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自動車開発の思い出 その18(鈴鹿)

鈴鹿サーキットでの研修は その2

サーキット走行で乗るのはFF車。当時はFF車に乗り慣れておらず、FF車特有のクセのタックインがまだ掴み切れていませんでした。タックインとは、コーナーでアクセルを戻すとハンドルを切った側に切れ込む、FF車の宿命です。
車両は鈴鹿サーキットだからシビックでした。

鈴鹿サーキットはホンダの系列会社なので、車両はFFのシビックでした

その癖を熟知すれば、ハンドルを切った以上にタイヤが切れ込むのも利用して、早く走れるようになります。少しずつ癖を確認しながら使っていきます。

サーキットで走行研修で一番難しかったのはブレーキング。18歳で自動車免許を取得してから学生時代の4年間、車は余り乗っていない空白期間がありました。
そこから、一般の運転技術よりレベルの高いサーキット研修ですから。
走行会とは違って、研修に合格しないといけないのです。
ブレーキングは一定速度で走って来て、通常よりかなり短い距離で止まらなければなりません。それがとても難しい。もちろんタイヤをロックさせたら不合格です。
ロック寸前のギリギリでコントロールして止める。人間ABSをやる訳です。とても難しい技術ですが、ABSを効かせて止まるより、制動距離は短くなります。
自動車保険の会社に、嫌味で「自分の車にはABSは付いていないけれど、技術でもっと短く止まれるのだから割引して欲しい」と言った事がありました。技術は機械を上回る事もあるのです。
その試験で一度は不合格になったものの、もう一度で無事合格となりました。ある程度腕に自信がある人でさえ難しいのが、ブレーキングです。
その1で書いた通り、開発やその他の部署の様々な人も研修を受けるので、「あなたたちは運転が上手いと評判だよ」と言われたのを思い出しました。
それは走る専門職ですから、確認走行をするだけの人と同じレベルでは立つ瀬がありませんので。
そのほか、教習所で受けるような8の字とか、クランクもやったと思います。楽しくなかったから覚えていません。
隣りのセクションコースで2輪のサーキット研修のうちのトライアルの講習をやっているのを見て、「本当はあっちが良かったなぁ~」と羨ましかった。

休憩時に教官と話していると、その当時でさえ懐かしい話。「俺がホンダに入社した時はS600しかなくて、それに乗っていたんだ」そうで、何とドライブシャフトではなく、チェーン駆動だったそう。さすがにオートバイメーカーですね、オートバイの方程式で車を作っていたのです。
今であれば「教官、チェーン駆動ではグリスに帯電して粘度が高くなってエネルギーをロスしています。除電すればロスが減って少ない力で効率良く走れます」と、こちらがご教授してあげられたのですが。

研修は6月末、ちょうど鈴鹿8耐の練習走行シーズンで、ド派手な蛍光ピンクのKISSレーシングチームの革ツナギが印象に残っています。どこかの国が好きな色のような…。
昼休みになると、食事もそこそこにピットを見に走ります。研修中はもちろん見に行けば怒られますが、休憩時間は問題なし。各チームが練習走行をしているのを観られるのです。
一番印象に残っているのは、MORIWAKI ZEROに乗る八代氏。ピット上から「八代が走るぞ!」と観ていました。そのうち、大きな排気音と共に、ピットレーンの終わり位までの大ウィリーをして走って行きました。
「おお、さすが八代だ!」と、みんな大興奮、拍手喝采です。8耐で組んだのは確か宮城光氏。現在、モビリティーリゾートもてぎのコレクションホールの動態保存の仕事もされています。
ヨシムラのシュワンツ・辻本組も走りますが、時間が合わなかったので観る事は出来ませんでした。後に鈴鹿8耐を観に行くことになるのですが、この年は従妹がRG500Γ(2ストローク)で参戦したKENZのキャンギャルをやっていました。

研修には会議というか、一つのテーマを与えられて、7人位のグループで話をまとめてみんなの前で発表し合う、というのがありました。
当然、グループの皆さんは年上です。ふた回り位年上とお見受けする人もいました。
最初は出しゃばらないように控えめに発言していましたが、時間制限があるのに誰もが発言を中々せず、話が進まないのです。
仕方なく最年少の私が仕切らざるを得ない形となりました。発言しない人には「どう思われますか?」と失礼にならないように意見を求め、話を進めて内容をまとめ、発表して一件落着。
そのグループで最年長とおぼしき方は、自動車メーカー勤務なのに「免許を取った事がない」と言っていました。「自動車メーカーなのに、何で?」と思いました。走行訓練は一体どうしたんだろう?サーキットはクローズドだから法律上は問題ありませんけれどね。
そんなこんなで、鈴鹿サーキットの研修は終了。修了証を頂きました。
そして、無事テストコースでの走行を続けられます。
タイヤに帯電している静電気を除電する「マジ軽ナット」の効果はユーザーさんから広まって来ています。当然、様々なレースにも使われ始めていて、例えば、Hondaエコマイレッジチャレンジという省燃費レース。1リッター換算で何キロ走れるのかを競います。おととしから参戦している工業高校に去年から除電の技術協力をしていますが、今年はさらに踏み込んだ除電チューニングで挑むそうです。既に追加分の納品も済んでいます。

今年の納品分のマジ軽ナットシリーズ

現在、エコランカーのカウルは新造中で、出来上がったら貼って下さるそうなので、少し大きめのステッカーを作り、顧問のS先生にお渡しました。
この除電技術は、自動車科のある工業高校の研究発表全国大会で発表済みですが、まだまだ普及したとは言えません。

マジ軽ナットのステッカー(中)

更にありがたいのは、モビリティーリゾートもてぎのレースで、マジ軽ナットシリーズの展示をして下さるようです。ありがたいではありませんか。
そこでは、マジ軽ナットシリーズのサンプルの他、パンフレット等も置いて頂ける。これから日本の産業を支える生徒や企業の方の目に触れるいい機会です。
マジ軽ナットは何もレース専用ではありません。一般公道でもその効果は分かります。
転がり抵抗が減って出足が良くなる。それだけではなく振動が減って静かに走る、おまけにタイヤも長持ちします。つまり、少しお金を出すだけで、走りが楽しく・良くなりお金も節約出来る小額投資だと思って下さい。
つい最近も、ネットショップに製品のレビューを書いて下さったユーザーさんがいらっしゃいます。

こちらは、マジ軽ナットヘビーユーザーのトモさんのホームページ。
トモさんはスーパーカブ界の有名人。カブをちっさくした「プコちゃん」のオーナー。エンスージアストだから、自分の頭で考えて比較走行をして記事を書いてくれていました。
一円の特にもならないのに「もし気に食わなかったら、俺が買い取るから」とまで言って知人友人に広めてくれています。
転がり抵抗が減るだけではなく、タイヤがしなやかになり、変速ショックもより吸収してくれるようになるから、自動遠心クラッチのDaxやモンキーにもお勧めです。

最後の一言がまた的確で、転がり抵抗が減った原因を「グリスが温まって緩んだのか?」と書いています。温まった訳ではありませんが、除電で粘度が低くなった事も転がり抵抗が減った要因です。さすがです。
タイヤで除電の効果を確認してから、次の除電箇所に進む方が増えています。タイヤだけではもったいない。
取り付けに関しては懇切丁寧にアドバイスをしておりますので、ご安心下さい。


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