田舎、脱出

コインランドリーの待ち時間が好きだ。何故好きなのかと問われると言語化は難しいが、恐らく『合法的な待ち時間』だからだと思う。


洗濯を待つ時間、乾燥を眺める時間というのは、どうやっても動きようがない。せいぜいがコンビニへの行き帰り程度だ。
その何気ないゆとりの時間が、たまらなく愛おしく感じる。そんなことを、人気のない夜のコインランドリーで思った。




本日の目的地は和歌山市街。およそ五日ぶりに、都市といえる街につくことができる。スマホの充電もギリギリなので、なんとしてでも辿り着かねばならぬ。



未来的山



途中セブンイレブンのイートインで休んで、雲行きが怪しくなってきたので慌てて飛び出すと、すぐさま雨が降ってきた。


和歌山市までは残り20km程度、飛ばしても一時間はかかる。これはまずいなと思っているとみるみるうちに雨足は強まり、嵐かってレベルの暴風雨になった。しかしその頃にはもう山中、どうにかトンネルの端で雨風を凌ぎ、車の邪魔にならないよう壁と一体化するように時間を潰したが、20分待っても一向に勢いは弱まらず、どうしたものかとグーグルマップを眺めたところ、トンネルを出てすぐのところに喫茶店が存在することが判明。


これはもう運命だ、と覚悟を決めてトンネルを飛び出す。たったの三十秒でびしゃびしゃになりながら、店内に逃げ込ませてもらい、入り口で軽く身体を拭いてカウンター席に座った。店内は木とコーヒーのいい匂いがして、とても落ち着く。冷えた身体に染み渡るコーヒーは、人生で一番美味しかった。









優しげな雰囲気のマスターと談笑して、無事雨も収まってきたのでお礼を言って店を出る。すると喫煙所で紫煙を燻らせていたおじさん二人に声をかけられ、十分くらい話し込んでしまった。関西人らしい、押しと癖の強さを感じた。



旅の疲れを癒やすようにスーパー銭湯に逃げ込み、コインランドリーで溜まっていた洗濯物を処理して、ぼうっと考え事に耽って、そんな風にのんびりしてたらまた雨が降ってきたのでネットカフェに逃げ込む。明日には大阪だ。そしたら、マジでゆっくり休もう。





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