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楽天パンダから学ぶキャラクターマーケティング

Amazonと並んで、国内最大級のECモールとなっている楽天。


その楽天には2013年5月から登場し、今では楽天を利用するユーザー以外にも高い知名度を誇る「お買いものパンダ」というキャラクターが居ます。
お買いものパンダは、登場当初からLINEスタンプとして無料配信を行っており、2018年4月時点ではスタンプ累計利用者数は約4,300万人とLINEスタンプの中でも上位に入ってくるほどキャラクター単体としても愛されています。

なんと、宣伝キャラクターながらぬいぐるみなどのグッズ化もされていたり、「お買い物パンダカフェ」というコラボカフェも開催されたこともあります。
私自身もLINEでスタンプを使っていますが周りも楽天ユーザーであるかに関わらず使用しており、1日に1回は目を通す存在になっていると言えるでしょう。

さて、楽天は、「お買いものパンダ」というキャラクターをどういう目的・戦略で生み出し、何を得ることが出来たのでしょうか。

1.独自キャラクターのメリットとデメリット

キャラクターを用いる場合、大きく分けて二通り方法があると思います。
「世間の既存のキャラクター(人物含む)を使う方法」と、「新しくキャラクターを作り上げて運用していく方法」です。
お買いものパンダは後者に当たりますが、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。下記にまとめてみました。

■メリット
・初期コストが不要または少ない
・継続コストも単発で起用することに比べれば安価
・多様化する媒体にも柔軟に対応できる
・基本的に不祥事が起きない
・加齢による劣化がない(トレンドの流行り廃りはある)
・CM全てにブランドの統一感を出せる

■デメリット
・初期知名度0なので中長期的に”育てる”ということをしなければならない
・”育てる”ことが成功するとは限らない

なお、メリットとデメリットは反転されて、前者の「世間の既存のキャラクターを使う」も当てはまってきます。
その場合の長所は「初期コストはかかるが集客に速効性がある」と世間一般に言われているCMの効果そのままになります。はっきり言って新規にキャラクターを使う方がメリットは断然多いのですが、速効性の優位性は絶大で「今これを宣伝したい!」という場合には否応なく前者の方法になってしまいます。

2.楽天はどういう意図で新規にキャラクターを生み出したか

ここからは仮説も入ってきますが、1で挙げたメリットの内、「多様化する媒体にも柔軟に対応できる」という部分が楽天的にとても重要であったと考えられます。

当時からLINE・Twitterなどのコミュニケーションツールが盛況を迎えておりスタンプなどのキャラクター要素が重要になってきていること・TL上でのサービス宣伝、youtubeなどの動画広告の著しい伸び率、そしてもちろん楽天ECでの宣伝等々…。

広告要素を秘めているサービスは山ほどあり、2013年の時点でIT企業である楽天にも今後どういう広告手法が世に登場していくかを全て予測するのは難しい上に、単発で広告を打っても継続したコストがかかり、ひとつひとつの広告が「楽天」のブランディングになり難いなどの理由から、新規キャラクターの制作に取り掛かりだしたのだと考えております。

そして、ここまでであれば「あらゆる企業でやるべきこと」と言えるのですが中小企業になかなか効果の出ないキャラクターブランディングをやっている余裕はありません。楽天ほど体力のある企業が中長期的に本気で取り組んだから、今現在「お買いものパンダ」がここまでの知名度を得るに至ったと考えられます。

3.お買いものパンダが楽天にもたらしたもの

ここまで書いた中で「企業キャラクターを制作するメリット」と「制作意図」については説明して参りました。
この項目ではメリットの更に先、「具体的にどう使われており、それは他の方法と何が違うのか」を考えて行きます。

お買い物パンダの活用方法はいくつかありますが、その大部分が「キャンペーンの宣伝とお買い物パンダグッズの景品化」です。

キャンペーン宣伝告知がもし、実在の人物を使っていたらどうでしょうか?

内容が同一であったとしてもお買い物をいくら以上利用して、などの指示やクレジットカードの入会方法などお金や手続きに関する生生しい部分が全面に出てきてしまいます。
しかし、お買い物パンダを使うことによりそれらの生生しさを払拭し、明るいポジティブなイメージで訴求することが可能になっています。
また、お買い物パンダは一貫して「運営(楽天)側」ではなく「購入(ユーザー)側」になっており、ユーザーにとってはどうやって使えばいいかのイメージが湧きやすくなったりしており、親近感を持ってもらいやすい戦略が立てられていると考えられます。

パンダグッズの景品化については軽く触れるに留めますが、自社キャラクターのグッズを景品にすることは配布して自社のファンを増やすという意味と、その景品を目当てにキャンペーン利用してくれるという一石二鳥。
これらのことからお買い物パンダは直接的にも間接的にも楽天に多大な利益をもたらしていると感じます。


まとめ

キャラクターによるマーケティング・ブランディングはその価値を数値に表し難いため、なかなか企業の中で投資対象にならなかったりと後回しにされやすく、取り組みを行いだしたとしても効果が出ずに途中で断念されることも多いプロジェクトです。

しかし日本はサブカルチャーの興隆などもありキャラクターに馴染みの高い国であり、お買い物パンダの他にも熊本県の「くまもん」など様々なキャラクターが生まれています。
そしてその中から楽天のように直接的な数値に表現し難くても、明らかな効果を挙げる企業が出てきています。

故にデザイナーやマーケターなど、企業のクリエイティブに関わる人間全員が価値(メリットと戦略)を訴えて行くことが今後の企業の成長において、欠かすことができない…とまでは行きませんが中長期的には絶対に有益であると考えています。


そして、こういう可愛いキャラクターがいると自分も制作物と会社に対して愛着が湧きますよね。


※お買い物パンダに関する画像の引用元:楽天

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