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はらぺこアガヴェ【天候術師のサーガ 7】

〜 イノリゴ島 海岸沿い ナナミの家 ナナミの部屋 〜


 オロロンくん?
 どうしたの?
 また頭痛いの?
 ── イノリゴ島の少女、ナナミ


オロロンは
アガヴェの膝の上で
扇がれていた

ナナミは
身体にタオルを
巻きつけただけの格好で
ほぼ裸同然だった


 ナナミっち、
 ごっめ〜!
 これ勝手に着ちゃった。
 多分、うちの悩殺バディーに
 やられちったんだろね〜。
 一瞬で鼻血ブーして
 バタンキューだったよ。
 ── 島ギャル、アガヴェ


アガヴェは相変わらず
ナナミの作った
中華風レオタードを
身に纏っていた

確かに
自身の言う通り
彼女の身体は
抜群のプロポーションを誇っていた

いつも
オーヴァーサイズの服を
着ているので目立たないが
どうやらアガヴェは
脱いだ姿の殺傷能力は
計り知れない

 あ〜、それ着たんだね。
 面白半分で作ってみたけど、
 気に入ってもらえてよかった。
 ホントは、
 海とかプールに行くときに着る
 水着なんだけどね。
 ── ナナミ

 そうなん?
 普段着るやつじゃないんだ。
 すごくかわいくて
 気になったから
 着ちゃった。
 ── アガヴェ

 サイズ、丁度よかったんだね。
 私とアガヴェちゃんって
 大きさ大して変わらないのかなぁ。
 他の服も
 気に入ったのあったら
 持ってってもいいよ。
 ── ナナミ

 え、まぢ〜?
 嬉し〜!
 まぢ感謝!
 最近バイトクビになっちゃったから
 服買えなくて困ってたんだぁ〜。
 ── アガヴェ

 え〜、何したの?
 クビになるようなこと。
 ── ナナミ

 ブタ耳パン店ブタパンショップ
 バイトしてたんけど
 つまみ食いしてたの
 店長にバレちゃった…。
 えへへ
 ── アガヴェ

 も〜、食いしん坊なんだね
 アガヴェちゃんは。
 そういえば
 夕飯全然食べてなかったけど、
 お腹空いてない?
 おばあちゃんいたから
 緊張してたの?
 ── ナナミ

 じ、実は…。
 そうなの。
 人ん家行くとさ
 あんまし食べれんくて…。
 めっちゃお腹空いてんの
 ガマンしてたの。
 ── アガヴェ


アガヴェは恥ずかしそうに言った


 やっぱりそうだったんだ〜。
 そうだよね。
 人ん家行くと
 緊張してあまり食べられないよね。
 冷凍庫に冷凍した肉まんが
 あった気がするんだけど…。
 食べる?


アガヴェは
目をキラキラ輝かせながら
こくりこくりと頷いた

アガヴェはオロロンを布団に寝かせ
ナナミと一緒に今へ向かった


〜 イノリゴ島 海岸沿い ナナミの家 居間 〜


ナナミは冷凍庫から
凍った肉まんを取り出した


 アガヴェちゃん
 肉まん、何個食べる?
 いっぱい冷凍しといたから
 たくさんあるよ。
 ── ナナミ

 え〜、いっぱい食べていいの?
 じゃあ、六個食べていい?
 ── アガヴェ

 わぁ、いっぱい食べるんだね!
 いいよ、せいろ用意する。
 ── ナナミ

 あ、ダイジョブ!
 ちょっと貸して。
 ── アガヴェ


ナナミは肉まんをひとつ
アガヴェに渡すと
彼女は凍った肉まんを
両手で包み込んだ


 見てて、ナナミっち。
 魔法ってぇのは
 こんな使い方もできちゃうんよ。
 ── アガヴェ


アガヴェは
ゆっくり肉まんから手を離すと
肉まんはほかほか温まっていた


 え!
 すごいすごい!
 アガヴェちゃんの手、
 せいろになるの?
 ── ナナミ


ナナミは
手品を見た子どものように
アガヴェの手を握って驚いた


 うちの魔法は
 体温が高くなる魔法みたいで
 火とかも出せちゃうんよ。
 ── アガヴェ

 すごいなぁ。
 私もなんか使えたらいいんだけど…。
 ── ナナミ


ナナミは
少し悲しそうな表情を浮かべた

アガヴェは
蒸し立ての肉まんを頬張ると
黙りこくって
ゆっくり味わった


 うんまぁ〜い!
 これ、誰作ったの?
 ── アガヴェ

 え、私だけど…。
 ── ナナミ

 ナナミっちも魔法使いぢゃん!
 こんなおいし〜肉まん
 作れるんだからさ!
 この服だって
 ナナミっちが作ったんしょ?
 ナナミっちの魔法は
 「人を笑顔にする魔法」だね!
 ── アガヴェ

 「人を笑顔にする魔法」か…。
 はじめて言われたなぁ。
 ふふふ、ふふっふ、うぅ…。
 ── ナナミ


ナナミは泣きながら笑っていた


 え?
 どうしたの?
 お腹痛いの?
 う…、
 うちもなんだか
 涙出てきた…。
 ふぇえ…。
 ── アガヴェ


アガヴェも
ナナミの泣き顔を見て
もらい泣きした

ふたりは
笑い泣きしながら肉まんを食べた


* * *


 あの子、オロロンてぇの?
 そんで、兄貴を探してる…と。
 ── アガヴェ

 うん、そうみたい。
 さっきお風呂の時
 急に何かを思い出したみたいで…。
 持ってた仮面は
 お兄さんから預かったもの
 なんだって。
 ── ナナミ

 んじゃあ、明日は学院アカデミー休みだし
 手がかりでも探すかぁ〜。
 ── アガヴェ

 うん、そうしよ。
 よし、じゃあオロロンくんが
 起きる前に、
 アガヴェちゃんは着替えちゃおっか。
 また鼻血ブーされたら困るし。
 ── ナナミ

 あはは、そだね。
 ずっと着てたや、これ。
 着心地いんだもん。
 はぁ〜、お腹いっぱい。
 ── アガヴェ


結局、
冷凍庫にあった肉まんは
すべて無くなり
保存しておいた
他の食料も
すべてアガヴェが
食べ尽くしてしまった


8へつづく

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