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「砂漠にできた日陰ー謎だらけの休憩所ー」アフリカ大陸縦断の旅~エジプト編⑦~

*前回の物語はこちらから!!!!!


 2018年8月16日午後4時頃。ムーディらに案内され、ようやく辿り着いたピラミッド。いや、ピラミッドではない。ただ、岩の塊が雑に積み上げられただけの景色。そこを、7000年の歴史がある墓だ、と語ったムーディ。彼の後を追って、それに登る私たち。そこで私たちは、ようやく気付いたのでした。


「私たちを助けてくれる人など誰もいない。もうどこにも逃げられない。」


 一気に襲いかかる不安と恐怖。


 少し冷静になって、考える余裕が欲しい。そう思っていた私たちですが、乗馬での長距離移動、灼熱の砂漠という慣れない気候、未だに残るムーディへの信用は、私たちの思考を邪魔していました。


 「疲れてないか?少し休憩にしよう。」
そう言って、ムーディはとある場所へと私たちを連れて行きました。


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 馬に乗り、遠くに見えきたボロ小屋。


「(なぜ、こんな誰もいない砂漠の真ん中に建物があるんだろう。こんなところで襲われたら死んでしまう。)」

 高まる緊張の中、私たちはムーディについて行くことしかできませんでした。


「ここでゆっくりしていいよ。」



 馬を降り、ムーディに案内された場所は、小屋の中。ではなく、小屋に併設された大きな仮設テント。砂漠にできた大きな日陰。それを覆う形で敷かれた、薄汚れた派手な絨毯。その上に無造作に転がる科学実験で使われるような形のビン。その中に入っている謎の透明な液体。そこら中に散らばった、見たことのない煙草の吸い殻。ふと耳を澄ませば、小屋の中から、かすかに聞こえる呪文のような言葉。


「(頭がおかしくなりそうだ)。」


 しかし、私たちに逃げ場などありませんでした。


「ここで休憩するしかないんだ、、、。」


 靴を脱ぎ、絨毯に座り込む私たち。下から感じる、冷たくなった砂漠の砂。意味もなく辺りを見回す私たち。


「(そうだ。今、ここで頭の中を整理しなければ。手遅れになる前に。)」

 失いかけていた冷静さを、何とか取り戻したような私たち。一瞬で目の前を過ぎ去っていった、大量の情報を処理すべく、私たちは席を立ちました。



 ピラミッドへ向かうため、駅で降りた私たちに声をかけてきた謎の親子。彼らに案内されて、飛び乗った車。そこで出会った男、ムーディ。彼の提示したEgyption way。ツアーより安い値段で、ピラミッドに登らせてくれる。ピラミッドを見ながら、食べ飲み放題の晩飯。そんな内容に惹かれて、支払った3万円。しかし、数時間馬に乗って辿り着いたのは、私たちが目指していたピラミッドとは、はるか真逆の場所。そこで目にした、とてもピラミッドとは思えない、無数の岩の塊。そして、全てが理解不能な休憩所。



「駅で出会った謎の親子。なぜ彼らは今も付いてきているんだろう。」

「偶然止まった車に乗っていたムーディ。車内での彼の発言に嘘がないことを裏付けるような、他の乗客たちの反応。やっぱり彼は信頼できるのか?」

「偶然の出会いと言うことは、謎の親子も私たちと同じような客か?」

「そもそも3万円は安いのか?普通のツアーにはいくらかかる?」

「予約もなしに、馬を知らない外国人に借す、なんてことがあるのか?」

「私たちが見たものは、本当にピラミッドか?そんな歴史的価値の高い場所を、無断で登ることが許されているのか?」

「この休憩所のことなんて、いくら考えても無意味だ。」



 頭の中を整理するために、話し合った私たち。しかし、考えれば考えるほど、深まる謎。何1つ辻褄の合わない事実。しかし、唯一全てを繋ぎ合わせるもの。


「偶然だ。この出会い、この出来事は全て偶然なんだ。」


 逃れることのできない事実を、偶然という言葉でねじ伏せた私たち。見渡す限り、誰もいない砂漠。もう残された道は、彼らに従い、ついていくことだけ。そう悟った私たちは、またあの異様な休憩所に戻りました。



「(ん?知らない人が1人増えているな。)」


 ムーディたちが囲う、その真ん中に座る男性。はげた頭に白いかぶり物。ズタボロの修行僧のような、白く濁った服。しわしわの皮膚。長い髭。眠たそうな目。煙草を片手に、実験ビンのようなものに入った謎の液体を飲んでいる彼。聞き覚えのある声。



「(間違えない。さっき小屋で呪文を唱えていた奴だ。)」


「(一体何者なんだ?)」



※続きの物語はこちらから!!!!!



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