「いざ、上陸。動物の国 ケニア」アフリカ大陸縦断の旅〜ケニア編①〜
2018年8月27日午前10時。選んだ宿にWi-Fi設備がないことを知った私たち。バスチケットを購入するための窓口が開くまで、まだ時間がかかりそうな様子。そこで私たちは「コンソの街、唯一のWi-Fi」が使用できる場所に行くことにしました。トゥクトゥクのような乗り物で移動すること数十分、だんだんとコンクリート舗装はなくなり、緑に囲まれた山道への変わっていきました。さらに、そこから徒歩で奥に続く道を進むと、見えてきた謎の建物。おそらく私たちは辿り着いたのでした。しかし、エチオピアン門番の大男に「ここを使うなら入場料500ブル出せ」と言われ、何とか交渉を試みるも、集まってきた野次馬たちにまで金銭を要求されることになりました。まるでアジア人オークション。私たちは大急ぎでその場から姿を消しました。
逃げ帰った宿でくつろいでいると、私たちの目の前に日本人が現れました。彼の名はY氏。エチオピアで体感した過酷さと今後の予定が似通っていたため、しばらく共に過ごすことになりました。Y氏引率のもと、すんなりバスチケットを購入し、インジェラをアテに酒を交わし、明朝のバス移動に備えて眠りに就きました。
2018年8月28日4時半。Y氏と出会った安心感か、エチオピアを乗り越えた達成感か、いつもより深く眠ることができた私たち。前日にまとめてあった荷物を背負い、軽い足取りで宿を出ました。そして、バスステーションでチケットを見せ、私たちはエチオピアのコンソから、ケニアとの国境にまたがる街、モヤレへと移動するため、汚いバスに乗り込みました。
「(後数時間でケニアに入国するんか。どんな国かな。シャワーとWi-Fiあればいいな。エチオピアの部族はまた会いに来たいけど、ちょっと期間あけてからでいいかな。お世話になりました、エチオピア。)」
窓の外からぼーっと最終日のエチオピアを眺めていました。そして、ぼーっとしすぎているのを自覚し始めた頃。
「全然出発してないやん!5時に出発じゃないん?もう6時なるやん。バス間違えてない?」
「いや、大丈夫と思うよ。運転手がモヤレって言ってたし、ちゃんとチケットも見せてるしな。」
さすが頼れるY氏。彼の発言通り、無事に出発はしました。しかし、結局は1時間遅れ。私たちは最後までエチオピアに翻弄されるのでした。
「モヤレに着いたらどうしますか?」
「たぶんお昼頃に着くと思うから、時間に余裕はあるけど、一応急ぎめでケニア入国してしまおう。モヤレからナイロビまでの行くバスが大体、14時、15時出発やから、それで十分間に合うはず。モヤレはあんまり治安良くないから、泊まりたくはないよね。」
「そうですね。分かりました。モヤレは特にすることもないですもんね。」
数年前にテロが起きた街、モヤレ。その印象は未だに強く、さらには強盗やバスジャックの被害もある、という情報は手に入れていました。そしてケニアの首都であるナイロビは、アフリカ3大凶悪年の1つとして認識されている街です。
「(ここからの移動はだいぶ気張って動かないとあかんやろうなぁ。)」
これまでアフリカを移動してきた3人は、「寝られる環境の時は、眠たくなくても目を閉じておく。」という共通認識のもと、あまり話すことなく静かになりました。
何時間経ったのか、ふと目を覚ますと私たちはケニアとの国境に近づいていました。3人とも荷物は無事、どうやらバスジャックにもあっていない様子。寝起きと安堵で用を足したい気持ちを我慢すること、30分。
「(たぶん、あれが国境やな。いやぁついに来たよ、ケニア。)」
国境の雰囲気が漂う大きな一本道。出入国審査のための大きな建物も見えてきました。後はその道をまっすぐ進むだけ。しかし、バスは脇道に逸れて、狭い砂の道をクネクネと走っています。
「なんで!?」
Y氏によれば、モヤレではバスのまま入国審査を受けることができず、国境手前にある謎の場所で降ろされて、そこから数分かけて歩いて国境を通過しなければいけないとのことでした。
「うわぁ、人生初や。自分の足で国境跨ぐなんて!」
まもなくバスは、謎の施設(おそらく買い物するための場所)に停車し、続々と国境方面へと向かう乗客に紛れ、私たちも歩き始めました。
「そういえばドル減ってきてるんよなぁ。ナイロビでおろしとかないと。」
ボディバックに手をやりながら、ポツリと吐いたY氏の言葉に、私たちは心底焦りました。というのも、私たちは米ドルを一銭も持ち合わせていなかったのです。このタイミングでその独り言ということは、
「Y氏。ケニアのビザは日本円かクレジットで払えたりする、、、?」
「えぇ。たぶん無理やと思うよ。まさか持ってないん!?」
「はい。そのまさかでありまして。どうしましょうか。」
この街に米ドルを引き出せるATMがあるとも思えません。
「ほんまにぶっつけ本番で来たんやな。何か逆に羨ましいわ!分かった!全然貸しとくよ!」
私たちの計画のずさんさと若さに、Y氏は子を温かく見守るように、笑いながら答えてくれました。
「(ジョンに続いて、Y氏にまで借金をしてしまった。)」
己の無知と安易な計画性を恥じて、私は入国審査へと向かいました。
閑散として建物内の雰囲気。窓口のおばさんが面倒臭そうに私たちのパスポートを確認します。そしてY氏から受け取った100ドルで、私とぴょんすは無事にケニアのアライバルビザを取得しました。先に出国手続きを済ませていたY氏と合流し、深々と頭を下げた私たち。
そして、偶然の出会いを果たした最強の助っ人Y氏を含めた3人は、アフリカ3カ国目であるケニアへの第一歩を踏み出しました。
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