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「エジプトの警察は信用できるのか?ー奪われたお金を取り返せ!ー」アフリカ大陸縦断の旅〜エジプト編⑬〜

*前回の物語はこちらから!!!


 2018年8月16日、午後10時頃。ようやく詐欺師から逃げ切ることに成功。緊張の糸は切れ、溢れ出す負の感情。不安定な精神状態。私たちは、涙を流しながら宿に向かいました。迷惑をかけてしまった宿のオーナーに、謝罪と感謝を。そう思って開けた宿の扉。耳に飛び込んできたオーナーの罵声。そこに、心配や安堵は微塵もありませんでした。その後、私たちは小一時間ほど、無謀なバックパッカー精神についてオーナーに説教されました。

 しかし、それでも頼れるオーナー。私たちが詐欺師から逃げ惑っている間に、警察に話を付けてくれていたのです。お金を取り返す手段、犯人とそのグループの特定。方法は分かりませんが、元ムーディ側だったオーナーは、その人脈を最大限に使ったようでした。

「オーナー、ありがとうございます。明日の朝、お金を取り返しに行ってきます!」


 すると、オーナーは自信なさげに口を開きました。

「1つ問題がある。これには証拠がない。詐欺師なら、平気で嘘をつくだろう。そうなれば、諦めるしかない。でも、エジプトでは観光客は大きな資源。警察は必ずお前らを手厚く待遇してくれる。だから、どれだけ取り返せるかは、お前らのお喋りと熱量次第だ。」

「何か、その詐欺師と悪事を結びつける動画や写真は撮っていないのか?」


「(そんなこと言われてもなぁ。)」


 写真や動画を撮っていたのは詐欺にあう前。ムーディが本性を現わしてから、絶え間なく襲ってくる恐怖と不安。当然私には、写真や動画を撮る余裕なんてありませんでした。


「(やっぱり無理なのか。)」


 わずかに抱いた希望も一瞬にして崩れ去り、半ば諦めムードの私。


すると隣にいた旅の相方、ぴょんすがおもむろに携帯を取り出しました。


「こんな動画ならありますけど、役に立ちますか?」

 しばらくじっと画面を見つめるオーナー。

「(いやいや、あんな状況で詐欺師が悪事を働く動画を撮っている訳がない。)」

 期待することもなく、うつむいていた私。
しかし、次の瞬間。


「いける!使えるぞ、この動画!これで確実に犯人を捕まえられる!」


 響き渡る歓喜の声。


「(え、、、?なんで?そんな動画あったか?)」


 不思議に思い、オーナーが持っている携帯画面をのぞき込んだ私。確かに画面に映し出された証拠。私は喜びと同時に、あの瞬間を思い出しました。



 それは詐欺師ムーディのアジトでの出来事。打つ手がなくなり絶望していた私は、ふとぴょんすに目をやりました。その時、彼の胸ポケットから少し出ていた携帯電話。



 そうです。あの時、ぴょんすは動画をまわしていたのです。画面に映っていたのは、煙草のようなものを吸うムーディ。この煙草のようなものは、オーナーによるとハッシュという大麻の一種であるとのこと。そしてこれを吸うことは、エジプトでは違法。


「これを警察に見せろ。確実な証拠になる!これで犯人は絶対に捕まえられる!」


「ありがとう、ぴょんす。絶対にお金を取り返そう!」

「後で何か役に立つと思って、撮っておいて良かった。これで明日戦えるな!」




 そして2018年午前8時、私たちは絶対的な証拠とオーナーの人脈を武器に、警察へと向かいました。


 まずは宿の近くにあった地元警察へ。立派な門をくぐり、窓口を探しました。たくさんの部屋、終わりの見えない通路。しかし、警察関係者と思われる人どころか、誰かいる様子もありません。


「(本当にここが警察署か、、、?)」

 そう思いながらも、適当に部屋を開け続ける私たち。すると、偶然開けた一部屋におそらく警察関係者だろうと思われる、小太りの男性を発見。彼は面倒くさそうに、私たちに近づいてきました。

「何か用か?」

 私たちはあの動画を見せ、オーナーの名前を出しつつ、昨日に起きた出来事を必死に説明しました。しかし、私たちの拙い英語が悪かったのか、彼が理解しようとしてくれなかったのか。全く話になりませんでした。


「アイ ドン ノー。」


 彼はそう言うと、誰かに電話を始めました。


「(大丈夫か、これ、、、?やっぱりこんなことでは、警察は動いてくれないのか。)」

 またしても漂う諦めムード。


 すると、電話が終わった彼が戻ってきました。

「君たちを今からギザの観光警察へ連れて行く。その動画を見せて、詐欺事件について説明しなさい。あそこには英語の通じる人がいるから、大丈夫だ。」

「(あぁ。面倒な案件はたらい回しなんだ。)」


 それでも、今頼ることができるのは警察のみ。私たちは彼に連れられて、ギザ観光警察へと向かいました。


 そして、最後の希望である、ギザ観光警察に到着。皮肉にも、目の前にはあのギザのピラミッドが。


「(ここに行くはずだったのにな。)」


 私たちは日の射したピラミッドから目を逸らし、観光警察の入り口へと向かいました。


*次の物語はこちらから!!!



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