寝る時のクセが強い。
横向きで眠りたい。
掛け布団を巻き込んで足の間に挟み込み、右を向いて寝てしまう癖がある。
そのせいで何もかぶらずに朝を迎えて風邪をひく、やんちゃな寝相の持ち主でもある。
昔は巻き込み癖はなかったのだが、去年あたりから急に発症した。
夏はまだよかった、でもこのまま冬を迎えて同じ寝方をすると確実に風邪をひくし、冷えで夜中に何度もトイレに起きてしまう。
分かっているなら未然に防ぐのが大人の余裕ってやつだ。
そんな訳でこの冬から抱き枕を導入した。
こいつを代わりに抱いていれば、布団を巻き込みはみ出る事なく平和な朝を迎えられるはずだ。
Yogibo大好きな私は同ブランドから出ている抱き枕をはじめ選んだが、中のビーズが流れる「シャラシャラ音」が少し気になった。
調べてみたら一口に抱き枕と言えど、色んな形があるらしい。
ただ抱くだけより、頭を置く部分もあって長さもある、ゲゲゲの鬼太郎でも大人気の妖怪「一反もめん」みたいな形のものが私には良さそうな気がした。
善は急げと、大手寝具メーカーの店頭で何体かの一反もめんを抱かせてもらい、購入を決めた。
色は寝具と揃えて紺色にしよう。
一反もめんのイメージが強すぎて何故か白めのグレーを選んでいた。
と、妖怪のせいにする。
まぁ、寝る時は目を閉じるから色なんか問題ない。
カバーの素材もしっとりと肌に吸い付くようで、マシュマロと言うよりギモーブを抱いているようで心地良い。
きみに決めて良かった。
今日から私達は運命共同体、毎晩抱かれて眠るのだ。
ところがどっこいである。
一反もめんを隣に置いてから私は、突然布団を巻き込まない人間に進化した。
どうしちまったんだよ、なみさん!!
毎晩、あんなに巻き込んで抱いて寝てたのに、一体全体なんなんだよ?!
最速の倦怠期かよ!
据え膳の抱き枕を抱かずに朝を迎えるなんて、女が廃る!
私は抱いた、必死に抱いた。
電気を消すと、静かに布団をまくり隣に体を滑り込ませる。そのしっとりとした肌(布)に頬を擦り寄せ、力強く抱き寄せ目を閉じた。
だが、朝目覚めると私は背中を向けて寝ていた。
右向きで寝る癖があるからと右側に置いた一反もめんは、私の背中に寂しく寄り添っている。
あろうことか私は、自分のポリシーである右向き寝を曲げてまで、一反もめんを拒んでいたのだ。
なぜだ?どうしてだ?
毎晩私は抱き寄せる、なのに目覚めると冷め切った関係の私達がベットの上に静かに転がっている。
確かに私たちの関係はまだ浅い。シングルベットで夢とお前抱いてた頃、くだらない事だって2人で笑えた夜もない。
そんな2人だけど、付き合いはじめの一番楽しい時期ではないのか?背を向けるには早すぎるだろう?
意識しすぎているのだろうか?
私は人と寝るのが苦手だ。
もしかしたら、無意識に一反もめんを「1人」として認識してしまって拒否しているのかもしれない。
だとしたら、とんだバカやろうだ。
一反もめんいくらしたと思ってるんだ?1万円だぞ?一度財布に殴られろ私!これは枕だ!
その夜から私は一反もめんが“ただの枕“であることを意識付け、ベットに入るときは「好きとかじゃないから」と言ってから抱くようにした。
結果、新しい寝方が爆誕する。
目覚めると、一反もめんの形に沿って体をフィットさせて朝を迎えてる。
布団の間に全く隙間も出来ないし案外気に入っているが、完全に添い寝枕になっている。
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