなり使い勝手のよい本です。
ただし注意しなければならないのは、これが2018年刊行という点です。直近の法改正は当然反映されていません。
なのでこの本だけに頼るのではなく、最新情報については、次に挙げる本のように最新の書籍やネットで調べて補完する必要があります。

新版出てるかな?と思って探したのですが、ありませんでした。残念……

【2. 図解 わかる 会社をやめるときの手続きのすべて】2022年6月、新星出版社

これもタイトルがすべてを物語っていますね。
具体的に、退職時にどんな手続きが必要なの?という点が丁寧に説明されています。
また、例えば健康保険はどうする、年金はどうする、といった同時並行になりがちな手続きを、わかりやすいフローで整理した図もあります。

とはいえ、いきなりこれに手を付けると余計にわからなくなりそうだな…と私は思ったので、1.の本である程度大枠を掴んでから、その補完として必要なページを読むという使い方をしていました。

【3. はじめての社会保障:福祉を学ぶ人へ(第19版)】2022年3月、有斐閣

社会保障制度そのものの全体像を知っておきたいな~と思って借りてきました。
大学の教科書として使うことを想定されているようですが、砕けた表現も交えながらわかりやすく説明がなされています。あと、執筆者の先生の例えが上手い。


とりとめもなくなってしまいましたが、願わくは、この記事や他の記事が、苦しんでいる方にとって何かしらの役に立ったらいいなあ…などと思っております。

ここまで読んでくださりありがとうございました!