モノ作りの例 #6(エア抜き)
こんなに苦労したエア抜きはありませんでした
頼まれて数年前にレストアした古いオートバイ。もちろんフロントはディスクブレーキです。国内で最初にディスクブレーキを装備したのはCB750K0。各社続々とディスクブレーキを出しました。
それから結構経っているのに、出始めと同じマスターシリンダーだったようです。それを知らなかったのが苦難の始まりでした。
マスターシリンダーをオーバーホールするのは簡単です。それをハンドルに取り付けて、ブレーキオイルを入れてエア抜き工程に入ります。
最初は大粒のエアーが出てきて、細かい泡、中ぐらいの大きさ、そして細かくなってエアーが抜けるのですが…。
最初は2~3時間やって少し泡が小さくなってきて、また大きくなる。数日間やりました。「そんな、ブリーダータンクにワンウェイバルブを付ければ簡単に出来るでしょう?」と思うでしょう。もちろん、それはやっています。ところが、細かくなったと思ったらまた大きいのが出る。
キャリパーやマスターシリンダーの角度を変えながらもやっています。
レバーを握ったり放したりをやり過ぎて腱鞘炎が再発。
それで一日1時間までにしました。そのうちそれも無理なので、一日30分まで。それで2か月が過ぎました、毎日ですよ。
「そんな、やり方が間違っているからですよ!」と言われそうですが、それ以外のレストア作業をしつつ、エア抜きも毎日続けます。
私のオートバイに付いているのは、3時間程でエア抜きは終了。これが普通です。
素人じゃあるまいし、やり方は間違っていません。でも、余りにエアーが抜けないので、レストアを生業としている友人に相談しました。
すると、「あぁ、あのマスターシリンダーね。全然抜けないでしょう?」。「そうなんですよ、どうやってエア抜きしているんですか?」。「あれは、ある程度抜いて、それで納車している」との事。走りながら少しずつ抜けていくしかないのだそうです。
つまり、何台もレストアしていても、完全にエアーを抜く事は諦めているのです!
製造ラインではどうやって抜いていたのだろうと考えました。製造メーカーがエアーを噛んだまま完検を通す訳がありません。組み上がったフロント回りを持って来て付けるのでしょうが、その前段階だとしてもそんなに時間を取れるはずがない。
想像ですが、マスターシリンダー内を真空引きすれば、気泡は気圧が低い方に集まるので、そうして抜いていたのではないか、と考えました。実は、それを作ろうかとも考えました。
または、社外製のエア抜きしやすい「まともな」マスターシリンダーに交換するか。他の組み上げにはまだ数か月かかるので、1日30分で終わらないようなら、その選択もありました。
毎日続けてやっと気泡が細かくなって来ました。「ようし、さすがにもう抜け切るだろう」と…。するとまた大きな気泡が出てきて…の繰り返し。「ブレーキレバーを小刻みに動かして…」とも言われましたが、それはすでにやっています。
それで、また思いつきました!「そういえば、要らないモーターとプーリーがあった。それで振動させよう」。プーリーにウェイトを付ければ、振動する筈。それで、プーリーに穴を開け小ネジを付けました。重量が偏り振動する訳です。
即席だからスイッチも必要ない。電池もテープ止め、配線もテープ止めです。どうせ一度しか使わないのですから。
これで試してみたら、細かい振動でも大きな気泡が壊れて小さくなり、エアーが出やすくなりました。何しろ手が楽です。それで、この方法で毎日続けました。まだ隠れていたエアーがたくさん出て来ました。
友人には「エアーが9割抜けていたと思っていたけれど、6割位の感じで出て来る」と伝えました。その位の微気泡がずっ~と出るのです。結局、完全にエアーが抜けるのに4カ月以上(手動含め)かかりましたが、その方法を友人に伝えたら、「それはいいアイデアだね!」と、お褒めの言葉を頂きました。
おそらく、彼もこの方法を使うはずです。いくらディスクブレーキの出始めだからと言って、ここまでエア抜きがやりにくいのは設計が悪かったのは間違いありません。ちなみにこのブレーキシステムは油圧システムメーカーの製造で、オートバイメーカー製ではありません。
