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自己啓発本が嫌い


“これをやれば人生が成功する”
“こうすれば金を稼げる”
“痩せたいならこれだけやれ”


何も考えずに揺られている電車内で、ほとんど音の聞こえないテレビ番組が流れている居酒屋で、ふらっと立ち寄った本屋で。社会のあらゆる場所に、こんな言葉たちが転がっている。


私は嫌いだ。言葉をこんなに雑に扱う文章が。


“若いうちに転職しよう”
“結婚して幸せになろう”
“女性/男性にはこうして接するべし”

まるで女性にとって、男性にとって、人間にとっての幸せを決めつけられているようで、嫌いだ。

まぁ、こんな言葉たちを信じるな!と叫んでいる、まさに私が今書いているものと紙一重のような言葉に対しても、それはそれで嫌気がさす。
世間で決めつけられた幸せは幸せなんかじゃない、と決めつけられているようで。


さて、中でも特に嫌いで苦手な文章は、初めに挙げた3つのような自己啓発の類である。

『これをやれば人生が成功する』?
いやいや。噓つけ。
あなたがその方法で成功したからって、それを他人に押し付けるなよ。たまたまそのやり方があなたに合っていただけで、他の方法だってあるのではないか。「人生の成功」なんて人それぞれだ。人を引き付けるための甘い言葉でしかないだろ。はたまた、自分の成功体験を世間に自慢したいだけではないのか。

『こうすれば金を稼げる』?
人にはよるだろうが、やりたくないことをやって金を稼ぐことだけが幸せなのか?金を稼ぐことだけがこの世界の全てなのか。

『痩せたいならこれだけやれ』?
そんなわけない。痩せにくい体質の人とか、普段の生活によって人に合う方法は変わってくる。あなたはその方法だけで痩せられたとしても、ほかの人はそうとは限らないだろう。


これらの言葉を聞くと、「これだけが幸せだ」「これしか正しい方法はない」と押し付けられている気分になるのだ。
人の数だけ正解があるはずの人生なのに。

そもそも私の性格が曲がり切っていることは百も承知なのだが、納得がいかない。



これだけ多様性が叫ばれている時代であるのに、ごく一部の人(比較的多数ではあるが)にしか当てはまらないはずの社会の当たり前や普通、正しさが、皆の共通認識として幅をきかせているように感じる。

そしてこれらを鵜呑みにして、その正しさから外れる人間を否定する人がいる。

お金や地位や名誉。家庭や仕事での成功。容姿の美しさ。世間に受け入れられやすい性格。
社会が思う"正しい幸せ"を手に入れることだけが全てなのか。
あるいは、それを、示された方法で簡単に手に入れることが幸せなのか。


自分で歩き、手を汚して、広い草原の中に一凛の花を見つけた時の喜びを、私は忘れたくない。

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