見出し画像

はじめて人を採用する方へー労働保険・社会保険とは?

昨日、「スタートアップ・小規模事業者のための労務管理ミニセミナー」を開催して、個人事業主でこれからスタッフを採用したいと考えている方とお会いしました。

個人事業主を長くしていても、はじめてスタッフを雇用するには何をしたらよいかさっぱりわからない!とのお話です。

用意していた資料は、「社労士の活用法」の記事でご紹介したような内容をベースにしていたので、当たり前に労働保険、社会保険といった言葉を使っていました。

そこで、そもそも労働保険ってなんのこと?社会保険ってなんのこと?というところからお話しすることにしました。

細かなルールはありますが、理解のために制度をざっくりとシンプルにみていきましょう。

労働保険・社会保険とは?

労働保険・社会保険 簡単な理解のために

労働保険も社会保険も、「はたらくひとの万が一」に備える保険です。
万が一業務中にけがをしたとき、
万が一経営状態が悪くなって雇用ができなくなったとき、
万が一私傷病で働けなくなったとき、
万が一障害を負って働けなくなったとき、
など、どれも会社で働く人が万が一働けなくなったときに生活の保障を得るための保険です。

対象者と保険料は?

では、誰が対象になって、保険料はどうなっているのか?
それをシンプルに理解するには、その保険がどういう目的のものなのか
一歩踏み込んで考えてみるとわかりやすいです。

①労災保険

労災保険は、業務中の事故については本来は会社に責任があり(社員に過失がある場合もありますが)、会社が補償する必要があるものです。
ただ、補償額も多額になる可能性があるので、経営者に安心して事業をしてもらうために国が設けた補償制度です。

また、誰でも業務中にけがをする可能性はありますし、パートだから正社員だからという区分で補償の有無が変わるということはありません。

そこで、対象者は、パート・正社員問わず、全員を対象にし、保険料はすべて会社が負担します。

②雇用保険

雇用保険は、おもに失業した際に給付を受けることができる制度ですが、会社都合だけでなく、自己都合で退職したときや育児休業、介護休業といった個人的な理由でも給付を受けることのできる制度です。
よって、個人負担分も発生します。
ただ、雇用調整助成金のような会社への助成制度も雇用保険料のなかから拠出されるため、会社負担分の方が多くなっています。

では、対象者はどうでしょうか?
週20時間以上働く人が対象ですが、昼間学生はたとえ週20時間以上働いても対象ではありません。
これは、その仕事が生活の糧としてある程度の割合を占めていますか?という基準だと私は理解しています。

失業して賃金がもらえなくなると生活に支障がでる=週20時間以上
と考えると理解がしやすいです。

でも、昼間学生さんが聞いたら、アルバイトなくなると生活に支障がでるのは一緒だ!と言うのではないでしょうか?自分のアルバイト代で生活している学生さんもたくさんいます。
現在の大学生の仕送り状況などを考慮して、加入を選択できるのもよいと私は思います。

③健康保険と④厚生年金保険

健康保険と厚生年金保険は、その会社が本業であり、ほとんどの時間をその会社での就労に費やしている方が対象です。
つまり、自由な時間が少なく、他で所得を増やしたりすることができず、その仕事がなくなるとまったく収入がない状況になる場合です。

健康保険制度には、雇用されていない方が入る国民健康保険もありますが、国民健康保険には私傷病療養中の生活保障の制度はありません。
また、厚生年金保険は国民年金に加えての(2階部分と例えられます)、老後や障害を負った場合の生活保障となります。

これは、会社での就労にほとんどの時間を費やしている人(つまり、会社がその人の時間の大半を使っている)は、給料だけが生活の糧であり、たとえ私傷病でも生活の保障が必要で、給料のなかでしか資産形成できないため、会社も半分費用負担をして万が一に備えているのです。

まとめ

こうして一つひとつなぜこうなっているのかを考えてみると、
経営者にとっても「保険料負担は大変だけれど、必要な保険だね」となるのではないでしょうか?

会社は、働く社員の時間と労働力をもらって事業を運営しています。
もちろんその対価として給料を支払っていますが、公的制度のメリットを活用して、社員に安心して働ける環境を提供することも大切です。

個人事業主でこれから雇用をする方、スタートアップの方、
これからの事業の発展のためにも社員の安心のためにも
働く人の保険制度について理解を深めていただければうれしいです。