マガジンのカバー画像

WEATHERD(ウェザード) - 天候術師のサーガ -

43
本編より約250年前の世界。 誰もが魔法を使い、生活は魔法を中心に営まれていた。 しかし、地上の人びとは魔法で生活を豊かにすることはできても、天候だけは操れなかった。 空では「…
運営しているクリエイター

記事一覧

ネヴァーランドの入り口【天候術師のサーガ 43】

ネヴァーランドの入り口【天候術師のサーガ 43】

 よし、みんな。
 目をつむって。
 ── アガヴェの妹、オウトネ

オウトネは誇らしげに
みんなの目をつむらせた

 ほら、アガ姉も早く。
 ── オウトネ

アガヴェは我に帰ったように
オウトネに言われ
すぐさま目をつむった

オウトネは両手を水平に広げて
まるでバレエダンサーのような
体勢をとった

その瞬間
アガヴェは
周りの空気がキリッと
引き締まった感覚を覚えた

 ふぅ〜。
 ──

もっとみる
真夜中の号令【天候術師のサーガ 42】

真夜中の号令【天候術師のサーガ 42】

 あれ、ドアが開かない。
 ── 島ギャル、アガヴェ

 貸して!おりゃ!
 ── イノリゴ島の少女、ナナミ

ナナミはロックされていた
研究室のドアを力ずくで開けた

 うそでしょ…。
 ── アガヴェ

ふたりはイルリオスたちの寝ている
二階の寝室に向かった

 ちょっと待って!
 いや、先行ってて。
 ── ナナミ

 ?
 あぁ、わかった。
 ── アガヴェ

アガヴェは一瞬首を傾げたが

もっとみる
与えられた使命【天候術師のサーガ 41】

与えられた使命【天候術師のサーガ 41】

 パパ…。
 ── 島ギャル、アガヴェ

 さすが私の娘だ。
 ここまで強力な力を
 有しているとは…。
 苦労して育てた甲斐があった。
 それでは、最終段階といこうか。
 その前に、この一連の研究過程を目撃してしまった
 きみには消えてもらおう、ナナミくん。
 ── アガヴェのパパ、カドモス

カドモスは
魔導銃の引き金を引きながら
それをナナミに差し向けた

その刹那
カドモスの持っていた銃は

もっとみる
アガヴェの怒り【天候術師のサーガ 40】

アガヴェの怒り【天候術師のサーガ 40】

アガヴェはどうすればいいか
わからなくなり
壁に背中をつけて
泣きながらずるずる床へ
崩れ落ちた

 うち、実験されてたんだ…ずっと。
 実の父親に…。
 なんだかずっとヘンだと思ってた…。
 魔導印鑑を押してないのに
 魔法が使えるんだもん…。
 みんなにはずっと黙ってたけど、
 そうゆうことだったんだ…。
 ── 島ギャル、アガヴェ

