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夜の廊下、昼の廊下

このnoteは雨宮真由、斎藤見咲子、坂中真魚による公開書簡シリーズの10通目です。今回は「眠り」をテーマにしたリレーの最終回、坂中真魚から斎藤・雨宮への手紙です。

夜の廊下

就職おめでとう!そして、お気に入りのアプリを教えてくれてありがとう。みさこちゃんがセイに出会えて本当に良かった。みさこちゃんがセイを感受できるくらい世界に対してひらいてくれて良かったと思います。

私は風呂嫌いを克服したくて「ふろ恋」というイケメン入浴コンシェルジュアプリを使ったことがあるのですが、長続きしませんでした…。

寝息が安眠に良いというのは、体感としてわかります。子供のときから夜型で、ベッドに追いやられても全く眠れなかったので、よく起き出して廊下に寝転がり、向かいの部屋から聞こえてくる父の寝息(いま思えばいびきに近い)に呼吸を合わせていました。特に夏の廊下はフローリングがひんやりして気持ちよかった。

昼の廊下

みさこちゃんは眠れない人なんですね。私は、眠れないときもあるのですが、それ以上に眠りすぎることを恐れています。
昔からストレスがかかると突然眠り込んでしまう体質(?)で、緊張する場面が苦手です。受験・就活・資格試験・クライアント主催のセミナー…失敗してはいけない場面で、なぜか眠ってしまう。重要度や興味関心には関係なく、眠気を感じる隙もなく、気づいたら寝ているんです。睡眠不足でもないのに、会社の廊下で急に眠って倒れていたことも。教習所にも通ったけれど、運転していると眠ってしまうので免許は取れなくて…お金がもったいなかったです。
怖くなって睡眠外来に行ったら「ウチは眠れない人には対処できるけど、眠りすぎる人にはカフェインを飲んでくださいというしかない」と言われてしまいました。最近はマシになったので本当に良かったです。

人生や時間を自分でコントロールできているという実感が高いほど、幸福度は高まるという統計を読んだことがあります。だからかな、お金よりも時間の自由が大切だと思う人も多いですよね。眠れないことも、眠りすぎることも、自分の時間なのに自分の意志に沿わせることができないという意味で、幸福から遠いと感じます。

それとも雨宮さんが言うように「眠っている間に一度死んで」いるのだとしたら、わたしは思い通りにならない人生を強制リセットしたくて、無意識に人より多い回数を眠る必要があったのか。それが減ったということは、自分の生き方を受け入れられるようになった証なのかもしれません。

雨宮さんが「眠ったまま目覚めたくない」という考えに共感できるようになったり、みさこちゃんが自分のことを大切にしはじめたり、人間が眠りながら少しずつ変わっていけること・目覚めたら新しくなっていることを、苦しくも美しいもののように思いました。


夢の連作 坂中真魚
コーヒーをこぼした本を寝る前にひらいて夢のお守りにする
眠れない夜にはねむる人の部屋へ 夢の気配をふかく吸いこむ
秒針のこまかな震え 眠れない夜をどこまでも止揚していく
眠りながら自分と別れる夜の淵 夢のみぎわに言葉は漂う

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