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ゾワッと言うより、アレ?な本

「それ、誰が得すんねん?」

わからん。でも私はもう6年欠かさずやっている。
そして今年もやってきました。
この準備の為に1年かけて本屋に行く度に、欠かさずチェックし、気になるものは中身を少しだけ拝読。テレビでそれっぽい特集を見れば検索し、何冊か候補が絞られれば、どれにするか悩みつつ、のんべんだらりとその時を待つ。1年でたった一夜の私の地味な楽しみ。

わたくし恒例『お盆の1人肝試し大会2023』in家

これは、1年かけて「これは?!」と言う怖い話の本を1冊選び抜き、お盆の夜に一晩かけて読み切る。
ただそれだけの個人企画である。
私は至って普通に、怖い話が怖い人だ。だが、興味はそそられる。でも、好奇心に負けて無闇矢鱈に怖い話の摂取はしたくない。
怖いからだ。
真っ暗にして静かな場所で1人じゃないと眠れないのに、怖いから真っ暗にした静かな場所で1人で眠れなくなるのだ。それ即ち、ただの眠れない人になるのだ。
なので、年に一回だけ思う存分怖い物を摂取する時を決めている。それがお盆の夜なのだ。
電気も消して懐中電灯で読んだりとかしていたが、最近は老眼が気になるので、今年からは明るくして読もうと思う。
ちなみに当たり前だが、トイレ行くのがめっちゃ怖い。でも一番怖いのは就寝する時。朝まで読んでいればいいけど、私は読書スピードが早い。分厚いものは2夜に分ける。12時には寝たい欲求に勝てた試しがない程に寝汚いのだ。
まぁ、そんな話を親友に話した時に言われたのが冒頭の一言である。

さすが私の親友。ぐうの音も出ないツッコミである。

そこまで苦労して何を得るのか。悟りの境地のような鋭い問いに、私はしどろもどろ答える。
「ま、あれやな。仕事に追われて出来ない夏っぽい事を毎年確実にやる思い出作り的な」
「普通にやれるやろ、スイカ食うとか、海水浴とか、無理でもプールとか」
「スイカはアレルギーで食えんし、海水浴も日光アレルギーあるし、プールは塩素にかぶれるんよね」
「もはや夏アレルギーやん。そんで、ボッチで肝試しなん?でも怖いんやろ?無理にせんでも。聞いてる限りではなんの得もないし」
「だが達成感はある」
「だが愛はある、風に言われても」

私が「1人肝試し大会」を始めるきっかけになったのが「事故物件住みます芸人・松原タニシ」さんの「怖い間取り」を本屋で立ち読みした事だ。
お笑い芸人さんって、多種多様な仕事をされてるけど、ついに事故物件に住みだしたのか。個人的に、事故物件は偶然住むことはあっても、わざわざ住みにいくものではないと思う。
ホラーや怪談を読んでいると「調べてみると事故物件だった」と言うことはあるが、住みに行くとは

なんで?

平積みのそれを手に取り、ページを繰る。
ほう。元々は番組の企画なのね?YouTubeで生配信もしてて?霊感とかはない人が事故物件に住み続けるとどうなるのか?
気がつけば10分立ち読みしていた。その日はそのまま買わずに帰宅したが、続きがどうにも気になる。
ただ、家に持ち帰って読むには気味が悪い。真昼間のショッピングモールの、広く人通りのある店内であっても、何度か背後が気になるくらいにビビりながら読んだものを、まさか金を払ってまでして持ち帰るなど。
例えば「この日本人形、髪の毛が伸びて夜中徘徊します、100円でいいんで買いませんか?」と言われて買うだろうか。
私は買わない。
1週間は悩んだ。そして、そこまで悩むなら買うべきだろうと判断した瞬間に、新しい気持ちに火がつく。
どうせなら、めっちゃ恐いシチュエーションで読もう。
そして「1人肝試し大会」が始まったのである。

キウィブラザーズってなんでこんなかっこいいんやろ。

この「恐い間取り」の特出すべきところは『目線』である。
本書が初めての執筆であろう、タニシさんの少し辿々しくも素直に綴られる文章は、彼の五感の全てを通り、文字に起こされている。これが小説家や、文に慣れた人ならもっと臨場感のある芳醇な肉付いた文章だっただろうと思う。
タニシさんの文章はシンプルだ。一切の無駄が無く、研ぎ澄まされた五感で感じたままに書かれている。
だからこそ恐いと言うものもある。
見た、聞いた、嗅いだ、感じた、空気に触れた、それを具に書いている。脚色のない恐さは、崖っぷちに似ている。足を滑らせるかもしれない。背後から押されるかもしれない。強風に煽られるかもしれない。
その頭に浮かぶ恐怖を回避するためにUターンした瞬間にふらつき「あ」
そんな文章なのだ。

この本は、現在進行形のタニシさんの事故物件での現状と一緒に「誰かの事故物件」「土地の事故物件」など、タニシさんに集まってきた事故物件にまつわる話も多数収録されている。
個人的に怖かったのは、生きてる人間だって恐い?「事故物件二件目」
同居している三人の芸人が1人ずつ“失踪“していく「Yマンション」
タニシさんのお兄さんが経験した、精神力で霊に打ち勝った?「サービスエリアの老婆」
の3本です。

今年の1冊はもう決まっているので、近々Amazonで購入予定ですが、この記事を書く為に本棚をあさっていて気がついた。タニシさんの著書は新刊の「怖い食べ物」まで読んでいるのだが

「恐い間取り2」だけが何故か見つからない。


#夏のオススメ

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