ナナミはファイルを握りしめたまま
何も言えずに呆然と立ち尽

もっとみる
研究室への潜入【天候術師のサーガ 39】

研究室への潜入【天候術師のサーガ 39】

〜 アガヴェ家のシェルター 換気口 〜

ナナミが換気口の蓋を開けると
プロペラが回っていた

 ちょっと、アガヴェちゃん。
 電源止めて〜。
 ── イノリゴ島の少女、ナナミ

 はいよ〜。
 ── 島ギャル、アガヴェ

アガヴェが換気扇の電源を落とすと
プロペラはゆっくり動きを止めた

 これをこうして…、こうして、
 こうして…、こうっ!
 ── ナナミ

ナナミは手際良く換気扇を分解すると

もっとみる
作戦決行【天候術師のサーガ 38】

作戦決行【天候術師のサーガ 38】

〜 アガヴェ家のシェルター アガヴェの部屋 〜

 あ、研究室のドアなんだけど、
 指紋認証だった、ね。
 何書いてるのか全くわかんなかったわ。
 ── 島ギャル、アガヴェ

 急いで送ったから、
 変な風になっちゃったね。
 ごめんごめん。
 ── イノリゴ島の少女、ナナミ

 そしたらどうすんの?
 指紋認証だったら
 パパの指紋しか読まないわけでしょう?
 これじゃ、研究室に入れないぢゃん。

もっとみる
鍵の在処【天候術師のサーガ 37】

鍵の在処【天候術師のサーガ 37】

翌朝

ナナミとアガヴェは
アガヴェ家の面々とともに
朝食が用意されたテーブルについた

 はい、
 みんな揃ったわね。
 それでは手を合わせて。
 ── アガヴェのママ

 いただきます。
 ── みんな

朝食の席には
もちろんアガヴェのパパも居た

 ごちそさま。
 ── アガヴェの妹、アウトネ

 あら、もういいの?
 しっかり食べないと
 頭が働かないわよ。
 ── アガヴェのママ

もっとみる
ひみつの作戦会議【天候術師のサーガ 36】

ひみつの作戦会議【天候術師のサーガ 36】

ナナミとナミナおばあちゃんは
しばらくの間
アガヴェ家のシェルターに
居候させてもらえることとなった

 すいません。
 しばらくお世話になります。
 ── ナミナおばあちゃん

 お世話になります。
 ── イノリゴ島の少女、ナナミ

窓はないが
シェルターの至るところに
時計が設置されていたのを見ると
23時を過ぎていた

 部屋がひとつ空いてたから
 ここ使って。
 お布団も敷いてあるから

もっとみる
アガヴェ家のルール【天候術師のサーガ 35】

アガヴェ家のルール【天候術師のサーガ 35】

〜 アガヴェ家のシェルター リヴィング 〜

 アガヴェ、
 説明してちょうだい。
 これはどう言うことなの?
 ママ、入れないでって
 言ったわよね?
 どうしてママの言うことが
 聞けないの?
 ── アガヴェのママ

 ねぇ、ママ。
 ナナミっちの家は
 今回の出来事で燃えちゃったんだよ?
 他に泊まれる場所だってないし、
 こんなに広い家があるなら
 止めてあげてもいいぢゃん!
 なんで独

もっとみる
艦内のルール【天候術師のサーガ 34】

艦内のルール【天候術師のサーガ 34】

〜 飛空艦サミダレ 司令室 〜

雨の師団一行は
雷の師団の飛空艦イカヅチへと向かい
航行していたが船内で問題が発生していた

 師団長、
 艦内で思念派反応が出ています。
 オロロンの部屋からです。
 ── オペレーター、ウル

 なんだと〜!
 艦内は魔法の使用を禁止しているはずだぞ!
 そんなことも忘れてしまっているのか?
 まったく…、戻ってきてからというものの
 手間のかかるやつになって

もっとみる
脳の洗濯【天候術師のサーガ 33】

脳の洗濯【天候術師のサーガ 33】

〜 アガヴェ家のシェルター アガヴェの部屋 〜

 セメちゃん、
 お姉ちゃんの名前はナナミです。
 よろしくね。
 ── イノリゴ島の少女、ナナミ

アガヴェの妹セメレは
恥ずかしそうに俯いた

 ほら、セメちゃん。
 ごあいさつして?
 ── 島ギャル、アガヴェ

 セ、セメレでちゅ。
 よろちくおねがいちまちゅ。
 ── アガヴェの妹、セメレ

 かんわいいぃ〜!
 セメレちゃん、
 よろし

もっとみる
オロロンによる遠隔操作【天候術師のサーガ 32】

オロロンによる遠隔操作【天候術師のサーガ 32】

〜 飛空艦サミダレ 艦内 オロロンの部屋 〜

オロロンは
もともとの自分の部屋に居たが
どうにも自分の部屋だという意識は
皆無だった

 『ぼくがこの人たちと
 一緒に居たの?
 ホントに?
 いまいち信じられないなぁ。
 なんだか怖そうな人たち
 ばっかりだし…。
 あの師団長とかいう人も
 信用できないよ。
 問題はナナミとアガヴェだ。
 おばあちゃんはぼくのことを
 覚えているみたいだけど

もっとみる
口止め料の交渉【天候術師のサーガ 31】

口止め料の交渉【天候術師のサーガ 31】

〜 イノリゴ島 アガヴェ家のシェルター アガヴェの部屋 〜

 ちょちょちょちょ。
 セメちゃん。
 この人たちのこと、
 ママとパパに
 絶対言っちゃダメだからね。
 これ、お姉ちゃんと約束できる?
 約束できるならあげる。
 ── 島ギャル、アガヴェ

アガヴェは
妹のセメレに向けて
手のひらの中のビスケットを
見せびらかした

 う〜ん、
 ひとちゅだけ?
 ── アガヴェの妹、セメレ

もっとみる
潜入【天候術師のサーガ 30】

潜入【天候術師のサーガ 30】

 今なら多分

 シェルターの中に入れるよ。

 ── 島ギャル、アガヴェ

 え、大丈夫?

 勝手に入って。

 ── イノリゴ島の少女、ナナミ

 うん、バレないように

 うちがなんとかする。

 ── アガヴェ

 わしは足手纏いじゃろうて。

 ── ナミナおばあちゃん

 おばあちゃんは

 梯子をあんなに早く

 降りられたんだから

 大丈夫だよ。

 ── ナナミ

三人は

もっとみる