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「敵か味方か?アルバミンチ」アフリカ大陸縦断の旅〜エチオピア編⑤〜

*前回の物語はこちらから!!!


 2018年8月24日、「もう外に出たくない。」と恐怖を抱きながらも、「外に出るしかない。」という、矛盾した謎の快感に後押しされる形で、飛び出したエチオピアの夜。この一歩が私の旅に大きな影響を与え始めていたことを、この時の私はまだ知りませんでした。

 そして翌早朝、昨夜の外出で得た快感を薄らと身にまとい、バス停まで歩きました。するとその道中、目の前を通るバスの目的地が、偶然にも私たちが目指す場所と一致してることに気が付きました。「(予定とは違うけど、これに乗るべきか?)」数秒間の迷いの果てに、乗車を選択。初めて自分の感覚だけを根拠に判断を下しました。

 1人150ブル(当時約600円)を支払い、警戒心のせいで眠れないまま、ミニバンに揺さぶられること約4時間。何事もなく、アルバミンチに到着。

 いや、何事もないはずがありませんでした。ミニバンを降り、預けた荷物を受け取ろうとする私たち。この時すでに、何か漠然と良からぬ街の雰囲気を感じ取っていました。そんな私たちのもとに、運転手の男性が近寄ってきました。

「1人200ブル払え!!!荷物乗せてやっただろ!!!」

「(ここまで来るのに1人150ブル、、で荷物が1つ200ブル、、、。)」

 どう考えても理解し難いこの状況。「はいはい。分かりました。」と言って進んで支払うはずもありません。さぁ交渉スタート!

「荷物代って、聞いてないんですけど。それに人間より高いっていうのがどうも、、、。」

 弱々しく口を開いたと思えば、言葉を詰まらせてしまった私たち。これには明らかな原因がありました。そう、あのミニバンを降りたときに察した異様な空気が、私たちに迫ってきていたのです。襲われた訳でもなく、暴言を吐かれた訳でもありません。しかし、ミニバンの乗客、さらには街を歩く全ての人間から感じる、金払いの悪い日本人を敵と見なすような視線。

「早く金を置いてどっかいけよ。」

 そんな声とともに、手拍子さえも聞こえてくるような気がしてなりませんでした。アルバミンチの街全体から脅されているんじゃないか、、、


 私は、手に握りしめられた400ブルを差し出していました。


 見えない圧力に屈し、呆然としばらくその場に留まっていた私たち。しかし、またしても恐怖を上回った快感が私の背中を押してくれました。

「とりあえず、次の目的地向かうか。」

 特に悪いことをしている訳でもありませんでしたが、私たちはなるべく人目に付かないよう、コソコソとその場を後にしました。

「さっきのこともあるし、街の人に聞くのはやめとった方がええな。」

 ということで、次の目的地であるカイヤファールに向かうため、信用できるであろう警察署でバスの有無を尋ねることにしました。

 そして歩き始めてすぐ、とある男性に声をかけられました。

「どこか行きたいのか?」

 いかにもな怪しい声かけでしたが、一応聞いておこうと思った私たち。

「カイヤファールまで行きたいんですけど、、」

 すると、彼は食い気味で答えてきました。

「あー、Ok、Ok!俺が連れて行ってやる!後ろに乗れ!」

「(後ろ、、?まさかこれで行くん?)」

 彼が乗っているのは、ボロボロのバイク。その後ろに繋がれた2人乗り用の座席。見た目は完全にトゥクトゥク。

「(ここからカイヤファールまで4時間ほど。険しい山道だと聞く。こんな乗り物で行くもんなんか?)」

 しかし、また街全体から監視され、笑われている感覚に、、、。

「(あんまここ好きじゃないし、移動できるならそうするか。)」

 そう思い、後部座席に乗り込んだ私たち。いざ、カイヤファールへ!


 目の前の交差点を左折し、300mほど進んだその時でした。突然停車するバイク。運転手の降りろというジェスチャー。

「はい、到着。100ブルね!」

「(着いた、、?どこに?どれが?)」

 ふと見れば、目の前にはツアー会社。

「(あぁ、そういうことね。)」

 これは私たちの伝え方が悪かったことが原因かもしれません。運転手は、カイヤファール行きのバスが出ているツアー会社まで乗せていく、という認識だったようです。

「(いや、でも2分しか走ってないのに100ブル(当時約400円)て高すぎるやろ。)」

 と思いつつ、この街で交渉することにすでに諦めを感じていた私たちは、渋々100ブルを支払うことに。

「せっかくやし、このツアー会社に聞いてみるか。」

 と逃げるように歩き出した次の瞬間、私たちは大勢の黒人男性に囲まれていることに気が付きました。

「どこに行くんだ?」「安く連れて行ってやる。」「こっちに乗れ。」「俺が案内するよ。」

 四方から攻め込んでくる客引きの群れ。どうやら金を巻き上げようと、私たち観光客を取り合っている様子でした。

「(向こうから言い寄ってくる奴に付いて行っても、ろくなことにならん。でも早くここから出たい。)」

 しばらく客引きを受け流していた私たち。何とか切り抜けようと周囲を見渡すと、客引きの群れから少し離れた場所でこちらを見ていた男性を発見。

「(あれも客引きか?でもあんま攻めてこやんな。こっちから行ってみるか!)」

 なぜ、彼に話しかけに行こうと思ったのか。こればかりは直感、あるいは自分の判断だけで物事を選択することで得られる恐怖と、それ以上の快感に期待していたのかもしれません。


「カイヤファールまで行きたいんですけど、僕たちのガイドをしてくれませんか?」


「そうか、結構遠いけどいいのか?まぁそれは歩きながら話そう。」


「My name is John. Nice to meet you !」


*続きはこちらから!!!


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