「ジョンとバナナと私たちーカロ族への旅路ー」アフリカ大陸縦断の旅~エチオピア編⑥~
*前回の物語はこちらから!!!
2018年8月25日、早朝5時。他者の意見やインターネットから得た情報を基準に、判断を下そうとしてきた私。そんな私の目の前に偶然通りかかったアルバミンチ行きのミニバン。乗車するか否か、初めて自分基準で行動を選択した瞬間でした。こうして私たちはアワサを出発し、目的地のアルバミンチへ。
到着後、すぐに感じ取った街の異様な空気。弱そうな観光客であったからか、周囲から見下されているような気がしてなりませんでした。徐々にアルバミンチに支配されていく私たち。
ミニバンのドライバーから請求された高額な荷物代。交渉の余地もなく支払ったお金。信用できそうにもない街の人々。どうにかこの場を離れようとした私たち。そして声をかけられた男性に言われるがまま、飛び乗ったボロバイクの荷台。2分走って降ろされ、請求された移動距離に見合わない金額。抵抗力もなく、支払いを済ませた私たちを囲む黒人男性たち。金になると思われた私たち観光客に、ついには詐欺師たちが群がる始末。
「なんやこの街!!!」
言い寄ってくる黒人男性たちから身をかわす私たちの遠目に、群れから外れ、大人しげにこちらを見る小太り男性を確認。直感だけでこの男性に声をかけることを決断しました。
「カイヤファールまで行きたいんですけど、僕たちのガイドをしてくれませんか?」
これをあっさりと受け入れ、私たちを別の場所へと誘導してくれた小太りな男性。彼の名前はジョン。私たちはこれから数日、エチオピア最終目的であるカロ族への訪問を目指し、坊主頭の小太り黒人、ジョンと旅をすることになったのでした。
「(適当に声かけたけど、この人で大丈夫なんかなぁ。)」
あの状況からの脱出を優先してしまった私たちは、何の確信もなく声をかけたため、ジョンを信用する段階にありませんでした。
「カイヤファールまでって言っていたけど、何しにいくんだ?」
「(カイヤファールとは言ったけど、最終目的はゴルチョ村でカロ族に会うこと。ほんまなら、そこまで案内して欲しいところやけど、頼んでいいんか?またエジプトみたいに、騙される可能性もある。でも、カロ族は戦闘部族やからガイドが必須って誰かのブログに書いてたな。アルバミンチからゴルチョ村なんて、だいぶ距離ある。こんなところからガイド雇うもんなんか?また高額なガイド料かもしれへんけど、この街で信用できる人を見つけられそうもない。どうするべきか、、、。とりあえずガイド料だけでも聞いてみるか。)」
どこまで話をして、交渉を持ちかけるべきか。葛藤の果てに、私は携帯に保存していたカロ族の写真をジョンに見せました。
「この人たちに会いに行きたい。アルバミンチからカイヤファール、コンソ、ディメカ、トゥルミと、戻ってくるまでに3日はかかると思う。できればジョンにガイドをして欲しい。いくら払えばしてくれる?」
「1日300ブルだ!それで君たちのガイドをしよう!」
「(承諾はやっ!3日もかけて遠いところまで行くのに大丈夫か?それも見知らぬ観光客と。にしても300ブル(当時約1200円)て、調べた金額より安いな。まだ騙される可能性もあるけど、ここに長居はしたくない。いくしかない!)」
と完全に人柄を度外視し、安いという理由だけでガイドを決定した私たち。
「とりあえず、カイヤファールを目指すってことでいい?」
「いや、今日はバスはほとんど出ていないと思うから、出発は明日になると思うよ。」
「(なんで!?まだ昼前やで!?いきなり足止めはきついて。てか今日のガイド料、、。)」
いきなり騙された、のではなく、ジョンによると今日は祝日とのこと。イスラム教に関するイベントがあるようで、働いている人がほとんどいないらしい。しかもそれは今日だけで、明日からは通常運転とのこと。
「(今日だけかー。タイミング悪いな。しかも、エジプトと同じ、またしてもイスラム教のイベント。あの時、手合わせていただきますしたやん!」
2連続で同じ宗教のイベントに進路を妨害され、どうしようもない状況かに思われましたが、ここでジョンから救いの言葉。
「コンソはそこそこに大きい街だから、そこまでのバスなら出ているかもいれない。探してみるか?」
「もちろん!!!」
ジョンと共に1時間ほど歩き回り、ようやく見つけた小さなバス。午後1時頃、私たちは何か恐ろしい雰囲気を感じ取っていたアルバミンチを離れ、コンソへと向かいました。
やはり車内では危機管理から、眠れるはずもなく、ぼーっと窓の外を見る他にすることはありません。ジョンも黙ったまま。そんな中、急停車したミニバス。
「(ん?車壊れたか?)」
と思ったその時、凄まじい速度で子供たちが、私たちが乗るミニバスを目掛けて走ってきました。それと同時に、ミニバスの窓が開きました。少し背伸びをしながら、窓の中に手を入れてくる子供たち。その手にはたくさんのバナナ。どうやらこの周辺では、バナナ栽培が盛んに行われているようで、子供たちが乗客にバナナを売りに来ていました。
「(なるほど、それで休憩がてらに停車したんか。でも、バナナ買えるほど余裕ないのよ。すまん、ちびっこたち!)」
値段も分からないまま購入する訳にはいかず、その光景をじっと見ているだけの私たち。すると、さっきまで物静かだったジョンが立ち上がり、窓から何やら子供たちと話し始めました。そして、ポケットからお金を取り出し、1房のバナナを購入。
「3人で食べよう。」
ジョンはそう言って、ちぎったバナナを私たちに分けてくれました。感動の甘み。その様子を見て、微笑みながらバナナを頬張るジョン。美味しかったとジョンに伝えると、彼は満面の笑みで、子供たちと何か話していました。
アルバミンチで感じていたあの異様な雰囲気、嘲笑され、見下されているかのような視線。それら全てと真逆の何かが、私たちの周りを包んでいました。
再び走り出す窓の外から、子供たちに笑って手を振る、私たちとジョン。
「(ジョンをガイドに選んで良かったな。)」
「Thank you, John。 Banana was delicious。」
*次の物語はこちらから!!!
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