今どきのオートバイではこんな事はありませんので、ご安心を。もう一度繰り返しますが、私のやり方が間違っていたのではありませんよ。
近年、スマホで何でも簡単に調べられるようになり、自分の頭で考える事が少なくなったと感じています。簡単に画像が見られるから自分でも出来ると考えるようで、当ブログを盗用して市販の部品を「除電して~」と売っている輩がいます。例え効果が無くても特許権の侵害で犯罪です。
除電するには理論が一番重要ですが、それは特許文献には書いていませんし、書く必要もありません。
特許について無知な人は、特許を真似すれば同じになると思っていますが、特許を出願する人はそんなおバカさんではありません。
「特許を盗用されるであろう」事を織り込み済みで最低限の内容で出願しているのです。これは少し特許の知識があれば、誰でも知っている事です。
当ブログでは除電チューニングという新しい技術を知ってもらう為に書いていますが、肝の部分は書く筈がありません。
体操の平均台に例えれば、除電の理論から材質の元素、形状から製造方法、製造コストまでを平均台の幅に載せないといけないのです。一つでも外したらアウトで落下してしまう。
いくら除電性能が高くてもマジ軽ナットが1個3万円ではレースでしか使われませんから。そのような除電する要素をバランスを考えながら、小さな事を積み上げていく。
もう一つ例えればこの方式の除電は、テーブルに1円玉を立てて、その上に更に2枚とか3枚の1円玉を立てるようなもの。微妙なバランスを保つ事が必須なのです。
それが自己流の除電を試されていた方から頂戴したインプレッション「本物との違いを実感しました」となるのです。
当ブログを読んで下さってご購入頂いたもうお一人方は、(当ブログに)「紹介されている通りの効果があり」、「タイヤを除電する事で多くの良い結果が得られるとは正に目から鱗でした」と連絡を頂き、次なる除電箇所へと進まれています。
タイヤはあくまで除電チューニングの入り口です。路面を駆動するのはタイヤしかありませんから、除電の一丁目一番地はタイヤなのです。
1リッター(換算)で何km走る事が出来るかという、省燃費を競うレースがあります。
本田宗一郎杯 Hondaマイレッジチャレンジはホンダが厳格な管理・運営する由緒正しいレース。現在マジ軽ナットの除電技術を採用しているのは3校。どのチームも「もっと燃費を良くしたい」と参戦しているはずですが、まだまだ知名度が足りないのか、除電を知らないのかは分かりません。
このレースはスーパーカブのエンジンを使う事がレギュレーション。
同じエンジンで競う訳ですから、出力はそれ程変わりません。と、いう事は無駄な物を極力減らして効率良く走るのが、好成績の条件となります。
今までの無駄減らしのメインは、軽量化と空力の改善です。数年前からそこに「静電気の除電」という、新たな無駄減らしが加わり、素晴らしい結果も残しています。転がり抵抗は燃費に直結します。
実際にレースするドライバーもサーキットの特殊舗装では、振動や走行安定性にも神経を使いながらのドライビングですから、消耗も激しくなります。
マジ軽ナットを取り付ければ、振動が軽減して走行安定性も高まる。
そうすればドライビングに集中出来ますから、安定して良いライン取りにより意識を向けられます。
今年のHondaマイレッジチャレンジはモビリティーリゾートもてぎで10月13日に開催されます。
除電の技術協力をしている、神奈川県立平塚工科高等学校 社会部(〇で囲んだのが看板)の隣 #703 N-CYCLEのピットで展示中。
いい感じの「のれん」が目印です。参戦している社会部の顧問の先生、または、隣で展示しているN-CYCLEで除電の効果を聞いてみて下さい。とても詳しいです。
学校関係者の方は、どのように除電チューニングを授業に取り入れているか聞いてみるのもいいと思います。学ぼうとする興味が上がるのだそうです。
パンフレットやショップカードも配布して頂けるそうですので、ご興味のある方は手に取って頂けましたら幸いです。
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