「治験」とは? なぜ治験を行う必要があるの?――私たちが普段飲んでいる薬も「治験」によって生まれています【治験解説①】#治験とは?
薬の開発の進歩によって、これまで治らなかった病気が治るようになったり、手術をしなくても治療できる病気が増えました。
一例をあげれば、今から50年ほど前の昭和20年代まで、国内の死亡原因の第1位であった結核も、今は有効なワクチン(BCGワクチン)や治療薬が開発され、予防や治療に大きく貢献しています。
近年は、ひとりひとりの遺伝子異常に適した治療を選択できるようなゲノム医療分野での開発も積極的に行われています。
これらの研究成果が、「有効な治療法」となって、多くの方が受けられるようになる前には、必ず「治験」が行われています。
今日は「治験」そのものについてお話したいと思います。
治験とは、「くすり」が「薬」と認められるための試験
ある病気に対して、効果と安全性が予測される物質が「くすり」として選ばれます。
この「くすり」とは、将来、病院で処方されるお薬の候補になるものです。
お薬の候補であることから、ここでは「くすり」と記載していきます
ちなみに、この「くすり」はどんな物質だと思いますか?
試験管で化学合成されるような…そんなイメージを持たれる方も多いかもしれません。もちろんそうした研究成果もありますが、植物や土壌中の金、海洋生物などから発見された物質が元になることもたくさんあるのです!
世界中の研究者は、さまざま国・地域の土壌を調べているとか。まさにトレジャーハンター!!ですね。
現在も、世界中で数多くの「くすり」が研究・開発されています。
しかし、いくら製薬会社や研究者、医師たちが研究を重ねても、それが本当に病気に効果があるのか、人が服用しても大丈夫なのか、確かめないことには世の中に送り出すことはできません。
そこで行われるのが人を対象に、有効性と安全性を評価する「臨床試験」です。
治験とは、人を対象に「くすり」が病気に効果があり、かつ安全に使用できるのか、健康な人や患者さんの協力を得て調べる臨床試験のことをいいます。
治験の結果を国(厚生労働省)が厳しく審査して、その病気の治療に有効で、かつ安全と承認されたものが、「薬」となります。
いま、私たちが使っている「薬」は、これまで多くの方の協力を得て誕生してきたもの。
今後も、新しい「くすり」を「薬」として、現在・未来の患者さんが使用していくためには、「治験」は欠かせないプロセスなのです。
治験を行う目的とは?
治験では「有効性」と「安全性」を評価
新しい「くすり」の開発は、よりよい効果(有効性)を見つけるだけではなく、副作用の少ない、できるだけ安全なくすり(安全性)を見つけることも重要な課題となっています。
副作用が強く出てしまうお薬を、服用しなければならない日々は、大変つらいものです。治療中断にもつながりかねません。
効果があることはもちろんですが、患者さんの生活のためにも、副作用のできるだけ少ない「くすり」の開発も期待されるところです。
「人」を対象にするからこそ、厳格なルールが課せられる
治験は、動物実験と異なり、「人」を対象にします。
そのため、まず何より
★治験に参加される方の人権と安全★
が守られなければなりません。
そのうえで、薬として認められるためには、
★有効性と安全性を科学的な方法で正確に調べること
が必要です。
二つの重要かつ必須の課題をクリアするため、日本では、治験において次の2つのルールが課せられています。
「治験」に関わるスタッフは、現場の方はもちろん、事務方のスタッフまで、この「GCP」を徹底的に勉強しています。
最後に、その一部をご紹介します。
「太字」だけ見ていただければ十分です!
【 法律・GCPで定められているルール例 】
ルール①:国の許可なく、勝手にやってはダメ!!
「治験の内容を国に届け出ること」
製薬会社は、治験を担当する医師が合意した「治験実施計画書」(「くすりの候補」の服薬量、回数、検査内容・時期などが記載された文書)を医療品医薬機器総合機構(通称「PMDA」と呼ばれる厚労省所轄の独立行政法人)に届け出ます。PMDAは、この内容を調査し、問題があれば変更等の指示を出します。
ルール②:治験計画が適切か、第三者委員会で審査せよ!!
「治験審査委員会で治験の内容をあらかじめ審査すること」
治験審査委員会では「治験実施計画書」が、治験に参加される患者さんの人権と福祉を守って「くすりの候補」のもつ効果を科学的に調べられる計画になっているか、治験を行う医師は適切か、参加される患者さんに治験の内容を正しく説明するようになっているかなどを審査します。
治験審査委員会には、医療を専門としない者と病院と利害関係がない者が必ず参加します。
製薬会社から治験を依頼された病院は、この委員会の審査を受けて、その指示に従わなければなりません。
ルール③:患者さんの意志は、丁寧に確認すること!
「 同意が得られた患者さんのみを治験に参加させること」
治験の目的、方法、期待される効果、予測される副作用などの不利益、治験に参加されない場合の治療法などを文書で説明し、文書による患者さんの同意を得なければなりません。
ルール④:患者さんの安全確保が最優先! 重大な副作用は早急に国に報告!
「重大な副作用は国に報告すること」
治験中に発生したこれまでに知られていない重大な副作用は治験を依頼した製薬会社から国に報告され、参加されている患者さんの安全を確保するため必要に応じて治験計画の見なおしなどが行われます。
ルール⑤:「医療機関にお任せ!」は絶対NG! 製薬会社は、治験を行う医療機関を日々モニタリングすること!
「製薬会社は、治験が適正に行われていることを確認すること」
治験を依頼した製薬会社の担当者(モニター)は、治験の進行を調査して、「治験実施計画書」やGCPの規則を守って適正に行われていることを確認します。
最後に
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